第12話 間男転生【ざまぁ】
――――【一ノ瀬秀人目線】
ぎゃああああーーーーーーーーーーっ!!!
灼熱の炎に包まれ、オレの皮膚は焼かれる。凄まじい熱さ、激しい痛み。まるで地獄の釜ん中に放り込まれちまったようだ。
それから間もなくオレは意識を失った。
あの美紗子の奴……オレを見捨てやがって!
呪い殺してやるっ!
・
・
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――――メーガス侯爵家。
「マクシミリアンさま、起きてください」
あんだよ……。誰だよ、マクシミリアンって。
「マクシミリアンさま! 早く起きてくださらないと家が燃えてしまいます!」
家が燃える?
なんのことだ?
鬱陶しい声を無視していると、なにやらきな臭い匂いが漂ってくる。まさか本当に燃えてるとかじゃないだろうな?
そう思い、重たいまぶたを開くと……。
メチャクチャ燃えてる……。
辺りを見回すと見たこともない西洋風の変な部屋にオレはいて、知らない男がオレを揺さぶって起こしていたようだ。その部屋はゴーゴーと音を立てて、カーテンやら絨毯やら収納などのアンティークっぽい調度品が炎に包まれてる。
そしてオレの寝ていた屋根付きベッドにまで炎が及んでいた。
まさに火事だ、超火事って奴。
愛車ん中で焼け死んで変なところで目を覚ましたかと思ったら、また炎に包まれてるとかなんの冗談だよ!
ふざけんな!
「なぜ、もっと早く知らせないんだ!」
バーテンダーみたいな格好をした男が目の前にいて、オレは起こしにきた男をわけも分からず叱責する。
「申し訳ありません、起こしに来たのですがマクシミリアンさまがお目覚めにならなかったもので……」
「言い訳するんじゃないっ!」
「いまは言い争ってる場合ではありません。さあお早く外へ!」
オレはバーテンダーみたいな格好をした男に手を引かれ、部屋の外へと出た。するとその廊下は文化遺産を残せとかギャーギャーうるさい連中がよろこびそうな古めかしい感じだった。
どこなんだよ、ここは!
しかしじっくり探ってる暇なんてなかった。廊下にも炎が回ってきて、煙が頭の上をもうもうと流れて行ってる。
これはマジでヤバい。
煙に巻かれたら、せっかく目を覚ましたっていうのに、また意識を失っちまう。
ごほっ、ごほっ!
「大丈夫ですか!」
「ぼやぼやしていると死んでしまうじゃないか!」
オレは握っられていた男の手を振り切り、走り出した。
「いけません! マクシミリアンさま! そっちは……」
煙が流れてゆく先に出口があると思い、走り出したところ、眩い光が見えた! これで焼け死なずに済むと……。
だが男の悲痛な叫びと共に光は何かが爆発したものから発光していたようで、オレの身体は焼けた建物の中へと押し込まれてしまってい……た……。
「マクシミリアンさまっ! お気を確かに! マクシミリアンさまぁぁぁーーっ!」
オレの身体は廊下だった場所に横たわっている。オレを起こしにきた男はうるさく叫んでいるようだが、意識が遠のいてよく聞き取れない。
「ちっ、死にやがらなかったか……。仕方ねえな。分家だからと散々馬鹿にしやがって! だがなぁ、マクシミリアン! 今日からメーガス侯爵家の主人はこの俺さまだ。そしててめえは俺さまの奴隷よ! ふははははは!」
「サボットさまっ!?」
爆発で建物は吹き飛んで、どうやらオレは炎には巻かれずに済んだらしい。だがオレの前には中世の貴族みてえなコスプレをした醜悪な豚野郎が立っていた。
そういや手を引かれていた?
ベッドから起き上がって、さっきまでの目線の低さや見る物すべてが大きく感じる……。
ああ、ダメだ……。
寝ちまう。
「どうされたのか! いつものお優しいマクシミリアンさまが激怒されるなどあり得ない!」
んんん?
意識が戻るとバーテンみたいな格好をした男が頭を抱えて、不平を漏らしている。こいつはあとできっちり教育してやんねえと! って、なんでオレは牢屋に閉じ込められてんだよ!
牢屋っつっても座敷牢に座敷が敷いてねえようなところだが……オレを起こしにきていたバーテンの男は向かいに監禁されている。
オレには手枷と足首にチェーンと鉄球のついた足枷がはめられていた。一体、なに時代なんだよ、ここは……。
はっ!
マクシミリアン・メーガス!?
オレの天才的頭脳は豚野郎とバーテン男からの情報からある答えを導き出していた。
あのオタ喪女を遊びで抱いてやったときに紹介された『フォーチューン・エンゲージ』って乙女ゲーじゃねえか!
おいおい、マクシミリアンっつったら、超イケメンで不遇などちゃクソかわいい女をゲットするスパダリじゃね?
はははっ! なら馬鹿王子を蹴落として、他の攻略キャラをぶっ殺せばオレの勝ちじゃん!
二度目の人生はヒロインを分からせて、ハーレム三昧だな、おい。
オレがこみ上げる笑いに耐えていると……。突然あの豚野郎がやってくる。
「出ろ。おまえは今日で解雇だ。田舎にでも帰んな」
「サボットさま?」
豚野郎は従者にバーテン男の牢の鍵を開けさせ、なぜか温かい労いの言葉かけていた。
「あ、ありがとうございます」
まさか豚野郎の奴、バーテン男を安心させて殺すのか? なんて思っいたら、バーテン男はオレの方を向いて、言い放つ。
「ばーか、ばーか! てめえみてえなガキの子守に辟易してたんだよ! それになんだ? 急に生意気な口を聞き出しやがって! だがな、おれはもう自由だ。てめえと違ってな! あばよっ」
ぶっとオレに唾を吐きかけ、バーテン男はその場を去ってゆく。
「あ?」
頬についた唾を拭うと猛烈な怒りがこみ上げてきた。
「ふははははは! これは傑作。従者にすら嫌われていたとはなぁ! だが安心しろ。おまえには人を扱うより人に扱われる人生がお似合いなんだよ!」
ぐぬぬ……。
オレをあざ笑う豚野郎。
オレが前世で一流企業の管理職をやってたことをしらねえのかよ!
なんなんだよ……あんな岡田から寝取ったクソ地味な女を抱いたばっかりにオレはこんな苦労を背負わなきゃなんねえとか聞いてねえぞ、ゴラァァァァーーーーッ!!!
――――【ブラッド目線】
ああ……念のためスパダリ候補について調べておくか。
しかしスパダリの中でもマクシミリアンは一番悲惨な過去を背負ってるんだよなぁ。
ブラッドは断頭台送りにはなるものの、それまでは好き放題できたが、マクシミリアンはすべての自由が制限され、戦場送りにされてしまうんだよなぁ。かわいそうに……。
俺は書斎机に乗っかった人事表をそっと閉じていた。
「なっ!? ブラッド殿下が自ら政務に取り組まれるなんて!」
ドアの方からエレクトラの声が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。あの娘はしばらく休暇扱いになっているのだから……。
―――――――――あとがき――――――――――
なんてことだ……。メガニケのソーダがメイド服からバニースーツに着替えたら、少女からメスの顔に変わっちまうなんてよぉ! 作者怒らないから言ってくれ~。傷心の指揮官作者を慰めるために優しい読者さまはフォローとご評価お願いいたします。
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