第2話 NTRからの転生
三迫とは俺の同期で気心知れた仲だったが、そんな秘密を知っていたなんて……。
バンッ! と俺はデスクを強く叩いた。
「いつから知っていたんだ……?」
「こ、怖いよ……」
身を引いて俺から視線を逸らした三迫。まだ早い時間なのが幸いして、周囲に同僚たちはいない。和葉と課長の関係を知ったショックと怒りからか、俺は三迫を睨み、ドスの利いた声で問い質してしまっていたようだ。
「すまん、怖がらせるつもりはなかったんだ」
「いや、こんなの見たら誰でもそうなると思うから、言い出しにくかった……」
三迫が言うには、二人の関係を把握したのは三ヶ月ほど前からだったらしい。
「最近だと……昨日だね」
「は?」
スマホをフリックして、三迫は俺に動画を見せた。一ノ瀬課長と和葉が腕組みして、仲睦まじい様子でラブホへ入ってゆく。
和葉は俺に別れを切り出したあと、課長と合流しラブホでやっていたことになる。
妻子持ちの癖に俺の彼女を寝取るとか……ふざけ過ぎてる!
「三迫……その画像と動画、欲しいんだが送ってもらって構わないか?」
「それは構わないけど……気をつけて」
「すまん、三迫。あとは頼んだ」
「頼んだって、ちょっと……」
「俺、しばらく会社休むわ」
「休むって、プレゼンはどうすんの!?」
「そこは優秀な三迫さまが収めてくれるかと」
「はあ……まあいいけど。事態が事態だし、いつもお世話になってる岡田だし……そん代わり、解決したら焼き肉奢って!」
「ああ、もちろんだ」
俺は三迫に仕事を頼んだあと、トイレへ駆け込んだ。
オェェェェーーーーッ!!!
個室の便器の蓋を開けると食べた朝食が一気に流れ、底に溜まっていた封水と混ざり合っている。三迫の前だからこらえていたが、吐き気がこみ上げてきてダメだった。
間男である課長に抱かれていた和葉といつも親しくしていたことを思い出すだけで、身体の中物をすべてを入れ替えるように吐き出したくなる。
頭痛と目眩と吐き気の三重苦に耐えながら、会社を早退した。社宅に戻る頃には三迫から和葉の浮気を証明する画像と動画が送られてきていた。
ふと三迫から教えられた浮気の時期について考える。俺は和葉の浮気の兆候を見逃してしまっていた。
それまで濃いお化粧をすることのなかった和葉が友だちと遊びにゆくと言ったときに限って、美容院で髪を染めネイルサロンへ通い、新たにメイクを購入して準備を万全に整えていたのだ。
マウスを握る手は震え、呼吸は荒くなるがあの二人をきっちり追い詰めるためになんとか整理し終えた。
なにも口にする気にもなれず、ゆらゆらとデスクからソファーに場所を移す。倒れるように座ると妹の
『フォーチューン・エンゲージ』
キラキラとしたイケメン王子が儚げなヒロインを抱き寄せ、優しげな眼差しで見ているパッケージを見ると鼻で笑ってしまう。
どうせ乙女ゲーなんて、大したことないだろ……。俺がクソゲーかどうか判定してやるっ!
そんな思いで始めたが……。
「ひゃっはー!」
よっしゃぁぁ!!!
ブラッド&エミリー、首ちょんぱ!!!
ヒロインであるフリージアをいじめ抜いた馬鹿王子ブラッドと欲しがり妹エミリーが断頭台の露と消えるざまぁのスチルが映る。そのあとすぐにフリージアはブラッドの異母弟ジークフリートに抱き寄せられるエンディングを迎えていた。
「ハァァァァー!!! すっきりした!」
ブラッドに婚約破棄されたフリージアが幸せになるという微笑ましい光景を見て、俺は和葉を課長に寝取られた鬱屈した気分が少しだが和らいでいた。
一週間後……。
よ、よし……最難度の逆ハーレムエンドを迎えたぞ……。
「フ、フリージアさま、こ、この、卑しい私めが大変……ご無礼を……くっ! なぜ余がフリージアなどに頭を垂れねばならんのだっ!」
「黙れ! 下郎っ!!!」
「ごふっ!!!」
ブラッドは床に這いつくばり、フリージアに許しを乞うていたのだが、ブラッドが粛清した部下の子息にランスの柄で打ち据えられている。
「かわいそうなブラッド殿下……」
「フリージア、このような下衆をキミに見せるのは忍びない。行こう」
「はい……」
フリージアはジークフリートたちに手を引かれ、王座の間から出でゆく。ブラッドは奴隷身分に落とされ、彼女らの姿を目で追い続け、ハンカチを咥えて悔しがっていた。
なるほど、逆ハーレムだとなんとか馬鹿王子は生きてるんだな……。
やはり頂き女子ビリちゃんのおぢ攻略マニュアルを読んだ俺は無敵!
スマホの着信音をサイレントにしていたら、ピカッ、ピカッ、ピカッと電源ボタンが光っていた。
着信履歴を確認してみると一ノ瀬秀人と出ており、それが五分毎にあったようだ。
あっ、今もかかってきてるな……。
取る訳ねーだろ、バーカ!!!
LINEにもやたらとメッセージが入っていたので、うちのパワハラ寝取り課長にささやかな抵抗を試みた。
その夜のことだった。念のためスマホを確認すると和葉からメッセージが届いており……、
【和葉】
《昨日はごめんなさい》
《やっぱり智くんとやり直したい》
なにをいまさら、と思ってしまう。
もちろん、答えはNOだ!
都合のいい和葉の申し出にせせら笑っしまう。だか和葉と課長の浮気を糾弾するちょうど良い機会ともいえた。
【智】
《分かった》
《明日和葉の家に行くから》
《話し合おう》
【和葉】
《うん》
《うれしい》
和葉から送られてきたメッセージがお花畑すぎる。
うれしいのはこっちだよ!
おまえたちをしっかりざまぁできるんだから!
翌日、俺は隣町にある和葉の家へゆくために電車に乗ろうとしていた。
『快速電車が二番線ホームを通過します。黄色い線まで下がってお待ちください』
停車位置の一列目に並んでいた俺だったが、気づくとふっと身体がホームから投げ出されている。
「なっ!?」
何事かと振り返って、ちらりと瞳に俺の身体を押した人物が映る。
お、おまえは……。
だがけたたましい警笛の音とともに俺の身体は硬い車体と衝突していた。快速電車の運転手は精いっぱいブレーキをかける努力をしてくれたんだろう。キキキキーーーーーッと金属同士がこすれ合い耳をつんざくような音が響いていたが、もう遅かった。
俺はホームから遥か先に跳ね飛ばされ、視界が真っ赤に染まり、レールと枕木の上にいた。
め、愛……た、頼むから頂き女子みたいになるんじゃ……ないぞ……。
薄れゆく意識の中で俺は枕木に遺言を血文字で刻んでいた。
「……でん……殿下……お目覚めください」
んんん? 殿下ってなんだよ……?
俺は通過する快速電車の前に投げ出されて……死んだはず……。
「ブラッド殿下、ようやくお目覚めですか?」
蔑んだような目で俺の顔を覗き込む女性に見覚えがあった。
ブラッドの
モノクルにメイド服、まさにお堅い家庭教師を絵に描いたような感じ。だがそんな彼女には柔らかいところはある。
エレクトラは巨乳だった!
さらにエレクトラはショタ食いの性癖があり、ブラッドの性格が歪んだのも、こいつが一因と『フォーチュン・エンゲージ』のスタッフがSNSで裏話として漏らしていた。
「では殿下、朝のお勉強を始めますよ」
お勉強とエレクトラは言ったはずなのに彼女はブラウスのボタンを外し始めて、下着を露わにするとその大きなたわわを俺の腰の上に置いていた。
「勉強ってなんだ!」
「それはもちろんリーベンラシア繁栄のためのお勉強にございます」
―――――――――あとがき――――――――――
え~っと運営さまからお叱りを受けない程度に頑張ろうと思いますので、そういうシーンをご期待の読者さまは是非ともフォロー、ご評価お願いいたします。たくさん頂けますとエレクトラのマロンがエレクトすると思いますwww
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます