第14話

あと……あと1周……きつい……

「がんばれぇ!てるてる〜!!」

もうゴールした空が呼ぶ。その隣では走り終えた珠数木すずのきが座り込んでいた。

あとちょい……あとちょいで……

「てるてるゴール!!」

「やった……はぁ、やった……はぁ……走り、きれたっ……」

「やったね、てるてる!走りきれたね!」


キーンコーンカーンコーン


「よし、お前ら、帰りの時間だ。早く帰るぞ」

早いって。今走り終えたばっかなんだから少し休んでから帰らせて。

僕は、水筒の水を全部飲み干した。

「ねぇ、てるてる、部活って楽しいね」

どこが?

「ねぇ、瑞雲みずもせんせー、オカルト部ってさぁ、旅こぅ……じゃなくて、合宿とかってないの?よく部活とかであるじゃん」

え、めんど。

「どこからそんな費用出てくるんだ。部員たったの3人だぞ。しかも合宿って何やるんだよ?」

「そりゃ、川で遊んだり、BBQしたりとかでしょ」

それはただのキャンプだな。

「合宿って、泊まりで、ひたすら、何か、練習とかするやつじゃ、ないの?」

珠数木すずのきが息を整えながら言った。

「そうなの?瑞雲みずも兄?」

「俺も知らない」

「てるてるは?」

「僕は、帰宅部、だったから……」

走った後、すぐには喋れないって……

「そういえば、かなかなって中学何部だったの?」

「わたしは、柔道やってたわ」

珠数木すずのきはだいぶ息が整ってきたようだ。

「ほう」

空が興味津々といったように聞く。

「合宿とかはあまりなかったけれど、他校との合同練習とかはあったわ」

「どんなことやるの?」

「練習試合とか、もちろん練習とかもするわ」

へー

瑞雲みずもせんせー、合同練習とかないんですかぁ?」

「あるわけないだろ。どことやるんだよ」

「確かに。でもせんせー、よくよくかんがえたら、合宿とかどうにか自腹で出来そうじゃないですかぁ?」

え、自腹??僕、金ないよ。

「ほら、二項演山とか、私たち幹部だしなんならお金もあるし簡単に借りれるし、合宿行こうよぉ〜」

借りれる??山を??

「却下。危なすぎる」

「前幹部ケツアゴのもやしの話?」

ケツアゴのもやし??

「そうだ」

……ケツアゴのもやし?

「私、最近頑張って綺麗にしてるし、大丈夫だよ。それにそこなら色々できるしさ」

……ケツアゴのもやし。

「まぁ、……確かにな」

……ケツアゴ……

「空、ケツアゴのもやしって何?」

「あぁ、前幹部のあだ名だよ」

「ケツアゴで、もやしのようにひょろひょろだったから裏でついたあだ名だ。力があるだけでたいして仕事もしなかったし、調子乗ってたし。嫌っていた人も多かったからな」

あぁ、瑞雲みずも先生の言い方的に、本当に嫌われてたんだろうな。先生も嫌いだったんだろうな。

「ん?前幹部?」

「私の前だね。私がカブトムシになってから即幹部から外されたよ。もう魔人になって今はいないけどね」


「……先生、その話ってこんな人通りの多い場所でしていいんですか?」

確かに。

今まで黙って聞いていた珠数木すずのきが口を挟んだ。

「……まぁ、ギリギリってところだね」

「……あぁ、ギリギリアウトだな」

おお、アウトなのか。幹部とかいう凄そうな立場ならしっかりしてくれ。

「……よし、休憩出来ただろ。部活も終わったし、早く帰るぞ」

「はぁい」

空が気だるそうに返事する。

珠数木すずのきもゆっくりと帰る支度をし始める。

みんなもう帰るのか。もう少し休憩させて……

「ほーら、てるてるも帰るよ」

そんな急かさないでよ。そもそも僕、水一気飲みしたせいで、若干気持ち悪いんだって。

僕はゆっくり立ち上がる。

いや、立ち上がろうとした。

「あ゙、筋肉痛が……」

痛い痛い痛い痛い。足がぁぁぁ

僕はそのまま勢いよく尻もちをついた。


「あ、そういえばお前ら、今度体力テストあるだろ?」

え??嫌なんだけど。

「手、抜くなよ。本気でやれよ」

「私も?」

珠数木すずのきと、輝斗な」

空は?

「そうだね、私がやると、記録が人じゃなくなる」

どういうことだよ。

まぁ、僕もいつも人じゃないような低い点を出してるんだけどね。

あぁ、体力テストとかほんとにやりたくない。

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