第3話 汚物は消毒された【ざまぁ】
――――【一ノ瀬秀人目線】
岡田から寝取ってやった和葉と一戦交え終えたあと、一服していた。
ふぅ~。
ベッドの縁に全裸で座り、煙草の煙を肺の中までしっかり吸い込む。
無責任中出ししたあとの一服は最高だった。
そんなオレの背中に和葉がピタリと肌を重ねてくる。
「秀人の赤ちゃん……できちゃった。だから智くんに別れ話してきたよ」
「あ?」
目の前が真っ暗になる。
筋肉バカと幸薄そうな和葉が幸せそうにいちゃついてやがったから、ムカついて筋肉バカに仕事を振りまくってやった。
するとどうだ、和葉は寂しそうにしてたから良い上司の振りをして相談に乗ってやったら、オレに靡いてきやがった。チョロすぎると思っていたのに、ちょっと遊びのつもりが、ガキが出来たとかふざけんじゃねえぞ!
できたら、できたで筋肉バカに托卵するつもりが、正直に別れ話をするとか和葉もバカかよ!
「なんでそんな話すんだよ! おまえは岡田のことを好きじゃなかったのかよ!」
「……なに言ってるの?」
「堕ろせ」
「えっ!? だって秀人は奥さんと別れて、私と一緒になってくれるって……」
「おまえもただ寂しかっただけだろ? なんつーの? ギブアンドテークって奴だ、これは。オレたちの関係は会社にも家族にも恋人にも内緒、そうい約束だっただろ? 忘れたのかよ、まったく……」
「うう……だったら会社に全部バラしてやるんだから!」
なっ!?
こいつ……ただのバカだと思ってたら、とんでもねえことを言い出しやがった。会社にオレたちの関係がバレたら、たたじゃ済まねえ……。
仕方ねえな……あの手で行くか。
「和葉、すまん……オレもちょっと動転して、キツいこと言ってしまった。お詫びに仲直りのエッチしよう」
「ホント?」
やっぱ訂正。こいつはバカだ。
チョロくて、筋肉バカでも落とせる訳だ。
―――――――――自主規制―――――――――
首締めックス中 首締めックス中 首締めックス中
―――――――――自主規制―――――――――
「ぐ、ぐるじぃぃよぉぉぉ……」
「頑張れ! 苦しさを乗り越えた先に究極の快楽が待ってるぞ!!!」
はぁ、はぁ、やっちまった……。
白目を剥いて、和葉はピクリとも動かなくなった。口から泡を吹いて、身体は完全に弛緩していてダラリとだらしなく横たわっている。
落ち着け……。
シナリオを組み立てる。和葉は痴情のもつれで岡田が殺した。そして岡田は和葉を殺したことを悔いて、電車に飛び込む。
完璧だ!
早速、オレは和葉のバッグからスマホを取り出し、メッセージを送信する。なるべくバカっぽい感じの文章で……。
【和葉】
《昨日はごめんなさい》
《やっぱり智くんとやり直したい》
【智】
《分かった》
《明日和葉の家に行くから》
《話し合おう》
ムカつく!
オレの電話やLINEはガン無視決めてくれたくせに和葉だと分かるとすぐに返信してきやがる……。
だが未練たらたらとか、笑えてしまうぜ。
吐いて捨てるような大した女でもねえのに!
こみ上げる笑いをこらえて、オレは岡田に返信していた。
【和葉】
《うん》
《うれしい》
翌日、几帳面な岡田は待ち合わせ時間に三十分前には到着できるよう駅に来ていた。会社でもそうだが、デート……じゃねえか、話し合いにもきっちりしてるとか笑いが止まらねえよ。
なんとか震える身体を抑えながら、やたらデカい筋肉馬鹿の岡田の後ろについた。
『快速電車が二番線ホームを通過します。黄色い線まで下がってお待ちください』
岡田の奴、和葉とよりを戻せると思ってなんの警戒もしてやがらねえ! それに客は疎らで駅のカメラからは完全な死角と来たもんだ。
その和葉はもう逝っちまってる。
岡田の背中を押すオレの腕にまったく躊躇はなかった。もうすでに和葉をやってしまってるのだから。
あの世で仲良くオレに騙されたことを後悔でもしてろーーーー!!!
ただ図体のデカいだけの岡田の身体はオレに後ろから不意に押され、ホームから呆気なく飛び出し快速電車の前にあった。
車体と衝突する瞬間に岡田は振り向き、オレを見る。鳩が豆鉄砲でも食らったかのような驚いた表情。オレはその馬鹿面をおまえの葬式以降見ないで済むと思ったら、清々する。
「あばよ、オレの無能の部下さんよ」
岡田は通過する快速電車に吹っ飛ばされて、線路の上に転がっていた。血まみれになった姿はそれこそ犬や猫が車に轢かれたあとの肉の固まりと大差ない。
これでオレの地位は安泰。岡田は無理心中を図った、ただそれだけだ。あとは岡田の遺書を作って、奴の社宅に置いておけばいい。
オレはコインパーキングに止めていた車を走らせ、岡田の社宅へと向かっていた。
一ノ瀬は逃亡する途中、事故って車が炎上する
バッグミラーを見ると後ろから国産スポーツカーが煽ってきていた。
クソが!
ドイツ車に安物スポーツが勝てるとでも思ってんのか!
オレがアクセルを踏むと国産スポーツカーは点となって見えなくなっていた。
「思い知ったか、貧乏人め!」
ぶっちぎったあと、オレは異変に気づく。ブレーキを踏んでもフェードでもしたかのようにペダルはスカッと抜けてしまっていた。
ひっ!?
アクセルをベタ踏みしただけあって、オレの自慢のドイツ車の時速は余裕で二百キロを超えていた。
オレは前方の車を避けながらハンドルを左に切り、サイドブレーキを引いて側壁に車体をこすりつけながら、なんとか停車させる。
ふっ、オレじゃなきゃ死んでたな。
と思いつつも、オレの自慢の愛車は路肩に停車していたクソトラックにぶつかり、フロントがひしゃげている。車から出ようにも足が挟まり、ドアも開きそうになかった。
仕方ねえ、税金食らいどもに連絡入れて仕事させてやろうかと思っていたときだ。
オレの車の後ろに、さっき煽ってきたクソ国産スポーツカーが止まっていた。スポーツカーの持ち主はドアを開けて、オレに近寄ってくる。
ざまぁとでも笑いに来たのだろうか?
だったら覗きこんだ瞬間、唾でも吐いてやろうか、そんなことを考えていた。
「美紗子!?」
オレの車の前には会社の部下の女がいた。美紗子は何をするでもなく、オレの惨状を見てあざ笑う。
「あははは! ホントいい気味」
このメス! ここから這い出たら、犯してやる!
しかし、妙にガソリン臭い……と思っていたら、後ろから炎が上がっていて、熱さが伝わってくる。
「あんたが岡田だけじゃなく……井澤も殺したんでしょ?」
「オ、オレは何もやってない!
「な、なあ……頼む! ここから助けてくれ!」
くそっ、身体がハンドルと運転席に挟まって出れやしねえ!
「美紗子ぉぉぉーーーー!!!」
オレの足が業火に包まれたときには美紗子の姿はなかった……。その直後、オレは愛車とともに炎に包まれていたのだった。
・
・
・
「マクシミリアンさま、起きてください」
あんだよ……。誰だよ、マクシミリアンって。
「マクシミリアンさま! 早く起きてくださらないと家が燃えてしまいます!」
家が燃える?
なんのことだ?
―――――――――あとがき――――――――――
ZOZOの結城まどかの抽選に落ちてしまってZOZOのメールだけが来るという虚無感にさいなまれております作者です。めげずに作品書くの頑張れよ、という読者さまがいらっしゃれば、フォロー、ご評価いただけますともっと頑張りますので、よろしくお願いいたします。
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