第21話
僕はテストに向けて課題を進める。まだテスト期間には入っていないんだけどね。
「おはよう」
現在時刻は10時過ぎ。
「おはようございます」
やっと
先生はキッチンに向かい、お湯を沸かす。
「朝から英語の勉強とは偉いな」
相変わらずぶっきらぼうに言う先生。
「他にやることが無いだけですよ」
僕は単語帳に目を向けながら答える。
「輝斗はゲームとかはやらないのか」
時が止まった気がした。
「お前の年くらいだと、休日はゲームとかするんじゃないのか?」
昔は、2年前はゲームをしていた。主にユニをやっていたのを覚えている。
でも今は違う。
僕はゲームをやめた。やると、あいつを思い出すから。
あいつがいないゲームの空間が酷く寂しく感じるから。
「……ゲームはあんまり好きじゃないんで」
少しだけ笑って返した。
間違ってはいない。あの日から、僕はゲームを楽しめなくなった。
「そうか」
先生は沸いたお湯でコーヒーを入れ、僕の前に座り、新聞を開いた。
僕は英単語帳に視線を落とす。パラパラとかわいた音を立ててめくる。
正直、英単語なんて何一つ頭に入ってなかった。
頭の中は光のことで埋め尽くされていた。
出会った記憶、遊んだ記憶、勉強した記憶、ゲームした記憶、それから……死んだ記憶。
翌年の記憶は半分もない。
ただただ、辛かった。
死ぬなんて、思ってなかった。ずっとずっと、高校を終えたその先まで一緒だと思ってた。
一緒に
光は死んだ。故に、僕はひとりぼっちになった。
描いていた明るい未来は、全て黒く塗りつぶされた。
本当になんでこうなったんだろ。
僕が動けばこうはならなかった?僕がもっと見てればこうはならなかった?僕がしっかり聞いていればこうはならなかった?僕が……
「輝斗、そういえばオカルト部の部長って誰だ?」
急に話しかけられて僕は驚いた。
「あ、勉強中にすまん」
部長?確か、じゃんけんで……あ
「……僕ですね……」
「そうだ。文化祭までに部内の発表も決めないといけないな。あーめんどくさい」
先生は新聞紙を置いて立ち上がる。多分タバコでも吸いに行ったんだろう。
もしも
もしも光が生きていたら、ここにいたのは僕ではなく光だったのだろうか。
あと半年、光が生きていれば、空と出会って、先生と出会って、
……生きていたとしても、僕は一人取り残されたのだろうか。
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