第3話 先輩

あやちーを愛でるスレ XXX枚目



147:あやちー守護隊 ID:wxBWdVFt2

あやちー初配信にして一躍有名になってるのさすがすぎる


148:あやちー守護隊 ID:CZm79ovNx

>>147

おっ、口振り的に古参勢か?沼らせてもらってます


149:あやちー守護隊 ID:NWvg1Wv7G

楽しかったけど、あの子そんなに切り詰めた生活してるんか...(愕然)


150:あやちー守護隊 ID:Vfo9pro2z

あまりに居たたまれないのでYoutube運営スパチャ解禁はよ、お布施させてくれ 


151:あやちー守護隊 ID:1H3k2cSsQ

>>150

まだスパチャ解禁の条件満たせてないけど、この調子ならすぐ達成するやろな


152:あやちー守護隊 ID:R4P/zpskT

>>151

当たり前やんあやちー舐めんといて


153:あやちー守護隊 ID:TfndM/Au2

普通にトーク面白いし可愛いから耳も目も幸せなんだわ


154:あやちー守護隊 ID:OZPs1NG3l

唐突なライフルブッパは驚いたンゴねぇ


155:あやちー守護隊 ID:0K5XK5daJ

>>154

そのシーンだけ無限に切り抜かれてて草生える


156:あやちー守護隊 ID:X07iTPgPM

>>155

リアタイできんかった民からしたらありがたい


157:あやちー守護隊 ID:vLSt/241S

そういや前までは普通に動画投稿もしてたんだってな


158:あやちー守護隊 ID:mAd+KNdsx

>>157

編集技術高いし、今になって見返すとなぜ日の目を浴びてこなかったのかが疑問


159:あやちー守護隊 ID:QYc/b7hw0

>>158

世の中ロリで売り出すYoutuberなんざ腐るほどいるし、埋もれてたのはしゃーない


160:あやちー守護隊 ID:AoIsqxkTB

>>159

世のロリより頭一つ抜けて可愛いんですがそれは...


161:あやちー守護隊 ID:W73jW5BjY

>>160

言うまでもない


162:あやちー守護隊 ID:tPbMv+Bpi

>>160

それは本当にそう


163:あやちー守護隊 ID:RtCAl+l7t

>>160

かわいい(小並感)


164:あやちー守護隊 ID:YdvxbpvyS

今更だけどあやちーも性転換病の患者なんやろか


165:あやちー守護隊 ID:s9APRUHcX

>>164

割とまだまだセンシティブな話題だから詮索はやめとけな


166:あやちー守護隊 ID:KoS81rqVP

>>164

もはやメジャーな流行り病だしあり得なくはない


167:あやちー守護隊 ID:zjpFBgzXU

>>166

だとしたらちゃんと戸籍再登録とかの手続き踏んでるかが心配


168:あやちー守護隊 ID:wlRjchDBt

>>167

確かに、めんどくさがって放置すると保護施設連れてかれるとか聞くしな


169:あやちー守護隊 ID:NanaseSenpai

>>157

その過去動画を漁ったら、背景が職場の元後輩宅そっくりだったんだが


170:あやちー守護隊 ID:gP+y0kcBX

>>169

はぁ??


171:あやちー守護隊 ID:JA1ZxB+TX

>>169

何言ってんこいつ


172:あやちー守護隊 ID:+VccEuHP0

>>169

あやちーとの心の距離を縮めたいからって都合のいい妄想すんな


173:あやちー守護隊 ID:Tv1HnjRP9

>>169

黙って見てろ


174:あやちー守護隊 ID:MI1WfDiVs

>>169

幼なじみです的なノリでイマジナリー後輩つくっちゃう人


175:あやちー守護隊 ID:l9qr9mGAW

>>174

まーたスレ民から痛いヤツが現れたか


176:あやちー守護隊 ID:9g13dczvI

>>169

見間違い定期


177:あやちー守護隊 ID:dDaSTQWW+

>>169

どうせ職場ってのも嘘で現職ニートなんやろ


178:あやちー守護隊 ID:SDBWDWnUY

>>177

さっさと働いて、どうぞ


179:あやちー守護隊 ID:NanaseSenpai

もう亡くなってるから、後輩が性転換病に罹って女性化しその上で配信をしてるっていう説は無い

つまるところ、第三者による不法侵入の線も有り得るだろ

通報してくる


180:あやちー守護隊 ID:Nwha+wHZF

>>179

さすがに頭おかしいぞ


181:あやちー守護隊 ID:e8Uxiux4I

>>179

妄想が行き過ぎてる


182:あやちー守護隊 ID:iI9ddEfBB

>>179

もう自首しろよお前


183:あやちー守護隊 ID:Hdrwe2h66

どうせ警察も取り合わないだろうし平気平気


184:あやちー守護隊 ID:jX27qu1sD

>>183

もし大事になったらどうすんねんアホンダラ


185:あやちー守護隊 ID:/+Lf2gQlY

これだからヒキニートは...(呆れ)


186:あやちー守護隊 ID:aBwThj3x5

>>179

は?マジで通報したん?正気?


187:あやちー守護隊 ID:NanaseSenpai

昨今は「性転換病」の症状を悪用した犯罪も多いんだぞ

患者本人が他者に成りすまして法を犯す事例もある

もっと危惧するべきなんだ、本来は


188:あやちー守護隊 ID:bs5CzypqY

>>187

えぇ...(困惑)


189:あやちー守護隊 ID:NiowBDCAT

>>187

強迫観念に囚われすぎててキモい


190:あやちー守護隊 ID:l2qIgP7dC

友達いないタイプなんやろなぁ...


191:あやちー守護隊 ID:NXHhLI/ze

>>190

まず学校行ってない説


192:あやちー守護隊 ID:7RXa185tA

>>191

引きこもりかぁ...救いようがないンゴねぇ...(白目)


193:あやちー守護隊 ID:ZPs1o0Sla

>>187

いいから通報取り消せカス


194:あやちー守護隊 ID:MbZ9vHQpn

>>187

余計なことすんなよ


195:あやちー守護隊 ID:RGS0dAsj2

>>187

行き過ぎた正義感は厄介なだけだゾ




「行き過ぎた正義感...ねぇ。よく言うよ。私が止めてあげられなかったから、私がトラップに気が付かなかったから...あいつは死んだのに」


 失明しかけている右目───変色した黄色の瞳に手をかざしながら、呪うように言う。あの忌々しいトラップである広範囲の連続爆発に巻き込まれて傷を負い、おかしくなってしまったものがこの右目だ。 


「視力はどんどん落ちてく一方、おかげでD.Busterの仕事もクビを切られた」


 ...D.Busterとは、「ダンジョン・バスター」と呼ばれるダンジョン制圧の専門資格のことである。資格取得者は正式にダンジョンに突入し、内部の捜索をすることが可能になる...のだが、今となってはそれも無期限剥奪。


 そして何より一番悔しいのは、かつての後輩である彼───斎凪 彩が、そのトラップを直に食らい亡くなったこと。


「ダンジョン上層部であんな理不尽なトラップが生成されるなんて、分かるわけないだろ...」


 今はサポート職に徹しているとは言え、ダンジョン制圧を生業としておきながら、身近な人間一人も守れないなんて。そりゃあセンチメンタルな気分にだってなるし、強迫観念に取り憑かれもするだろう。


 ため息をつきながら、私はタイピングを続ける。




200:あやちー守護隊 ID:NanaseSenpai

とにかく通報は済ませた

あとは今日中にまた配信の予定があるらしいから、そこでの様子も見て判断する


201:あやちー守護隊 ID:Xaznk9Qhz

>>200

何を偉そうに


202:あやちー守護隊 ID:Jcywnae59

>>200

人気に対する逆張りェ...


203:あやちー守護隊 ID:+2Q6pvsca

>>201

嫉妬も僻みも小物感満載で草


204:あやちー守護隊 ID:VmE2u0fuJ

>>200

結局配信見てんじゃねぇか


205:あやちー守護隊 ID:zXSFvWeQh

なんなんだこいつマジで




 予想はしていたが、やはり周りからの反応は芳しくない。当たり前だ。向こうは世間的な大ヒットを果たし、瞬く間に時の人となった大物だぞ。私の行いはそれに背く愚行、向こう見ずもいいところだ。


「あいつが関わることになるとどうも熱くなっちゃうんだよな...私の悪いところか。まだまだ弱いな...」 


 一人でも賛同してくれる者がいると思った自分が馬鹿だった。世の中を甘く見すぎなんだ。全くもって、無鉄砲なのは相変わらず──いや、彼が死んでさらに拍車がかかっている気がしてしまう。


 取り返しのつかないことになったらどうしよう、なんて、今になってふつふつと後悔が湧き上がる。これも私の悪い癖だ。勢い任せに行動して、後から後から罪悪感に迫られる。


 ほんの数ヶ月前までは、あれだけ先輩風を吹かしていたというのに。


「はぁ...変わっちゃったなぁ、私」


 もし───もし、億に一つ。あの「あやちー」ってのが彼だったら。私は一体どの面下げて彼に会いに行けばいいのだろうか。

 というかそもそも有名人なら近づくことも叶わないだろうし。まして私の通報で本当に逮捕でもされたら?それこそ、今後顔を合わせることは不可能になるだろう。


 またとんでもない空回りをしでかした可能性、大アリである。


「...まぁ、あの一軒家は、あいつが死んでも正真正銘あいつの居場所だ。余所者が土足で踏み込んでいい場所じゃない」


 幸か不幸か、興味本位で過去動画を閲覧した結果、「あやちー」のキッチンがどうも彼の自宅のものと類似していることに気がついた。

 彼がダンジョンで命を落としてから、私は彼の自宅に近づくようなことはしていないし、内装も、なるべく元の姿のままにしてあげたいと思っている。


 なれば、「あやちー」を名乗る者が不法侵入者である可能性も考慮し、先んじて手を打っておくべきであろう。


「私もお邪魔したことあるし...あいつだけじゃない、私たちの思い出が詰まった大切な場所なんだ。そう、だからいいんだ。私は間違っちゃいない」


 卑屈な感情を誤魔化すようにブツブツと呟き、カールした茶髪を一束とって指に巻き付けた。


「あぁ...こうやってすぐ髪をいじるのも、私の悪い癖か…?」


 一度、パソコンから離れよう。今の私にとって、ネットは心に毒だ。せっかくの休日なんだからもう少し心身穏やかに過ごしたい。


 「あやちー」の配信まではまだ時間があるし、コーヒーでも飲んで落ち着こう。


「えーっと...中煎り、中煎り...」


 に罹患してこの体になってから、深煎りのコーヒーはぱったりと飲まなくなった。本を正せば、飲めなくなった、と言うべきか。


 幼女の肉体に深煎りは苦味が強すぎた。一時はカフェオレにさえハマっていたものである。あれから四年以上が経過して、肉体もほんのり大人びた──中学生、高校生くらいだろうか──今は、苦味も多少は平気である。


「やっと中煎りに慣れてきたんだ、なら飲まなきゃ損だろうに」


 そう言いながらも、実のところ舌先は甘みを求めているのが事実である。カフェオレのあの包容力のある味を思い出したせいで、久しぶりに飲みたくなってしまった。


「...冷蔵庫に牛乳、まだあったかな...」


 ドリッパーにお湯を注ぎつつ、私はトテトテと冷蔵庫へ向かうのであった。

 


 ───ポポっ

 


 通知音とともに、彼女───七星ななせ 蓮希はずきのパソコン画面の右下に、ネット記事のインフォメーションが映し出される。




〇「お嬢様系ロリっ子シェフ」ぶっ飛んだ初配信が話題に



 6月X日、YouTube上で初めてのライブ配信を行った新生ロリっ子ストリーマー「あやちー」が人気を博している。


 「【初配信】鹿さんを捕まえます(合法)」というタイトルで、配信は同日の午前9時からスタート。序盤はコメント欄とのトークに花を咲かせ、リスナーも盛り上がりを見せていた。


 トークの中で明らかとなった彼女の素性も然ることながら、より多くの目を引くこととなったのが、配信の後半に見せた「スゴ技」である。


 山岳~山林地帯に出没する、中型四足獣モンスターの「バニシカ」。自身の背後に忍び寄る群れを、彼女は対低級モンスター用ハンティングライフル一丁のみで鮮やかに討伐して見せたのだ。四頭のバニシカを、一頭につき一発のみ、全て心臓を狙って迷わずに撃ち抜いた。時間にしておよそ10秒間の離れ業であった。


 流れるようなリロード、引き金を引く直前の凛とした雰囲気、そのギャップ...そして何より射撃能力の高さ。ロリっ子でありながら、リスナーである本職の猟師に「負けました」と言わしめるほどの才覚に、ネット上では「次の覇権ロリっ子ストリーマー」「凄すぎて鳥肌たった」「ファンになっちゃう」などと、驚きや賞賛、更には次なる配信を待ち遠しく思うような声が相次いでいる。




「ふむ...巷で言う『バズる』ってやつかな、これが」


 カフェオレの入ったコップを傾けながらひとりごつ。なんだか楽しそうな表題に引かれ、思わずパソコンの前に帰ってきてしまった。


「にしても、バニシカを低級用ライフルで一撃って...」


 政府が考案した、家庭向けの対低級モンスター用アイテムの中でも、ハンティングライフルは最も安価な一方、最も扱いが困難と言われている。それをそつなく使いこなすというのは、言うなればD.Busterの資格を持っていてもおかしくは無い実力。


「...そういえば、あいつも上手かったな」


 銃の扱いにおいて右に出るD.Busterはいない...そう語られるほど、彼の射撃術は研鑽されたものだった。間近で見たその腕に震え上がったのは、未だ記憶に新しい。


「まさかね...」


 思わぬところから掘り出された思わぬ共通点。配信そのものは見れていない私にとって、そんな貴重な情報をここで得られたのは僥倖だった。


「...本当に、有り得るのか?」


 「あやちー」と彼が同一人物ならば、彼は死を経験し、その上で生き返ったということになる。だがこのご時世、ダンジョンに性転換に幼女化に、もはや何でもありな状況だ。転生という線も、頭ごなしに非現実的だと否定できないのが現状。


「ま、変に期待しすぎないようにしよう。私の見間違えの方が確率は高いんだ、ショックを受けないように自己防衛はきちんとな」


 などと虚勢を張りながらも、私は落ちつかない胸騒ぎと駆け抜けていくかつての彼との記憶に、どうしようもなく希望を抱いてしまうのであった。



「...目いっぱい撫でてやろ...」


 正直、彼の自宅に無断で侵入していると思しき人間にこれほどの母性を抱くのは癪だが。もしも「あやちー」=彼なのであれば、私は彼───改め彼女をこれでもかと愛でてやろうと思う。


 だって可愛いんだもの。なんだ、この変な感覚は。キュンキュンするぞ。ナニコレ。

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