第2.5章

第1話

「だから、何回言ったらわかるの?間邪まじゃの方は神樂美かぐらびだよ」

「覚えられねぇよ、だから歴史は好きじゃないんだ。大体、神樂美かぐらび神煉しんれんも同じ神の文字つけやがって。魔人と魔神に関しては読み方一緒だしよ」

「やっぱり瑞雲みずも兄最初からやり直した方がいいんじゃないの?」

「そもそも歴史の知識なんて使わないだろ。覚えらんねぇし」

「まぁまぁ、ゆきなんて全然覚えてないし、空くんもお兄ちゃんも人の名前覚えてるだけすごいよ」

兄さん、瑞雲みずもにぃ、雪羽ゆきはちゃんは次の剣術の練習に向けて着替えをしているところだ。


兄さんはなんでもできる。勉強は勿論、運動だってできるし、本当になんでもできる。

対して弟のぼくは大したことはできない。全てにおいて、当たり前のように劣っている。そもそも勝とうとは思わないし勝てるとも思っていない。でも、兄さんの様にはなりたいといつも思う。


瑞雲みずもにぃもすごい。運動ができるんだ。まぁ、勉強は全くだけど。運動においては兄さんと頑張れば競えそう。歳の差かな?どっちにしろ、兄さんが勝つのが目に見えているんだけどね。


瑞雲みずもにぃの妹、雪羽ゆきはちゃんもまた、可愛いんだ。儀式から2年が経ってだいぶ魔人に近づいてきちゃってるけど。だって角生えちゃってるし。まぁ、そこも含めて可愛いんだけどね。でもやっぱり、可愛さで見ても兄さんのが勝つかなぁ。


「……いいなぁ、りゅうくんは。ゆき、剣術苦手だからやりたくない」

「雪羽そんなこと言うな。できるだけありがたいと思え」

瑞雲みずもにぃの少し口調がキツくなった。

「なんで、そんな可哀想みたいないいかたするのさ。それこそよくないと思わない?」

すかさず、兄さんが言う。こういうの兄さん好きだからなぁ。

「別にぼくは気にしないよ」

ぼくは剣術は習わない。ぼくには生まれつき、のだ。片腕で習っても良いが、そもそも教えようなんて思われないし、ぼくも教わろうとも特に思っていない。家系が家系だけあって、何不自由なく暮らしている。

でも、たまにやってみたいと思う時もある。みんながやっていて楽しそうだなといつも思う。みんなにできてぼくにできないことが山ほどある。


剣の練習の時、ぼくはいつも1人ぼっちだ。兄さん瑞雲みずもにぃも雪羽ちゃんも練習していて、ぼくだけやることがない。だからぼくはいつも縁側に座ってみている。

「ほら、雪羽ゆきは、しっかり支えるんじゃ」

「……っだって、重いもん、こんなに重かったら、ゆきの腕取れちゃうっ」

今日は真剣を持っている。真剣は木刀に比べて重いらしい。……ぼくも持ってみたい。かっこいい。

真剣は危ないらしく、けい先生の目の届く範囲でしか使っちゃいけないらしい。そりゃ、まだ子供だからね。先生は雪羽ゆきはちゃんにつきっきりで教えている。真剣を持てない他2人は少し離れたところで木刀を振り回してた。

どっちにしろ、みんな楽しそうだ。

「いいなぁ……」

ぼくの口からそんな言葉が思わず漏れた。

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