第22話 決闘【ざまぁ】
――――王立学院。
フリージアのアプローチを躱しつつ、五年の月日が過ぎてしまった。
「ブラッド! フリージアで己の欲望を満たすのは止めろ!」
ジークフリートの外した手袋が俺に投げつけられ、足下に落ちる。入学試験の模擬戦でジークフリートが俺に対戦を挑んできたのだ。
「ククク……控え目に言ってフリージアの床は最高だぞ! 童貞の貴様にはもったいない女だ」
あ、いや俺も転生してからは童貞なんだが……。つまり俺とフリージアは清い仲のままってこと。どこで覚えたのか、フリージアは風俗嬢顔負けのフェラ、パイズリ、素股などの性技をマスターした性女さまになってしまっていたけど。
ジークフリートを煽るつもりでブラッドは言い放ったんだろうが、それは同時にフリージアを誉めることになっており……。
「そんなはっきりとブラッドさまが私を誉めてくださるなんて!」
彼女は頬を赤くして、ただただ身悶えしていた。
これ……決闘でジークフリートに勝ったりしたら、フリージアから逆レイプとかされないよな?
できれば俺が見込んだスパダリに清いままのフリージアを迎えて欲しいんだがな。少なくとも目の前のジークフリートに譲ることは難しい。
ここはしっかりイキって、惨めに負ければ俺の株はストップ安になり、フリージアの心は離れスパダリへと傾くことだろう。
「弟の分際で兄の俺に手袋を拾わせるとはな。貴様の足腰が立たなくなるまでレクシチャーしてやる。好きな武器でかかってこい」
「ボクはおまえを一度たりとも兄だと思ったことはない! この栄光あるリーベンラシアの恥晒しめ!ここでおまえを完封なきまでに叩き潰し、王位継承権とフリージアをボクの手中に収めてやるっ」
――――闘技場。
王立学院では貴族は平民に先立って戦う義務があるということで戦技を学ぶのは必須となっていた。
高さが五十センチもないくらいの円柱の舞台へと上がる。模擬戦の観衆となった生徒たちが俺たちの戦いを見守っていた。
「ジークフリートさま~!」
「ブラッドさまになんて負けないでー!」
応援はジークフリートに傾いているようだったが、その中で一人気を吐く者がいる。
「ブラッドさまの勝利を私は確信しております!」
次期王妃候補ということで特別席に座るフリージアが手を振るだけで、男子たちの視線は彼女に集まり、鼻の下をだらしなく伸ばしていた。だがフリージアの熱い視線は俺だけに注がれている。
そんな様子を見て、ジークフリートがこの世の終わりみたいに頭を抱えて真っ青になってぶつぶつ呟いていた。
「な、なぜだ……どうでもいい女どもだけボクを見て、フリージアはボクを見てくれない……」
そりゃそうだろう、女の子本人の前でこそこそシコるような奴を好きになったりしたら、それこそ変態だ。
「ぜんぶ、ブラッドが悪い……」
キッと俺を睨みつけ、殺気を放つジークフリート。それと同時に審判から「始め!」の合図がかかった。
「だあーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
ジークフリートは鞘からブロードソードを抜くと駆けながら間合いを詰めてくる。そして俺の目前で姿を消した。
「くらえ! 【飛翔剣】」
そうそう、ジークフリートの得意技。
太陽を背にして、高く飛び上がることによってあたかも目の前から消えたかのような錯覚を起こさせるのだ。
思わずスキル解説おじさんになってしまったが、ゲーム内知識のある俺は目でジークフリートの姿を捕捉している。
「ふははは! 飛翔剣破れたり! 貴様の姿など百年前から捕捉しておるわ!」
意訳:貴様の行動などすべて把握している、と言いたかったんだろうな。妙に周りくどい言い回しに困ったしまうが、困っているのは俺だけではなかった。
「な、なぜバレた! 誰にも明かしていないと言うのに!!!」
それは俺が転生者だから。
なんてこと言えるわけもなく……。
「くそっ! 当たれぇぇぇーーーー!」
動揺してやけくそ気味になったジークフリートの白刃が俺の頭に迫る。
誰にでもできる簡単なお仕事だ。
油断して弟の振るう剣で斬られるというだけの……。一応、フリージアがいるから死なないとは思う。しかし、すべての俺の計画が情けない弟により狂ってしまった。
カーン!
甲高い音が周囲に鳴り響き、ジークフリートの唐竹割りのような渾身の一撃は俺の額を確実に捉えている。
ぐふっ。
俺はそう唸り声をあげ、情けなく倒れようとしていた。だがジークフリートの剣が額に当たったというのにまったく痛くなくぽかんと棒立ちになってしまう。
あれ? 俺……もしかして少々鍛え過ぎてしまいましたかね?
そんなことを思うとブラッドはジークフリートに煽りを入れていた。
「今のは本気なのか? フリージアが欲しくば俺を殺す気で来なければ奪えないぞ」
「馬鹿な!? 今の攻撃は
マジか!?
俺の外皮はラスボスの配下の四天王、装甲竜より固いらしい。まあジークフリートがブラフをかましている可能性はあるが……。
一撃食らったときに不様に倒れられれば良かったんだが、ジークフリートの攻撃があまりに威力を持ってなかったので倒れるに倒れられなかった。今更痛がっても怪しまれるだけだから、腹痛を起こして棄権するのが良さそうだ。
俺が手のひらを見せ、ジークフリートに棄権を申しいれようと試みた。
「だ、ダメだ……腹が痛い……俺は……棄権する」
「隙ありっ!!!」
だが俺が後ろを向き舞台から降りようとしていたにも拘らず、ジークフリートは座禅のときに使う警策のように俺の肩をブロードソードで全力で打っていた。
「だーーーーーーっ!!! 死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! 死ねっ! 死ねよ、このクソブラッドがぁぁーーーーーーーっ!」
サラッサラの金髪を鬼婆のように振り乱して、本心だだ漏れのまま、俺を打ちまくる。
バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ! バシッ!
あー、政務で疲れた肩凝りに利くぅぅぅ。
千回ほど気持ちよく打たれた頃だろうか、カラン……と音が響いて、ヘナヘナと闘技場の床に膝をついてしまうジークフリートの姿があった。
ジークフリートが打ち続けたブロードソードの刃は磨耗した上に剣身は曲がっていて、もう使い物にはならなさそう。
「なんて弟想いの戦い方なんだ!」
「男は背中で語る……素晴らしい」
「ブラッドさまはジークフリートさまのことを思い、棄権されたというのに後ろから襲うなんて最低じゃないか!」
えっ!?
「審判! ちゃんと見ているのか? これはブラッド殿下の勝利だ! ジークフリート殿下を反則負けにしろ!」
「そうだ、そうだ! ブラッド殿下はジークフリート殿下のことを思い、何一つ手を出さなかった! オレはこんな素晴らしい兄弟愛を見たことがない」
「ああっ、傲慢で尊大で人の心を持たないと聞いていたブラッドさまと同じ学び舎で学ぶことが怖かったのに、今はどうでしょう? 共に学べることがうれしくて仕方ありません」
ええっ?
どうしてこうなった?
観客席で見ていた学院の生徒たちから俺は賞賛され、一方のジークフリートにはゴミと侮蔑の言葉が投げつけられてしまっている。
―――――――――あとがき――――――――――
フリージアが好き過ぎて、こじらせまくった自慰苦くんがざまぁされるところが見たいという読者さまは是非フォロー、ご評価お願いいたします。たくさん頂くとたくさん自慰苦くんがやらかしてくれますw
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