第15話

あぁぁぁぁ、今日、体力テストだぁぁぁ

いやだぁぁぁぁぁ。

「てるてる、準備運動ちゃんとやらないと怪我しちゃうよ?」

「わかってるよ」

めんどくさい。筋肉痛は痛いし、全然できないし、筋肉痛だし、筋肉痛で全然やる気が出ない。まぁ、そもそもやる気はないのだけど。

『ねぇ、輝斗。そんなに嫌なら、我が手伝おうか?』

え、いいの?

「てるてる、くれぐれも悪魔の力は借りないでね」

はい。ですよね……

「てるてる、最初は上体起こしだね」

最初、腹筋なのか。去年は体力テスト受けてないから分からないけど、一昨年は一回も出来なかったからな。今年こそは一回くらい……

僕は寝転んでパートナーに足を掴んでもらう。

あー嫌だ。


ピー


先生の笛の合図と共に、僕らは上体起こしを始める。


ん?あれ?え?


できる。できるぞ。

一回、二回、三回、四回……

すごい。僕、天才かも。

十四回、十五回、十六回……


ピー


先生の笛の合図と共に、僕らは上体起こしを終えた。

これ、僕、結構できたんじゃない?なんならまだまだ出来そうまである。

前回の0回に対して、44回できた。凄いぞ、僕。

「「「おおぉぉ」」」

僕の左の方から歓声が聞こえて来た。

「74?!」

「え、お前、まじかよ」

「化け物じゃねぇか」

その輪の中心はそらだった。

「てーるてるー!!いーくーつ?」

おい、目立つだろ。

「44……」

そういうといっせいに空の周りにいた奴らがこっちを向く。

え、何?

「お前も、すげぇな」

……初めて言われた。

嬉しい。今まで運動音痴としか言われてこなかったから、初めてすごいとか言われた。嬉しい。めっちゃ嬉しい。

「てるてるって、筋肉の使い方が悪いね……もう少し良くすれば、倍はいけたんじゃないかな……」

44で十分だろ。それに倍の88回なんてやったら、もう人間じゃない。

僕は次の人と変わるために立ち上がる。

「あ゙、やべぇ、筋肉痛が……」

あまりの痛さに尻もちをついた。

まぁ、でも出だしは良かった。やっぱり、いや、確実にうんこの力のおかげもあるだろう。


あぁ、50メートル走、これで体力テスト最後だぁ。疲れた。

僕、名簿番号1番だ。最初じゃん。まぁ、1番早く終わると考えればましか。


「よーい、ドン!」

体育委員の合図で走り出す。

隣には野球部。今までの僕なら大差をつけられて負けていた。でも、今の僕なら……

半分たったけどまだ隣にいる。しかも少しぼくのが速い!!野球部と競えてる!!

よっしゃ!!抜いたっ!!

そのまま、ゴール!!

やばい。楽しい。初めて体力テストが楽しいなんて思った。

はぁ、体力テストももう終わりか。筋肉痛ながらに、よく頑張った。

やはり、うんこのおかげもあって前まで点数ほぼ1点だった僕が、ほぼ、満点になった。

嬉しい。すっごく嬉しい。今日はご褒美に自分にプリンでも買ってあげたい。


僕は教室に戻って制服に着替える。暑い、ベタベタする。やだ。

「なぁ、お前何部?」

「え、僕ですか?」

「そう、お前」

あ、そうか、入学して少ししか経ってないから名前分からないのか。実際僕も、こいつの名前分からないし。

「僕は、オカルト部です……」

「お前もオカルト部か?!」

お前『も』?

「空といい、お前といい、オカルト部はすげぇな。野球部よりも運動神経高いじゃねぇか」

え、まじかよ。あの野球部よりも??

「まぁね、オカルト部は心霊スポットとか回ったりするんだ。もしも、幽霊とか来たら、私達は、逃げないといけない。足が遅かったらおいつかれちゃう」

空が割り込んで来た。

幽霊なんているわけないだろ。あ、でも、悪魔なんて存在がいるくらいだから、いるかもしれない。

「幽霊なんて、いるわけないだろ?」

「分からないよ、いるかもしれない。ほら」

そういって、クラスメイトの後ろの、黒板消しを指さす。もちろんそこには何もいない。

急に白い粉と黒いがげを撒き散らしながら、黒板消しは音を立てて床に落ちた。

「「「うわぁぁ」」」

それを見ていた3人が驚く。

空は黒板消しを元に戻した。

「ほら、いるかもしれないよ?」

そいつらが少しビビって話は終わった。

「空、どうやったんだ?」

空は小声で言った。

「私の魔力でちょちょいとやっただけだよ。魔力ってこういう使い方もできるんだ」

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