第28話 エロゲのヒロイン化
――――数ヶ月後。
おっかしいなぁ……。
予定ではフリージアとの出会いイベントが起こってもおかしくないのに。
「ブラッドさまー! こんなところでどうされたのですか?」
「あまりくっつくんじゃない! ここは人通りも多いというのに」
王都を一人お忍びで出かけたら、早々にフリージアに捕捉されてしまった。フリージアは俺の腕にゲーム内よりもふくよかに成長したたわわを押し付け、腕組みしてくる。
ブラッドが強く「離せ!」と言い放ちそうになると上目遣いで見つめてきて、さすがの毒舌のブラッドですら、言葉が詰まってしまっていた。
それほど円らな瞳のフリージアはかわいい。
フリージアを走って捲くことは可能だったが、それではマクシミリアンの姿が確認できなくなってしまう。
「せっかくお忍びでデートに来れたというのに……」
ひっ!?
ミーニャが普段呑気にしている姿と違い、俺を睨み「シャーッ」と叫んで、爪を立て威嚇してくる。
「ええい、仕方ない。くっつくことは許可する」
「ありがとうございます。ブラッドさまの腕に触れられてうれしゅうございます」
ブラッドはどんだけ、上から目線なんだよ!
にも拘らず、フリージアは満面の笑みを浮かべていたので、彼女は本当に本当に良い子過ぎた……。ただ、ずっと彼女と過ごしてきても俺に対する愛情が演技であるという線は完全に拭いきれない。
それでもフリージアみたいな絶世の美少女と腕組みできるなんて死亡フラグさえなければ、最高のシチュエーションではある。
ミーニャはじっと俺を見つめたあと、フリージアが肩に下げているポーチへと隠れた。許してくれたということなんだろうか?
「うっ!」
「はうっ!」
「なんてものを……」
「や、ヤバい……」
俺たちの向かいから歩いてくる人たちが唸るような声を上げたあと、みんな一様に股間をもぞもぞさせて、道の端へと消えてゆく。
「みなさん、どうかされたんでしょうか?」
無自覚って怖いな……。
なおフリージアに掛かった肩紐はパイスラッシュとなっており、とてもエロチック。フリージアは口元をアラビアの貴婦人のようなヴェールで覆い、髪はフードで隠しているのにだ。
これじゃ、フリージアはエロゲのヒロインじゃないか!
キミは本来乙女ゲーの主人公なはずなのに……。
「ところでフリージア、貴様に聞きたい」
「はい、なんでしょう? 昨晩、ブラッドさまのことを想い、自慰した回数でしょうか?」
ぶっ!?
「そんなこと聞いておらぬわ!!!」
「そうですか、五回ほど気持ち良くなってしまいました……」
聞こえなーい、聞こえなーい。
「もうその話は分かった。それより貴様はマクシミリアン・メーガスという男を知っているか?」
「いえ、まったく……知っていても私の目にはブラッドさましか入りませんから」
フリージアの言葉をすべて信じられるか分からない。ただ嘘は言っていないように思えた。
なっ!?
一安心したのも束の間、俺たちを尾行する者の影があったのだ。
そのとき偶然にもフリージアの腹の虫が鳴る。恥ずかしそうにしていたので、俺は偵察がてら王都の食堂へ彼女を案内するとこにする。
「こっちだ」
「ブラッドさま……?」
尾行者の顔を拝んでやろうと咄嗟に踵を返した。すると尾行者は俺の動きに感づいて、物陰に姿をくらました。だが俺の回転力に敵うはずもなく、尾行者の面は割れる。
まったく困った奴だ……。
そんなことに気づいていない様子のフリージアは俺に手を引かれたことに驚いていた。
「お忍びなのに腹の虫が鳴られても困るからな」
俺が指差した先にはパンと肉料理の描かれた看板がある。
「はい!」
フリージアは理解したのだろう。悪魔ですら釣られて笑顔になってしまうような満面の笑みを浮かべていた。
―――――――――あとがき――――――――――
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