第24話
僕は部室でスマホの電源を入れる。
起動するまでの真っ黒い画面には、まだ見慣れない酷く整った醜い僕が映し出された。
僕がこの顔に変わってから顔認証の設定はめんどくさくてやっていない。4桁の番号を入力する。
えっと、スマホ開いて何しようとしてたっけ。
「あーやっぱり、唯我独村でよかったかも。結構いっぱい資料ある」
あぁ、そうだ文化祭の何かのために『唯我独村』について調べないといけないんだった。
僕は検索欄に何度か誤字りながら唯我独村と入れる。
「空、唯我独村の状態ってどれくらい酷い?」
「多分、せんせーが思ってるより酷くないよ。ちょこーっとだけ綺麗にすれば普通にホラースポットとして楽しめるくらい。他に許可とれば、ぜんぜん私ら入れる」
「行くか。輝斗、
「わたしは平気です」
「……僕も大丈夫です」
度合いによる。でも、多分無理かもしれない。
あの時の記憶が、電車の記憶が脳裏にこびりついて離れないんだ。今でも鮮明に思い出せる。
原型を留めていないようなぐちゃぐちゃに絡まった足や内臓。
いたるところに飛び散った血。車輪から滴り、地面のくぼみに溜まっている血。何日経っても落ちない血。
トラウマ
あぁ、なんで光は1人で死んじゃったんだろ。
……どうせ、どうせ死ぬなら僕も連れてってくれればよかったじゃん。独りになんてなりたくなかったよ。なんで僕だけ独り残したの?
辛いよ。しんどいよ。苦しいよ。僕も一緒に死にたかった。でもきっと光の方がしんどかったよね。僕が何もできなかったから。僕が悪いんだよ。何度謝ってもお前には届かない。今更後悔してももう遅い。ごめん。
「輝斗はどうだ?」
聞いてなかった。え、今何話してた?ごめん聞いてなくて。申し訳ない。迷惑だ、僕。
「土曜の部活何時からがいい?」
どうしよう。何か答えなきゃ。なんでもいいじゃ迷惑かな。なんて言えばいいの?あぁ、どうしような泣きそう。一言でも喋ったら泣きそう。
「何時でもいい?」
僕は小さく頷いた。空は優しかった。僕は申し訳なくて、顔を見れなかった。酷いやつだ。
僕は自分を落ち着けるようにして大きく深呼吸する。
僕はのろのろと手を動かした。
時折うんこが僕のスマホを覗く。
ゆっくりと時間をかけながら、『唯我独村』についてのいろいろなサイトを読む。
『地図から消えた村⁈』『魔女の住む村』
色々、調べたけど書いてあったことはどれも同じようなかんじだった。
・深い山奥にある集落
・猫が多い
・魔女がいる
・行ったら帰って来れない
こんな感じだった気がする。
「せんせーせんせーこんな動画見つけた〜!」
空がスマホを掲げる。
僕らは空のスマホを囲むようにして覗き込んだ。
誰かの動画配信の切り取りのようだった。
少し霧がかった暗い林の中、配信者は1人で奥に進む。
ガサっと音がするがそこには何もいなかった。
そのままダラダラと早送りをしながら動画の最後の方に差し掛かった時だった。
急にプツンと動画が途切れた。
どうやらそこで配信は終わったらしい。配信者本人の話によると、その後、気づいたら知らない場所にいたらしい。
と、そんなかんじの内容だった。と思う。
とりあえず、ホラースポットってことはよくわかった。
いきたくないなぁ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます