第25話 ヤンデレ妹の異世界転移
――――【愛目線】
「ふーん。じゃ、愛と一緒に行く?」
「えっ? 愛ちゃん、なにを……?」
「もちろん異世界」
「あ、うん……」
愛が自信たっぷりに答えるとねーぽんは力なく頷いてた。じーっと眼鏡の奥のねーぽんの瞳を見つめていると、ねーぽんは絞り出すような声で言う。
「親からもクラスメートからも愛されてないみたいだから……」
「愛はねーぽんのこと好きだよ」
「あ、うん、愛ちゃんがまだそう言ってくれるだけでうれしい……」
愛の予想が間違ってなければ、ねーぽんは死にたいんだと思う。誰も
「ねーぽんが本当に行きたいなら私も付き合うよ」
「愛ちゃぁぁぁん……」
ねーぽんは感動しちゃったのか泣き出してしまったから、ハンカチで涙を拭き拭きして頭撫で撫でする。みんな、ねーぽんのかわいさと魅力が分かんないなんて、ポンコツなりー。
――――放課後。
異世界サバイバルグッズを購買部で買い漁り、教室に戻ると、またねーぽんがクズメートじゃなかったクラスメートに囲まれてた。
「うわ! 根本がまた変なことしてるぞ!」
「マジ、キモいって」
「根本菌がうつるから止めろよ」
ねーぽんは愛のために机と椅子をせっせと運んでくれていたのだ。それをキモいとか言うなんて失礼の極みー。愛はすぐにねーぽんを庇うように立って、言い返す。
「ねーぽんは愛の手伝いしてくれてるだけなんだけど、何かあるー?」
「愛ちゃんが!? じゃ、オレも手伝うわ」
「おれもだ」
「お前らだけズルいぞ」
センセに学園祭の出し物の予行演習って言ったら、すぐ許可でた。センセからすると愛は優等生に映るらしいー。
愛が頭で完璧に記憶した魔法陣の絵柄をチョークで描いたあと、ねーぽんをいじめていた男子たちがせっせと黒いガムテープを貼り付け、ラインをはっきりとさせていた。
「愛ちゃん、これなに?」
「異世界に行くためのゲートなんよ。そっちに行く覚悟があんならねー」
「愛はロマンティックだね」
「間違えてるし、お前はキモいから喋んなし」
「そんな!」
「あと気安く愛って呼び捨て、許されんのはおにいだけだかんね」
気障っぽい鬼澤が話してくる。吐きそうになるのを手で押さえながら、毒を吐いて中和する。愛はロマンチストなんかじゃなく、いつも現実主義なんだけどなかなか信じてもらえない。
まあ信じてもらおうとも思わないけど。
「あるある! オレ異世界に行ったら、最強勇者になって愛ちゃんのこと守ってやっから」
「ふ~ん、愛は別にそういうのいらない」
「いやいや、そう言わずに……」
「じゃ、ねーぽんを守って」
愛を守ると格好つけた男子はきょとんとした顔をする。男子はゆっくりのねーぽんを見た。
「え? 根本?」
「そ、ねーぽん」
ねーぽんは自身を指差して、「わ、私?」と目を丸くしてビックリな表情をしている。
愛は異世界に行きたいクラスメートたちと魔法陣を書いた。ゲームしていたときの記憶に従い魔法陣の図案をそっくりそのまま教室の床に写す。
今日は6月6日。
『フォーチューン・エンゲージ2 偽りの聖女』で女主人公は今日召喚されることになってる。愛の推測が正しければ魔法陣と触媒が一致していれば、本来の召喚者でなくこちらにインターセプトして通じるはず……。
ちなみに触媒は、眼鏡に黒髪の地味な見た目のJK、いじめられっこなのだ。
おにいは無印『フォーチューン・エンゲージ』のリーベンラシア王国にいる。『2』の舞台、グリューナク王国と世界観は同じだから、きっと逢える。
加えてねーぽんが幸せに生きる道を用意してあげるのだ。毒親から離れて、クズメイトたちを……。
「魔法陣と写真撮りたい子がいたら呼んできて」
愛はねーぽんをいじめていたクソ陽キャどもを異世界送りにするためにその仲間に声をかけた。愛に気のある男子とクソ女子が見事に集まってきて、儀式の準備が始まる。
貧民が大富豪を打ち倒す革命の儀式が、ね♡
―――――――――あとがき――――――――――
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