第30話

今日は僕の誕生日である。母さんとは別居だからきっとケーキもプレゼントもないだろう。

僕は空と一緒にオカルト部の資料室に向かう。

「あ、てるてる、ちょっとまってて、私飲み物買ってくる」

さっき言えよ……もう通りすぎたじゃん。

僕は1人でここに突っ立ってても意味無いため、空と一緒に引き返して自販機に向かう。

空は自販機にお札を1枚入れる。

空はコーラのボタンを押す。

ガシャンと音を立ててコーラが出てきた。

空はお釣りをもう一度自販機に入れた。

「てるてるはなんか飲む?」

「僕はいいよ」

「コーラ飲める?」

「……まぁ」

奢ってくれると言うならば素直に奢られよう。何せ、今日は僕の誕生日だし。

空はまたコーラのボタンを押した。

財布からもう1枚お札を取り出したかと思うと、また自販機に入れる。

「いくつ買うんだよ」

「4つ」

「はぁ?」

そんなにいらないだろ。

空は手馴れた手つきであと2つ購入した。

時間かかった。

「私、トイレ行ってくるね」

「えぇ……」

もうそろそろ行こうよ……

「そんな嫌そうな顔しないでよ。私、漏れちゃう」

僕は渋々待つ。この時間が暇で仕方がない。

オカルト部の方はあと部屋の飾りつけとペン書きで終わるかな。看板はできてたようだし。

「おまたせ!」

「行くか」

オカルト部の集合時刻はとっくに過ぎた。2人揃って遅刻である。けど、急ぐ気は1ミリもない。めんどくさいし。

「あ」

「あ?」

「……筆箱教室に忘れた」

「……えぇ……」

「ねぇてるてる、着いてきてよ」

「嫌だよ!めんどくさい」

僕は強制的に空に引きずられて教室に戻った。


はぁ、やっと着いた。

僕はなんの躊躇もなくいつも通り資料室のドアを開けた。


パン!パァン!


銃声とも間違うような破裂音が室内に響く。

「「「ハッピーバースデー!!」」」

クラッカーのカラフルなリボンが僕にかかる。

……びっくりしたぁ

部屋は文化祭の飾りとハッピーバースデーという文字の風船で飾られており、大きなテーブルの上にはケーキがあった。しっかりローソクもたっている。

「ちょっと瑞雲みずも兄、準備遅い!私、時間稼ぎ頑張ったよ」

時間稼ぎ……

「はい!てるてる、ハッピーバースデー!」

僕は頭を整理する暇もなく、大きな紙袋を渡される。それに続き珠数木すずのきと先生からも渡された。手ぶらの僕の手は一瞬にして誕生日プレゼントで埋まった。

……嬉しい。

「てるてる、ケーキ、切る?」

僕は空からナイフを受け取りケーキを切った。綺麗に等分は出来なかったが、まぁいいだろう。


「えうえう、あんおういうええんおああおえあえええ」

食いながら喋るなよ。てるてるだけはわかったけど。

「てるてる、誕生日プレゼントは後で開けてね、で合ってるか?」

すげぇ瑞雲みずも先生……これが長年の仲ってやつか。てか、

「美味しい」

ケーキめっちゃうまい。すごくうまい。高かったのかな?

「このケーキ、私が作ったんだ!!どう?すごいでしょ!!」

甘い。美味しい。さすが空。めちゃめちゃ美味しい。

「コーラもあるよ!」

4本のコーラはこのためだったのか……


僕らは時間ギリギリまで楽しんだ。飾りは半分このままにしておくだけで良さそうだった。ペン書きの方は終わらせてくれていた。おかげで今日はケーキを食べるだけで良かった。

家に帰ると母さんからもプレゼントとケーキが届いていた。今日は本当に良い日になった。

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