第9話 お風呂プレイ

 はあ……。


 俺はうなだれながら深いため息をついてしまう。それもそのはず、連日バルコニーの窓から監視されているのだから……。


 まったくご苦労なことだ。


 雨の日も風の日も俺の監視を怠らない。ご主人に忠実な使い魔といったところか。


 ブラッドに影響を受けたのか、俺は心の中でそんなことをうそぶいていた。


 ため息をついている間にも、ちらちらと窓枠から白銀の毛並みが映る。主であるフリージアを守ろうとミーニャが頑張っているらしかった。


 実に健気と言いたいところなんだけど、ミーニャに頭丸かじりされる運命にある俺にとっては天敵でしかない。


 できうる限り、フリージアとの接触を避け余計なパワハラ、モラハラ発言をしないよう心掛けないと……。フリージアの俺に対する好感度を下げない方向でフラグ回避に奔走したいと思う。


 仕方ない……。


 別にもふもふのミーニャになら、俺の筋トレを見られても問題ないだろう。


 そう思うと俺は胸飾りジャボを外し、シャツのボタンを開け放って、それらをソファへ投げ捨てた。


 本当は裸でトレーニングなどしたくないのだが、残念がらノースリーブやTシャツなどのトレーニングウェアがない。庶民の間ではノースリーブのシャツが普及しているが、王侯貴族には下賤な衣服として扱われているようだ。


 あんな便利な衣服もないのにな……。


 半裸になった俺は箱からある物を取り出す。俺は鍛錬のためにとある物を用意させていた。



「ふはははは! 素晴らしい!!!」



 真円かと見紛うほどの車輪、中心から端にゆくほど細くなるスポークの美麗なライン、ささくれの一つもない職人による丁寧な研磨に渋みを帯びたワニス仕上げで思わず俺は感嘆の声を漏らしていた。

 

 馬車職人にお願いして……ブラッドの口調なのでほぼ命令なのだが、車輪を作ってもらっていた。それも馬車に使う物と比べ、かなりミニサイズで。



 俺はその車軸に適当な長さのシャフトを差し、両手で棒を掴んだ。



 腹筋ローラーの完成である!



 ある程度鍛えていたが、まだこの身体になってからのコントロールは完璧とは言い難い。


 俺は膝を床につきながら腕を伸ばしながら身体を前に投げ出す。


 くうっ!


 来た来た来たァァーーーーーッ!!!


 この腹筋にくる負荷が堪らなく苦しく身体を痛めつける。だがこの痛みがクセになるほど、快感に感じてしまっていた。



 まだだ! まだ負荷が足りんっ!!!



 両足の間隔を広く取って、そのまま床に鼻がつくくらいに腕と股関節を真っ直ぐにした。ぐっと腹筋に力が入る。


 だらだらと上半身を伝う汗、腹筋に走る負荷、それに耐えながら思う。必ず生き残ってみせると。


 廃嫡され、武器を持つことすら許されず素手で凶悪なモンスターが跋扈する辺境の地に追放される運営の俺は、来るべき日に備え隠れて鍛錬に勤しんでいた……。


 そういやフリージアたちにはステータスやスキルがあったと思うんだが……俺にもあるんだろうか?


 まあ、今はそれよりも!



――――王族専用大浴場。


 カポーン。


 ふう~っ。生き返るぅぅ~。


 筋トレあとの風呂は控え目に言って極上だ。しかも銭湯よりも広い浴場を貸切状態ときてる。こんなにゆっくり風呂に浸かれるなんて前世じゃ無理だったからなぁ。


 これで露天風呂とサウナがあったら、言うことなしなんだけど。ちょっと頼んで作ってもらうか!



 だが俺の心の中にスチルが浮かんでくる。


『ブラッド殿下のために税を納めろ! 断った奴は皆殺しだ!』


 ヒャッハーと叫んでもおかしくない徴税官が鞭を持ってぺしぺしと手のひらで叩いている。一方では青竜刀のような幅広のサーベルを舐めて、民衆を威嚇していた。


 一体どこの世紀末なんだ……。


 プレイ中、俺は乙女ゲーなのか疑わしくなり、パッケージを何度も見て確認したことを覚えている。リーベンラシアはブラッドの放蕩によって財政難に陥って、あろうことかブラッドは売国しようとしていたのだから。


 そりゃブラッドの異母弟であるジークフリートに王位継承権を奪われても仕方ない。



 なんて思いつつ、俺が最高のお風呂を堪能しているときだった。


 ピタリ、ピタリと水で濡れた大理石の上を歩く足音が聞こえてくる。視界は残念なことに湯気で良好とは言いがたい。


 念のため、俺が身構えていると目の前に現れたのはフリージアだった。彼女の銀髪が湯気で濡れ、ただでさえ美しいのにより輝きを増している。


 フリージアは熱めの湯気に当てられたのか、頬がほんのり赤く染まっていた。身体前面をバスタオルのような物で覆い、胸元や股間を恥じらうように隠している。


 しかし俺というかブラッドを毛嫌いしているはずのフリージアは信じられない行動を起こした。


 彼女はタオルをはらりと足元に落とす。


 それとは反対に俺は目を手で覆った。


 身体は子供、心は大人の俺にはローティーンの裸をまじまじ見るのは犯罪臭がしてならない。愛が小さかった頃はお風呂に一緒に入ったりしていたのだが、他人だとまた別だった。


 目を覆った俺にフリージアはなにか言っている。


「ブラッドさまを見ているとお胸が熱くて痛くなってしまうのです。触れて具合を見て頂けませんか?」



 ちょっと! なに言ってんの、この娘!?



 フリージアのお胸はちょうど膨らみ始めた蕾と言うのに相応しい。彼女は俺の片手を取り、彼女の胸元へと誘い始める。



 これって犯罪だろ……。



 俺はロリフリージアのちっぱいに触れてしまっていた。


―――――――――あとがき――――――――――

フリージアがスパダリたちに落とされる前に分からせてあげた方が良いでしょうか? 分からせてさし上げろという読者さまがいらっしゃいましたら、是非フォロー、ご評価お願いいたします。たくさん、してもらえるとブラッドくんがフリージアたんのお股からブラッドしてくれるかもしれません。

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