第2話 

午後の授業も終わり僕らは帰宅する。部活?そんなものはない。僕らは帰宅部だ。

授業が終わり、無事に帰宅することこそが部活内容である。どんなに秋の紅葉が綺麗だろうと、寄り道をせず、まっすぐに帰るだけの部活。

まぁ、部活に入っていないとも言うが……


そんな帰り道で周りに人がいないことを確認してから僕は光に尋ねた。

つくづく物静かな田舎でよかったと思う。

人が大勢いるところで「うんこうんこ」は困るからな。

「で、何があったんだ?」

どうしたら、あの状況で『うんこぉぉぉぉぉぉぉ』と叫ぶハメになるのか。

「うんこが俺のプリンを取ったんだよ」

「取ったぁ??」

「俺が最後に食べようと大切に残しておいたプリンを取ったんだっ!!」

光はそう言い、歩きながら近くの石を思いっきり蹴り飛ばした。

「そんなわけないだろ!あれは好きだからで!」

光が蹴飛ばした石は地面を転がり、やがて真っ暗な排水溝の溝に綺麗に落ちた。

「当たり前だ!!好きなものは最後にとっておくものだろ!それにプリンが好きじゃない人間なんてこの世に存在しないんだ!!」

いつも通り、何もいないはずの僕の右側に向かって怒鳴る。相変わらず声がでかいし。もう少し音量落とせないのかよ。

あと、2人だけの会話をするな。

「あぁ、いいぞ聞いてやろう。なぁ?どう思うか?」

僕に振られても全くわかんないわ。

「なんの話だよ」

「だぁかぁらぁぁ、プリンは最初に食べるか最後に食べるかだよ!な、お前も後に食べるだろ?」

そんな強い言い方しなくていいだろ。僕初めて聞いたんだけど。

「いいや、僕は最初に食べるね」

好きなものは最初に食べる派なんだと言わんばかりに僕は言った。悪いな、お前の味方してやれなくて。

「なんでだよ!!プリンはデザートだろ!!普通最後だろぉ!!」

「あぁ、もううるさいうるさい!!どっちみち俺は後に食べる派なんだ!!もう取んなよ!!」

気がつくと、となりの公園にいるガキどもが、僕らの方を見てる。逃げたい……

「……今からプリン買いに行くか?」

視線から逃げるため、と咄嗟に出たアイデアだったが、我ながら、なかなかにいい案だ。僕も食べたいし。

「おお!ナイスアイデア!オレ、買ってくる!」

帰宅部はこういう時のためにいつもひっそりとカバンに財布を仕込ませているものだ。


……ん?買ってくる……?


気づいた時にはもう遅かった。隣にいない。遠く先にいた。あいつどんだけ足速いんだよ。光速くらいあるんじゃねぇの。

僕は走るのもだるいのでゆっくり歩いて向かうことにした。


光がスーパーから出てきたのは僕がついたのと同じ頃。楽しそうにビニール袋を掲げて出てきた。


……あいつ、やりやがった。


「はぁ…お前、なんで3個入り買ってきたんだよ」

そうこのバカは3個入りを買ってきたのである。

「だって、多い方がいいかなって思って」

「2人で3個をどう分けるつもりで買ってきたんだ?」

「……」

何も考えてなかったのかよ。バカだな。


―よし、仕方がない最終手段だ。あの手を使うか…


どうやら向こうも察したらしく、僕と光は同時にグーの手を上げた。


「じゃんけん……」


ここで僕はグーを出すような愚かな真似はしない。こいつはいつも最初にパーを出すのだ。ならば僕はチョキを出す!!この勝負もらったぁっ!!


「「ぽん!!!!」」

ほらみろ!!こいつはいつも、最初に……パーを……。。

「よっしゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

バカでかい光の声が近所に響き渡った。

……僕が、負けた……?

「ザマァみやがれ!普段の態度が悪いから負けるんだw」

「もう一回!3回勝負だ!!!!」

「やらねぇよ!大人しく負けを認めろ!かっこ悪いぞ!」 


そうして僕はプリン1個分のお金を光に渡してから、1個だけ家に持ち帰った。1個だけ。

今日はたまたま運が悪かっただけだ。

それになんであいつグーだしたんだよ。いつも通りパーでよかっただろ。

3回勝負でもよかったじゃないか。ほんとあいつは器が小さいな。

ってかそもそもあいつが3個入り買ってきたのが悪いんだ。


そんなこんなで今日もあいつに振り回されて1日が終わった。

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