第16話 ステータスオープン

 フリージア、大浴場で大欲情……。


 俺は筋トレ後に、すっかり大浴場へ行かなくなってしまっていた。理由は簡単、フリージアが俺にスケベなイタズラをしようとしてくるからだ。


 代わりに大きな樽を用意してもらい、そちらに漬かる日々を送っていた。


 俺が湯沸かし係りの下へゆくと樽にお湯を詰めて準備してくれている。基本リーベンラシア王国の臣下たちは優秀だ。


 ブラッドが大馬鹿だっただけで……。


 彼らは忙しさのあまり、俺が訪れたことに気づいていない様子。お湯は掃除などにも使うのだろう、メイドたちから催促されていたので、お湯の入った樽を拝借する。


 だが頭の上に樽を乗せたことで気づかれてしまった。


「殿下! そんな私どもがやりますからっ!」

「ふん! 貴様らの手を煩わせるまでもない。それとも何か、この程度の樽が俺には荷が重いとでも?」

「い、いえ……滅相もございません……」


 五十リットルは優にある。そんな樽を地上から五階に運んでもらおうと思えば、湯沸かし係総出で対応してもらわなければならない。


「ひっ!?」


 お湯をもらいにきたメイドたちは俺の姿を見て、ギョッとしていた。


「どうか折檻だけはお許しを……」


 ぶるぶる震えていることから、髪の毛を掴んで樽に顔を沈めるとか思われたんだろうか?


 なら水でいいじゃん!


 とか思ってしまった。まあ、メイドたちが恐れるということはそれだけブラッドが悪行三昧してたんだろうな。


「ふん、邪魔だ。貴様らそんなところで油を売ってる暇があるならさっさと仕事に戻って王家のために尽くせ」

「えっ? 殿下が私たちをいじめない?」


「なんだ? いじられたい趣味でもあるのか? なら夜にでも俺の部屋に来い」

「「「……」」」

「ははは! 冗談だ」


 また余計なことを!


 俺というかブラッドが口走ったことにメイドたちは全員並行した。そりゃそうだ、誰もいじめられたり、折檻なんてされたくないだろう。どうしてブラッドの身体は舌禍という言葉を知らないのかと呆れてしまう。

 


 大きなドアとはいえ、樽を頭の上に載せたまま入ることはできない。


「むん!」


 俺はスクワットの要領で膝を曲げ、アヒル歩きで入室する。もちろん樽は頭の上にあった。こんな姿……フリージアには見せられないな。


 一気に膝、腰に負荷がかかる。


 堪らん! 


 この負荷が昨日の俺より今日の俺を強くし、明日には最強への道が広がるのだ。


 そんなことを思いながら、床のタイルが割れないよう細心の注意を払い、ゆっくりと樽を下ろした。


 服を籠に入れ、樽へ身体を沈める。


 生き返る~!


 筋トレの汗と疲れが樽からあふれ出たお湯と一緒に流れてゆくような心地良さだ。


「まるでエリクサレクション完全蘇生魔法をかけらたようだ!」


 俺の言葉はブラッド語に変換されていた。エリクサレクションはブラッドの罠にはまり、命を落としたスパダリを救った魔法名で、その際フリージアが聖女の力に完全覚醒している。


 そのあとブラッドはもれなく断頭台送りなんだけどな……。


 そのために鍛えている。


 俺は首周りの筋肉に触れた。十代にしては筋力はついてきたと思うのだが、いまだに細いまま……。最悪、断頭台にかけられても首が切断されないよう首の筋肉強化のために樽を乗せていたんだが、これでは鋭い刃に対して秒と持たないだろう。


 十代ということを差し引いても、とにかく筋肉が太くならない……。


 まさかイケメンパラダイスな乙女ゲーだから、過剰な筋肥大は抑制されてるとかなのか!?


 だったら俺のやってることは無駄なんじゃ……。


 まあ筋トレは楽しいから続けるつもりだが、命がないとその筋トレすらできない。一応現状だけでも把握しておきたいと思って試してみる。


 フリージアは主人公キャラだし、スパダリたちもクエストに同行したりしてるから、ステータスオープンができるが、悪役キャラのブラッドはそもそもステータスがあるのかすら分からない。


 だが……。


 そんなこと構うものか!


 俺は脳筋でゆく!!!


【ステータァァァァァーーースオープンッ!!!】


―――――――――――――――――――――――

名前 ブラッド・リーベン

種族 人間


職種 王子

LV 20


HP 6666

MP 15


筋力 9999

知力 5


防御力 8888

魔防力 7777

―――――――――――――――――――――――


 え?


 筋力が……カンストしてない?


 つまり俺のおててやあんよ、肩や胸に背中は大きくならないってことなんじゃ……。


 なんてことだ。


 俺は怒りと悲しさのあまり握力を鍛えるために作らせたアダマンタイトの玉を握り締めてしまう。


 ブニュッ。


 アダマンタイトの玉は俺の握った形になり、俺の指と指の隙間からゲル状に漏れ出ていた。


 こんな細い腕なのにアダマンタイトがこんな簡単にひしゃげるわけがない! どうせ、ソンタックが紹介してきた鍛冶職人たちが俺に忖度して、やわな金属をアダマンタイトと偽ったたんだろう。


 過剰な忖度はやはり主人を滅ぼすのだ。


 ということはこのステータスも忖度かもしれない。そう車やバイクの速度を実際より高く表示するハッピーメーターみたいなものだ。


 ならば、もっと鍛えてやる!!!


―――――――――あとがき――――――――――

作者の心はとても揺らいでいます。いや作品の伸びが今ひとつということじゃなくてですね、メアリーのバニー衣装を買うべきか、どうかなんです。


メアリーのおっぱ○がいっぱい……。


メアリーのおっ○いが揺れる度に作者の心も揺れるのです。

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