第9話
あー眠い。疲れた。やっと学校終わった。そろそろ家だ……つかれた。ほんとに
あぁ、やっと家だ……家じゃないけど。
「たっだいまぁぁぁぁ!!」
『たっだいまぁぁぁぁ!!』
うるっさ。2人揃って、誰もいないだろうに挨拶するのか。
僕は空に与えられた部屋に入って荷物を置く。そしてスマホを……
「てるてる〜?ちゃんと手、洗ったぁ?」
めんど。別にいいじゃん、そのくらい。
僕は渋々起き上がって手を洗いにいった。
眠い、ねむいねむい。ねむい。ねたい……
手を洗って即部屋に戻ってベッドに横になった。
眠いけど、とりあえずスマホを取り出して動画でも見てるか……
ペシッ
「うぇ?いったぁ」
僕の部屋に痛々しい音が響いた。
僕はいつのまにか、ベッドでねてたらしい。
「ほらおーきて!私、今からしごとに……から、……して、……」
「寝ない!寝ない!疲れてても!今から働くの!!」
「ふぇ?」
「じゃ、私そろそろ行くから」
え?どこになにしに行くんだよ。かんしとか言ってたくせに緩いんだな。
『輝斗?また寝るの?』
うんこの言葉なんて知ったこっちゃない。
よし、二度寝するか……
ピーンポーン
だれ?ねむいんだけど。ねかせてくれ。
僕は眠い体を叩き起して玄関に向かう。
どれだけこの家ひろいんだよ。玄関までがとおい……
ガチャ
「はぁい」
「なんだ、寝起きか、輝斗」
「え?あ、まじゃせんせぇ?どうしました?」
「どうしましたって、俺、今日からここに住むんだけど」
「え?」
「え?あ、聞いてないか。そうだよな、あいつが言うわけないよな。俺、一応、あいつがいない間の監視役。だから来た」
「………」
「………輝斗?」
「………あ、そういう事ですか」
「目、覚めてきたな。じゃ、失礼するぞ」
そう言ってキャリーケースをひいて家の中に入った。
「先生、荷物少ないですね」
あんなに部屋物だらけだったのによく入ったな。
「ほとんどいらないものだったから捨てた。ところで、お前の部屋ってどこだ?」
「ここですね。先生はどこの部屋なんですか?」
「それも聞いてないのか……。あ、そうか、来ることも聞いてなかったなら当然か。お前と同じ部屋だ」
「え?」
ここをゴミ屋敷にされたら困る。僕、先生の分の掃除したくない。
「ま、今日からよろしくな」
えぇ………
先生は部屋に入って色々荷物を出し始めた。
あ、だから僕の部屋こんなに広かったのか。どうりで1人にしては広すぎると思ったわけだ。
「輝斗?お前、空になんか変なこととかされてないか?」
荷物を取り出しながら言う。
「いや別に何もされてないですけど」
「そうか、なら良かった」
なにかあるのだろうか。
「あいつ、見た目通り頭おかしい奴なんだ。多分頭のネジ5本くらいぶっ飛んでる。今までちょっかいをかける方向が俺に向いてたからまだ良かったんだが、あいつ、お前のこと気に入ったらしくてな。必要以上にベタベタくっついてくるだろ。
まあ、なんかあったら言えよ、あいつとは長い付き合いだからならな。なんでもわかるとは言えないが、ためにはなると思うぞ」
そこまで頭おかしいやつなのか……?
「……確かに変なやつですけど、そんなに先生が言うほどイカれたやつじゃないと思いますよ」
「そう言えるのは今のうちだけだ。そのうちわかる。あいつはとんでもなくイカれたやつだ。もう遅いが、数ヶ月後には関わったことを後悔するだろう」
先生の顔が若干曇ったように見えた。
「先生……」
「なんだ?」
「あの、もしかしてですけど……」
「おう」
「空のこと嫌いですか?」
一瞬、先生の手が止まった。
「……いや、別に」
何事も無かったように手を動かす。
すごく冷たく聞こえた。
嘘とは思えないが本当とも思えない。この反応、好きでは無いのだろう。苦手なのか?いや、違うな。もっと別の……
「それより、輝斗、眠くないのか?疲れてるだろ」
「はい……眠いです……」
口では言っておきながら、目は冴えてきていて、それほど眠くない。
「そうだよな。ここ数日で色々あったから無理もない。一昨日くらいに悪魔やら天使やらよく分からない話をされて、監視の目が付いたりして。むしろ、今日1日よく頑張った方だ。寝るなら寝な。夕飯には起こしてやる」
さっきのが嘘みたいな暖かい言葉。
僕は先生に背を向けて横になった。
『輝斗?先生のこと気になる?』
まぁ、気にならないわけじゃない。
『着いてって調べてこようか?』
そんなことできるのか。
「いや、べつにいい。それより、ちょっと、ねかせろ……」
僕はその後しばらくしてから寝た。
先生にちゃんと起こされて、僕らは夕飯にフランスパンを食べた。もちろん空チョイスである。
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