第18話 禁じられた恋

「どういう風の吹き回しだ! 貴様は俺のことなど嫌いなんだろ。化けの皮を剥がせ、この女狐め!」


 俺は口汚い言葉でフリージアを罵っていた。確かにブラッドに影響されたのもあるが、俺の本心が入っている。


 彼女の実家での扱いが酷いことを見れば、ブラッドに転生してしまった俺より他のスパダリと結ばれた方が遥かに幸せになれると考えたからだ。


「はい、今すぐ剥がしますね」


 あれ?


 フリージアは俺の罵りに怒りや悲しみの表情を見せることなく、むしろ微笑んでいた。俺に優しげな微笑みを向けながら彼女はシースルーのネグリジェの裾を掴む。そのまま腕を頭の高さまで上げるとフリージアの生まれたままの姿が露わになった。


「これで化けの皮は剥げました。ブラッドさまには私の嘘偽りのない姿を存分に愛でていただきたいと思います」

「ではその手をどけてみろ」


 おい、ブラッド! なに調子乗ってるんだよ。


 かなり気っ風の良い脱ぎっぷりを見せたフリージアだったが、恥じらいを見せおっぱいと股間を腕と手で隠している。


 ロリに興奮なんか、興奮なんか……はあ、はあ……。



「ブラッドさま、大丈夫ですよ。これは婚前交渉などではありません! ブラッドさまがいつも取り組んでいらっしゃる筋肉を鍛えるための鍛錬なのです」


 ああなるほど。


 筋力ならぬ金力を鍛えるんだな~。


 って笑えるかよ!


「ばっ、馬鹿者! 貴様を抱けば俺の体力が落ちてしまうではないか! 自分のことばかり考えず、少しは人のことを気遣え!」


 いや、おまいう?


 ブラッドから人を気遣えなんて言葉が飛び出すとか、思わず吹き出しそうになっていた。


「そうですか……でも私、分かります! 幼い私だと母胎として不適格ということなのですね」


 ぜんぜん分かってませんっ!


 しかも母胎という言葉が生々しい……。まるで俺がフリージアを孕ませるみたいじゃないか。


 暴走が止まらないフリージアだったが、またぽたぽたと涙がこぼれ落ち始める。


 キーーーーンと強い耳鳴りがして、何事かと周囲を見渡すとバルコニーで控えていたミーニャの尻尾の先は天を向き、毛はハリネズミのように尖っていた。


 ヤ、ヤバい!


 俺がフリージアを泣かしたことでミーニャが聖獣フェンリルに戻ろうとしてるじゃないか!?


 フリージアのスキルもそうだが、ストーリー上の展開が早すぎる。彼女が聖女としての力を解放するのはブラッドから婚約破棄され、スパダリとともに困難に立ち向かっているときだ。


 とにかく、泣いたまま全裸でいたらフリージアが風邪を引いてしまう。


「貴様の貧弱な身体をいつまでも見せつけるな!」


 もっと優しい言葉がかけられないものかと頭を抱えてしまうが、言葉とは裏腹に俺はフリージアにガウンを被せていた。


 彼女の後ろからガウンを被せたところで、俺の手にフリージアは手を重ねて告げる。


「私の見立て通りブラッドさまはお優しいです。強いお言葉も私がブラッドさまから寵愛を受けていないと周囲の嫉妬を避けるためのもの。悪ぶってるお姿もとても心強く感じます」


 つ、強すぎる……思い込みが……。


 フリージアに何かあって、ミーニャが闇の方向へ覚醒でもされれば、それこそ乙女ゲー世界の破滅だ。


 俺は妥協案をフリージアへ提示する。


「仕方あるまい! 俺の鍛錬を邪魔せず、口外せず、大人しく見守れると約束できるなら、部屋を訪れることを許可する。ただし過剰なスキンシップは禁ずる。いいな!」


 正直これが譲歩できるギリギリだろう。


 そんな譲歩が余程うれしかったのか、フリージアはお礼とばかりに俺にハグしてきていた。


 言った傍から、過剰なスキンシップだなんて、この娘は……。


「だから、そういうことがダメだと……」

「禁じられた恋だから、燃え上がるのです……」


 フリージアはそっと背伸びして、俺に口づけすると直ぐに離れる。


 頬を赤らめながら、チラチラとこちらを伺う仕草のかわいさに思わず、彼女に絆されない誓いが破られそうになったのには言うまでもない。


 彼女は十歳の女の子なのに……。



 そんなフリージアとの少年時代を送っていたが、ついに俺は婚約破棄のきっかけとなる王立学院への入学を迎えてしまう。


―――――――――あとがき――――――――――

作者、ついに転売ヤーどもとの激闘の末、6.4予約戦争にて勝利を収めました! いぇーい!

7品中、6品の予約を取れたので成果は大きかった。それにしてもDMMのサーバーがカチカチに固まって、キャンセル待ちしかできない状況ってどうなのよ?(作者はDMMは諦め、アマゾンで予約)

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