第16話

体力テストあったのに、部活もあるのかよ。

体操服は汗まみれ。またこれに着替えるの?

瑞雲みずもせんせー、体操服着替えたくないんだけどー」

空も同じ意見か。

「他に服ないだろ」

まぁ、そうだけど。


ガラガラガラ

扉を開けて入ってきたのは体操服姿の珠数木すずのきだった。

「あんたたち、まだ着替えてないの?そんなにゆっくりしていたら、空くんはまだしも輝斗くんは部活時間内に走り終わらないんじゃないかしら」

……まぁ

「ほら、珠数木すずのきも体操服着てるし、ごちゃごちゃ言わずにお前らも着ろ」

「「はぁい」」

うわ、冷た。汗が冷えてひんやりしてる。気持ち悪い……

「そういえば、かなかなは体力テストどうだったの?」

「まぁ、そこそこできたわ」

「反復横跳びは?」

「……まぁ、それなりにできたわ」

あれ、なんで視線を逸らした?

「いくつだったぁ?」

にたぁ〜と嫌な笑みを浮かべる空。お、これは何かあるぞ。

「……44回。6点よ……」

え、いいじゃん。あ、そうか輪っか憑きと考えると低いのか。

「えぇ?低くなぁい?」

「……っ、滑って転んだのよ!仕方ないじゃない!!それより、早く部活始めるわよ!」

珠数木すずのきはずかずかと教室を出て、外へ向かった。

「……ちなみに空はいくつだったんだ?」

人に聞いておいて自分は答えないってのはなしだろ。

「私は84。手を抜いて84だからね。これでも学年トップ」

さすがだ。凄い……

「で、てるてるは?」

「……僕は64」

「ギリギリ10点だね。まだまだだねぇ」

腹が立つけど今までに比べれば随分いい。10点なんて今日初めてとったし。

「ちなみに、カブトムシとドーナツの体力テストの平均っていくつくらいなの?」

「んー、人によるからね……。でもだいたいの人は評価でA取ってるんじゃないかな。うーん、瑞雲みずもせんせーはどう思う?」

「そうだな。人によるだろ。ドーナツでもA取れないやつとかいるし。そんなことより、喋ってないで早く行け。珠数木すずのきはもう行ったぞ」

僕らは渋々教室を出る。とても、やりたくない。

瑞雲みずもせんせーは反復横跳びいくつだった?」

「俺は記録をとる方だ。やってない」

「えー、やれば良かったじゃん」

「やっても化け物みたいな記録しか出ないからな」

「じゃ、今度暇な時、勝負しようよ。ガチの体力テスト」

空のガチの体力テスト?!気になる。手を抜いてこれなら、本気でやったらどうなるんだろう。

「どこでやるんだよ。そんなに広い場所ないだろ」

「二項演山とかは?」

「だから、あそこは危なすぎるだろ。そもそも平らじゃないし」

「まぁね」

二項演山ってたしか市の端っこにある山だったよな。立ち入り禁止の。山自体が立ち入り禁止 というより、あの辺一帯が立ち入り禁止だった気がする。あんまり知らないんだよな。あの辺。遊ぶ場所もないし、でっかい平屋が並ぶばかりで全然行ったことがない。

「ほら、てるてる、行くよ」

「はぁい」


また走るの?さっき走ったじゃん。まぁ、確かにまだシャトルランやってないけど。やだ、走りたくない。

あぁ、部活4日目にしてもう辞めたい。退部したい。

「てるてる、かなかなはもう走ってるよ」

あぁ、やだ。でもいつまでも駄々をこねてるわけにも行かないし。

あぁ、もう!行くよ!

僕は走り出した。

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