第23話

うるさい。

そろそろ文化祭と体育祭が近づいてきたらしい。

現在はクラスの総合の時間。文化祭で役割を決めているらしい。

うるさい、うるさい、うるさい。なんでそんなにうるさいんだよ。そんなにでかい声じゃなくても聞こえるだろ。あぁ頭痛い。疲れた。

「てるてる〜なにやる?」

「……なんでも」

「なんでもっていうと個人種目になるけどいいの?短距離走の枠だけ空いてるからそれになっちゃうよ?」

個人種目?僕が?運動神経悪いし。あぁ、そうだった前より体力テスト良かったんだった。そんなこと言われたのは初めてだ。

光はいつも個人種目、短距離走で出てたなぁ。でも、僕は光みたいに速くないから。それに負けた時の責任が重い。光はぶっちぎりの一位だったかもしれないけど僕は違う。同じうんこが憑いているとはいえ、僕の足が遅いことに変わりわないし。

「てるてる、どうする?」

「……リレーで」

そういう空はどうするんだろ。

やっぱりぼくとはちがって運動神経いいからな。個人種目だろうな。

「あ、そうだてるてる!文化祭は何やりたいの?」

文化祭?

「劇と教室発表、どっちがいい?」

何それ。

「……さっきの話きいてた?」

さっきの話……最初に説明されたやつ……聞いてたけど……えっと……なんだっけ?

「劇は、演者と衣装づくりと照明の三つに別れてるんだって。教室発表はまだあんまり決まってないらしいよ。あ、そういえば、てるてるは去年文化祭行った?」

「え……行ってないですね」

「なんで敬語なのさ。まあいいけど。じゃあ去年の感じわかんないか」

行きたかったな。光と。2人で文化祭まわりたかったなぁ。光がいたら僕はもっと青春できたのかな。

「私は劇にしようと思うけどてるてるも劇にする?」

「……うん」

「それじゃ決まりで!」

そういうと空は陽キャの元に駆け寄って行った。

あぁ、光がいた時も僕はこうだった。光とそう仲良くなる前から光は僕が言いづらそうにしているのを見てわざわざ聞きにきてくれた。その時から光は僕に優しかった。僕はその時からなんもみてなかった。陽キャという部類に勝手に括り付けて。僕はなんも変わってないや。

寂しい。独りだ。もう光はいない。空は光の代わりじゃない。光のようにずっと僕の隣にはいてくれない。今だって。空は僕がいなくてもいつも楽しそうだし。

そういう珠数木すずのきも自分のやりたいことはすでに決め終わっていて、1人で席で英単語帳をみている。1人でも寂しくはないのだろう。僕とは違って。僕も珠数木すずのきみたいに独りが平気になりたい。

辛いなぁ……疲れたなぁ……

ごめん、光。

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