第29話 おっ大きいです♡
看板のお店へ入ると大衆食堂というか、酒場といった雰囲気だ。ゲーム内ではマクシミリアン行き着けの店で、マクシミリアンが行けばいつも店の人間ととりとめのない話をしている。
店名は『春待ち亭』、俺は図らずもマクシミリアンと同じデートコースをフリージアと辿ってしまっていた。
「あそこが空いている。座るぞ」
「はい!」
フリージアはご機嫌でるんるんる~ん♪となにかメロディーを口ずさんでいる。だがそんなフリージアの上機嫌をぶち壊すようなことが起こった。
「ちょっと待ちな! 誰に断って、席に座ろうってんだ? あの席はオレらのシマなんだよ」
ああ、そう言えばこんなイベントがあったよな。マクシミリアンがフリージアをエスコートしようとすると碌でもないごろつきが絡んでくるテンプレのイベントが……。
フリージアには思うところがあるが、彼女の気分を害したことに強い憤りを感じた。
しかし……。
ここで下手にフリージアの好感度を上げるような真似をすれば、後々面倒なことになると思った俺はごろつきの相手をしないことに決めた。
ヒャッハーとか言い出しそうなモヒカンのごろつきに伝える。
「そうか、なら席を変えようか」
「あっちもそうだ」
俺がフリージアを伴い別の席につこうとすると、角刈りのごろつきが先回りし座っていた。
「では貴様らが使っていない席を案内しろ」
「おいおい、おまえ……口の聞き方に気をつけろ」
ハゲにヒゲ面のごろつきがテーブルの上に足を投げ出し、エラそうに言う。
どっちがだよ!
思わず、そんな言葉が喉より先にでかかったが飲み込む。ここで王族とバレると面倒だ。
「ヒューーーーーッ♪」
モヒカンのごろつきの一人が口笛を吹いた。奴は宝石のようなフリージアの瞳を舐めまわすように見ていたのだ。
「おまえ、ずいぶんとまあ綺麗なねーちゃん連れてるじゃねえか!」
「おまえみたいな奴にそのねーちゃんは不釣り合いだ。オレらと遊ぼうぜ」
ごろつきたちが騒ぎ立て始める。
盛った雄猫かよ。
「ブラッドさま、怖い……」
さっと俺の後ろに隠れたフリージア。俺の袖を掴んだ手が震えている。
「そのねーちゃんはよぉ、オレらと遊ぶんだ。ねーちゃんを置いていけば、さっきの無礼は許してやっても構わねえ」
あまりこんなことは言いたくないが……知らないっていうのは本当に怖い。
一体どちらが無礼を働いているのか?
一国の王子にごろつきたちのような口の聞き方をすれば、それこそブラッドなら断頭台送りしていることだろう。
「さっさとこっちに寄越しやがれ!」
ごろつきが俺の肩を突き飛ばそうとしきたので、フリージアにまで影響しないよう下半身に力を入れる。だが俺も正直予想外の結果が出てしまって驚く他なかった。
「なぁぁーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ごろつきは俺を押した衝撃で店の壁をぶち破り、飛び出していってしまう。
「ふん、他愛のない」
えっと何が起こったの?
俺、なにもしてないよね?
「てめえ、よくもな・か・ま・を……」
ごろつきの一人が吹っ飛んだ勢いで風が起こり、フードが後ろへずり落ちていた。俺の顔を見たごろつきの顔色がどんどん青ざめて、ついにはその汚い言葉を吐いていた口が止まった。
「あ、あああああ……あ、あんたは……」
「黙れ、このまま仲間の顎をひねり潰されたくなくばなぁ、くっくっくっ」
俺の正体をバラそうとしたごろつきの一人の口元をアイアンクローする。掴まれたごろつきはすぐさま俺に目で訴えかけてきた。
(殺さないで!)
周りのごろつきたちに目配せして、俺の正体について話さないように威圧しておいた。
「なら俺の正体をこの場で言うのは止めろ。そして五秒で立ち去れ。じゃないと……」
「はいぃぃぃぃっ!」
「しっ、失礼しやしたぁぁーー!」
俺の悪い噂と顔はごろつきどもにすら、知れ渡っているらしい。
給仕が騒動を見て厨房に駆け込んでいたが、ごろつきたちが逃げ去ると同時に店主のガイルが出てきた。
「二度と来るな、このクソ客どもがっ!」
ガイルはごろつきたちの背中に向かって、塩のような白い粉を投げつけいる。
「ありがとよ、あんちゃん! 見ねえ顔だけど、助かったわ!」
「気にするな。ただカウンターを塞いでいて邪魔だっただけだ」
ごろつきたちが占拠していたテーブル席にフリージアが腰掛けた。俺も対面に座るとフリージアは彼女の指先と俺の顔を交互に見ている。
「どうした? 俺の顔がそんなにおかしいか?」
「そんなことあり得ません! ブラッドさまは世界で最も格好良いです」
「当たり前のことだ。何をいまさら」
言葉ではそんなことを吐いているが、あまりのこっ恥ずかしさで顔から火がでそうだ。
なかなか給仕が注文を取りに来ない。
給仕を呼ぼうとしたとき、ガイルが両手に皿を持って現れる。
「あんちゃんとねえちゃんにおれっちから奢りだ。腕によりを掛けて作った。まあなんも言わずに食ってみてくれ」
「ならお代はたくさん払わねばならんな」
ガイルは手のひらを見せるようにして手を振り、代金をもらおうとしない。男同士で払う払わないと、やり取りをしていたら、フリージアは運ばれてきた料理を見て顔を真っ赤にしていた。
「まあっ! ブラッドさまのように逞しい……」
「……」
フリージア、キミは本当にエロゲのヒロインじゃないよな?
お皿の上には大きくて反った腸詰めが五本並んでいて、その隣には添え物のザワークラウトと二個のゆで卵があった。
―――――――――あとがき――――――――――
腸詰めと茹で玉子……ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲かな? ブラッドのアームストロング砲がフリージアの壺に炸裂するのが楽しみという読者さまはフォロー、ご評価で期待値を示してくださるとうれしいですw
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