第31話 ヤられる浮気クソ彼女

――――【クリスタ目線】


「く、苦しい……。秀人ぉぉ……こ、これ以上は止めてぇぇ……、死んじゃう、い、い、イグっ!!」


 はっ!


 思い出した……。


 夢に出てきた前世の出来事。


 はあ……私はどうも秀人に殺され、乙女ゲーみたいな異世界に転生してしまったらしい。


 智くんがちっとも私のこと、構ってくれなくて寂しさから課長と社内不倫しちゃった結果、課長に首締めセッ○スで殺されちゃった……。智くんはいい人だったけど、どきどきするような恋愛相手としては課長の方が上だったかもしれない。



 化粧っ気もない身支度を済ませると、こちらでの父親が朝の仕事をお願いしてきた。


「クリスタ! 川に水を汲んできてくれ」

「……」

「なんだ? 十五歳にもなってまだ返事もできないのか? クリスタ、まったくおまえには困ったものだ……」


「まあまあ、あなた。仕事をやらせればちゃんとやるんだから、多めに見てあげて」

「仕方ねえなぁ」


 異世界に転生してから十五年も月日が足ってしまったらしい。


 でもなんで村娘なの?


 そんな不満から私は両親とは会話したことがない。こんな井戸すらないような辺鄙な村、堪えられそうにないよ。スマホはおろかテレビすらない世界とか気が狂いそう。


「ホント、娯楽なんて一切ないから、やんなっちゃう……」


 リーベンラシアの王都に出ればまだ賑やからしいんだけど、そこに出るまでに徒歩だと二ヶ月もかかってしまうんだって。


 どんだけ田舎なのよ!


 そんな私だったけど、楽しみくらいはあった。水汲みを終えたあとは家計の足しにと森に野草を摘みに行くのだ。



――――イナックの森。


「キノコちゃ~ん、ハーブちゃ~ん、私の前に出ておいで」


 ふふ、でも楽しみはあるのよね~!


 課長にもらった危ないお薬を使いながら、いちゃいちゃしたらアレだったし。


「異世界ならお薬使っても、捕まったりなんてしないよね~」


 木の切り株に生えたキノコを取り、火でゆっくりあぶると……。


 私の前に紫色の怪しい煙が立ち込め、一気に鼻で吸い込んだ。


 鼻腔だけじゃなく、喉まで焼けただれそうな痛みを伴う刺激が走る。だけどしばらく耐えていると、急に気持ちに変化が現れた。


「いいいいいい井澤井澤井澤いいいい~かずかず和葉ぁぁぁぁぁ……きたきたきたKTKTKTKTTA!」


 力が全身にみなぎってきて、服を脱ぎたくなってしまった。前世の名前を大声で叫びながら、全裸で森の中を走りまわっていると……。



 きゃぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーっ!?



 なにかぶにぶにする気持ち悪い物に足を取られて、小さな子どもかよ、ってくらい盛大に転んでしまった。


 でもキノコがキマッるせいかまったく痛くない。膝や肘を擦りむいて、すぐに血が手首足首へ滴り落ちてしまってた。


「なんなのよ、もう!」


 振り返って見るとキノコ型のモンスターがおしりから血を流して倒れていた。


 き、気持ち悪いから放っておこう!


「……けて、助けて……だ・れ・か……お願い」

「モンスターが人の言葉をしゃべった! きもいきもいきもいきもい!!!」


 私は護身用に持ってきた桧の棒を使い、全力で瀕死のモンスターのおしりを叩く。


「えい、えい、えい! しね、しね、しね!」

「や、やめろ、オレは人間だ。名はマクシミリアンという貴族さまだ」

「えっ!? 貴族?」


 もしかして、このキモい奴を助けたら、ワンチャン玉の輿もあり?


 そう思うと私にはこのキモいモンスターが金づるに見えてきて、棒で叩く手が自然と止まっていた。


「仕方ないわね。特別に助けてあげるだけど、裏切ったら許さないんだから」


 私はポーチから薬草を取り出すとキモいモンスターに向かって放り投げる。落ちた薬草を見たキノコは薬草を摘まんだら、猿みたいに飲み込む。


「くくく……体力が回復してきたぜ! 女ぁぁ! さっきのは嘘だ! 女に飢えたオレさまが抱いてやる。感謝しろ!」

「ひっ!?」


 起き上がるとオークのように顔がぱんぱんに腫れ上がって、ゴブリンのように醜い男が私の両肩を掴んで襲いかかってきていた。


 このままじゃ、ヤラれる!!!



――――【ブラッド目線】


 窓から騎士団の隊舎を眺めていた。


 おっかしいなぁ……。


 そろそろマクシミリアンが辺境で武功を上げて、騎士団にスカウトされるイベントが起こってもおかしくないんだが……。


 気が気でなくなった俺は騎士団長のグラーツに訊ねてみたが、マクシミリアンという名の者は現れてないらしい。ちなみに原作ではグラーツがマクシミリアンを次期騎士団長に推薦する。


 マクシミリアンは後回しにして、他のスパダリに警戒すべきか……。


 腕組みして思案しているときだった。けたたましく学院寮のドアがノックされる。王宮から伝言があるというので入室を許可した。


 許可すると思わず「心臓を捧げよ!」と叫ぶ教官のようにしっかり禿げあがった頭の厳つい男が入ってくる。伝言役は偶然にも騎士団長のグラーツだった。


「ブラッド殿下! 大変にございます」

「なんだ? 俺はこの通り学生生活を満喫しているのだぞ」

「それは承知しておりますが国王陛下からのご命で……」


「父上がだと!?」

「はい……なんでもブラギノール高原にモンスターどもが大挙して押し寄せたそうで、その討伐で『初陣を飾れ』とのことです」


 これは、まずいことになったぞ……。


 ブラギノール高原でのモンスター討伐はマクシミリアンが立てた武功なのだから。


―――――――――あとがき――――――――――

書いている時点(6/14)で、ついにFRSルナマリアを予約することができました。こちらはまさにバンダイの狂気! あろうことかパイスーの差し替え胸部パーツに軟質素材を使うという気合いの入れようです。実に素晴ら……けしからんwww

シンは夜な夜なルナマリアの胸部パーツを……。(←怒られるから止めとけ)

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