第28話
よし、あとペン書きだけだ。
僕はB4サイズの紙に書かれた鉛筆の文字の羅列を眺める。よく集中してかけたんじゃないかな。ペン書きの前にちょっと休憩をしよう。流石に疲れた。
この部屋を掃除しなかった先生はというと、寝てる。生徒がこんなに頑張ってるのに。先生がやってくれたことといえば、唯我独村の写真を印刷してくれたことくらい。まぁ、何もしないよりマシか。
空は、1人でオカルト部の看板を作っていた。マジでうまい。本当にセンスの塊だと思う。僕が空と出会ってから2ヶ月が経とうとしてるけど、僕はいまだに空ができないことを知らない。本当になんでもできる。性格には難あるが、できることで言ったら本当にこれ以上ないくらいの完璧な人間だ。
そろそろ続き始めるか。
この下書きの内容全部空が書いてくれたんだよなぁ。僕、本当に何も覚えてなかったし。でも今日おかげでちょっと知識ついたかも。主に儀式のことを書いた。結構グロテスクだった……
簡単に要約すると、猫の血を使って魔法陣を書いて、剥いだ爪を並べて歌を歌い、呪文を唱え、猫の血を飲む。
すごく衛生上不安なことがたくさん書いてあった。この儀式を空たちはこと儀式をやったってこと?
「空たちはさぁ、猫の血をマジで飲んだの?」
「え、飲んでないよ」
「え?」
「え?」
「空たちは儀式やったんじゃないの?」
「やったけどそこに書いてあるやつじゃないよ」
ん?どう言うこと?
「儀式って無限にやり方があってね、大まかなところがあっていれば誰でも簡単に儀式が成立するんだ」
「……なるほど。じゃあ飲んでないの?」
「私と
「なんで知ってるのよ。わたし、言った覚えないわよ」
「儀式も含め、日本全てのカブトムシとドーナツの情報は天邪のデータに記録されているよ」
何を飲んだんだろ。
「天瀬くん。そんな目で見ても、わたし言わないわよ」
無意識。僕どんな目で見てたんだろ。
あ、そうだ、あれ聞こうと思ってたんだ。
「
僕は鉛筆の線をなぞりながら話す。
「わたしはいなかったわ。それで、『唯我独村』はどんな感じだったの?」
「人がいなくて、猫がいっぱいいてすごく不気味だったけど、なんで
「バイトよ」
あれ、バイトって校則的によかったんだっけ。
「まぁ、一定の条件を満たせばバイトOKだしね」
空、そんなことも知ってるのか。この中で唯一留年した僕でも知らなかった。
「そうだ、せんせー、10月の第1週と2週って空けといた方がいいよね」
先生、寝てるよ。空の位置からだとちょうど見えないのか。
返事がないのに気づいた空が先生を起こしに行った。
「ちょ、
そう言いながら空はそこら辺にあった紙の束を丸めて思いっきり頭を叩いた。普通に痛そう。
「……あ?」
うわっ、すっごく不機嫌。先生は起こすと不機嫌になるのか。気をつけよ。
「10月の第1週と2週と3週って空けといた方がいいよね。高天原祭の前後」
高天原祭。秋に開かれる祭りだ。ちなみに僕は行ったことがない。行く友達もいなかったしな。でも毎年多くの人で賑わっているイメージがある。それが何か関係あるのか?
「……そうだな。空けといてくれると助かる」
「だってさ、かなかな。そこはバイト入れないでね」
「わかったけれど、なぜ空けないといけないのかしら」
「……代々、
??
「どうして、天邪の人が関係あるんですか?」
高天原祭ってここら辺の地域の祭りでしょ?
ん?なんでだれも答えてくれないの?あれ?
「……てるてる、もう少し、カブトムシとドーナツの知識あった方がいいかも……」
もしかしてみんな引いてる?
「……高天原祭はおもにドーナツとカブトムシの祭りなの。日本に住むドーナツとカブトムシは必ずその祭りに参加しなきゃいけないのよ」
なんで?
「そこで色々情報を更新するのよ」
「あぁ、
知らなかった……
キーンコーンカーンコーン
よし、だいぶ書けた。あと1日もあれば終わるかな。
今日は初めて知ったことが多すぎて頭がパンクしそうだ。きっと寝たら明日には半分以上忘れてるんだろうな……
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