第10話

「てるてる、おはよう!今日もいい朝だね!」

6時半。僕は目覚ましの音で起きた。

「昨日と違って朝早いんだな」

食卓の上には美味しそうな朝食が並んでいた。

ご飯、味噌汁、豆腐、卵焼きなどなど……

「これ、全部そらが?」

「もちろん!私はなんでも出来るからね」

そう言ってドヤる。

こんなに作れるとは意外だな。全部美味しそう。

「じゃっじゃーん!見て見て!!弁当作ったぁ!!これが私の分で、これが瑞雲みずも兄ので、これがてるてるの」

おお!昨日とはまるで別人かのように気が利く。怖いまである。

「これだけできるんだったらさ、なんで昨日一日中パンだったんだよ」

「昨日はパンの気分だったし、それに1度やってみたかったんだ〜『いっけなぁい、遅刻遅刻!』って言いながらパン咥えながら走るやつ」

「だったら食パンでやるべきじゃ……」

「そんなの普通すぎて面白くないでしょ」

別に普通でいいだろ。

そんなことを話していたらダイニングのドアが開いた。

「ふぁぁ、おはよぉー」

「おはようございます」

「ボンジュール」

瑞雲みずも先生が欠伸をしながら入ってくる。

とりあえずボンジュールは無視しておこう。

「今日も相変わらず美味そうなもの作るな」

「先生はお料理できるんですか?」

「まぁ、一応な」

「てるてる?瑞雲みずも兄の料理はくれぐれも食べちゃダメだよ!騙されちゃダメ!」

「まるで俺の料理が不味いみたいな言い方だな」

「おお!わかってるじゃあないか!そうだよ!瑞雲みずも兄の料理美味しくないんだよ!見た目はいいんだけどね」

そんなことを話しながら僕らは食卓につき、食べ始める。


違和感……


「あれ、先生、右腕……」

数日前についた先生の右腕のギプスはもうなかった。あちこちに曲がっていた腕は元通り。傷のひとつも見当たらない。

「相変わらず瑞雲みずも兄治るの早いね。さっすがー」

え?もう治ったの?

「まぁな」

えぇ……

「てるてる、瑞雲みずも兄はこう見えてすごいんだよ?あ、すごいというより特殊に近いかも。ヘイ!瑞雲みずも兄!説明パス!」

はぁ、とため息をひとつついてから話し出す。

「俺は悪魔との縛りが弱いんだ」

縛りが弱いとは??

先生の口から次の言葉が出てくることはなく、数秒の時が流れた。

??ん?

説明これだけ?

「もう!説明が短いな!私ら間邪まじゃ家、天瀬家はね、10歳になると悪魔と天使と契約するための儀式を行うんだ。瑞雲みずも兄も私も儀式を行って悪魔たちと過ごしてるんだ。その時に、人間に大きな影響、そうだね、例えば悪魔に乗っ取られないようにとかするために、一方的に縛りを結ぶんだ。強めの縛りが多いんだけどね、間邪まじゃ兄はすごいからその縛りを弱めて、いろんなことができるようになったんだ。まぁ、その分デメリットもあるけどね」

ほへー

「そのメリットのひとつとして回復力が格段に上がる。角憑き、輪っか憑きってだけで回復力は高いんだが、俺はその比じゃない」

「どう?すごいでしょ」

先生ではなく空がドヤる。

「お前にだけはすごいといわれたくないな」

「えぇ?なんでぇ?」

「天邪最小年幹部にして、さらに天邪最強。音楽に運動なんでも出来る。料理もできる。そんな天才様にはいわれたくない」

「でも、私瑞雲みずも兄みたいに空飛べないよ?」

「やろうと思えば飛べるだろ」

「さぁね、やってみないと分からない」

そういいながら肩をすくめる。

こう見てると、本当に2人とも仲がいいんだなって思う。


「あぁ、めんどくさい、めんどくさぁい、思った以上に登校ってめんどくさいんだね」

急にどうした。

「まだ学校行き始めて2日目だぞ」

「でも、歩くのめんどくさい、だるい!ねぇ、瑞雲みずも兄?どうせ目的地が一緒なら送ってってよ、車で」

「ダメだ。お前は一応学生なんだから、学生らしく徒歩で行け。そう、遠くもないんだから」

「ちぇっ」


それから空はあーだこーだ言いながらも徒歩で学校まで行った。

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