第27話

僕は一体何をやってたんだろう。なぜ僕は病んでたんだろう。

水曜日。平日ど真ん中の業後の文化祭準備期間。僕は今日も1人で考え事をしながら作業をする。

僕は元気になった。と思う。多分。なぜあんなにしんどかったのかわからないくらいに元気。

僕はあの後、泣き疲れて寝た。起きた時にはもう日が暮れはじめていた。

きっと話して、泣いてスッキリしたんだろう。


痛っ


やはり作業中の考え事はよくない。おかげで針が刺さった。まぁ、そろそろ集中力も切れてきた頃だろう。

僕は縫い物を広げて見てみる。

うん。多少、雑なところはあるが我ながらよく出来てる。劇の、シンデレラのドレス。

よし、続き縫うか。僕はまた作業に戻った。


結局、唯我独村ってどんなところだっけ?寝てたのもあってほとんど記憶にないんだよな。別世界みたいだった記憶はある。

血まみれで、人が一切いなかったんだよな。いたのは猫だけ。やっぱり『堕猫村だねこむら』っていうだけあって、猫が多かったな。不気味だったなぁ。

あ、そうだ、儀式とかあったっけ。うん。そうだ。僕の記憶が間違っていなければ、真ん中の塔を中心にでっかい魔法陣の跡があった気がする。その塔は、空が入ってたっけ。それから……

やばい。全然覚えてない。どうしよ。これ、まとめないといけないんだったよな。やばいやばいやばい。まぁ、空も瑞雲みずも先生もいたし、大丈夫か。


そういえば、唯我独村だけじゃないじゃん。天邪の館にも行ったわ。たくさんの本読んだ……いや、見た。読んだ覚えはない。読み聞かせられた。何言ってたっけ……死亡録がどうとか言ってたっけ。猫が……とか……

本当に大丈夫か?この土日二日間僕はなにをしてたんだ?僕、部長だよな……

……

ぜっっっっっったい部長僕じゃない方が良かったよね!僕、こんだけしか出来ないし。空とか珠数木すずのきとかのが絶対よかったって!

……ん?あれ?珠数木すずのきって土日いたっけ?

あれ??いた記憶がないぞ……うん。天邪のところに行った時も、『唯我独村』に行った時もいなかったよな。え?なんで?あれ、強制参加じゃないの?あ、珠数木すずのきって血、無理なんだっけ?……サボり?いやいやいや、あの珠数木すずのきだぞ?珠数木すずのきに限ってそんなことはないか。体調不良?いや、月曜日普通に元気に学校来てたな。じゃあなんだ??

まぁ、今度聞いてみよう。


「やぁ、てるてる!元気?お、頑張ってるね〜」

少し離れた場所で練習していた劇の空が僕の横までやってきた。

「うん。あとちょいで終わりそう」

僕は無心で縫い続ける。

「おお!これ全部、てるてるが縫ったの?」

「うん」

「器用だねぇ〜私には絶対無理だね」

な訳ないだろ。どうせそう言ってめちゃめちゃできるくせに。

「そういえば、空は何役なんだ?」

「私はシンデレラ。ビビデ・バビデ・ブ〜‼︎」

え?シンデレラ役?しかもビビデ・バビデ・ブーって魔法使い役じゃない?ってことは、僕が作ってるこれ、空が着るの?どうりででかいと思ったわ。

空は相変わらず僕にちょっかいをかけてくる。頼む。危ないからやめてくれ。

珠数木すずのきは何役?」

「かなかなはシンデレラの姉役だよ。あーあ、兄役とかあればそっちにしたんだけどなぁ」

シンデレラの兄役……どんな役だよ。

「”あぁ、私の愛しのシンデレラよ。また姉さんに洗濯押し付けられたの?姉さんもひどいよね。一緒に洗う?“とか言って兄役やりたかったなぁ」

「そんないい性格の役があったらこの物語破綻するよ」

「まぁね」

「おぉい!!空!!続きやるぞ!!お前この物語の主役なんだから勝手にどっか行くな!!」

「やっば、呼ばれた。じゃあね、てるてる、私のために頑張ってね!!」

そう言って空は去っていった。

主役かぁ。すごいなぁ。女のシンデレラ役かぁ。どんな感じなんだろ。

……ちょっと楽しみ。

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