第5話

あれから中間試験とアルバイトが重なり、結局ノートを開かないまま1ヶ月が過ぎようとしていた。

5限終わりの電車は痴漢されても合法化されてしまうのではないかと思うほど混みあっていて、体とともに心すら疲弊していくような気さえする。

まだ3年夏前なのにすっかり就活ムードになって、鬱々とした気分が続いている。説明会にアルバイト、どれも休みたいのに休めない。

こういう時は友人や恋人と会って話をするに限る。1人でいると余計に気分は落ち込み、変わりもしないのに家計簿を何度も何度も確認してしまい夕飯を食べる気力さえ削られるからだ。

満員電車を50分耐えて待ち合わせの駅に着くと、彼はもう私を待っていた。

「薫ちゃん、お疲れ様」

「彰くん!おまたせ!」

一際背が高い彼は見つけやすい、なんてことはなくいつも背が低い私の方が最初に見つけられる。

じゃあ、行こっか。

と連れていかれた先は美味しいご飯屋さんでもカラオケでもなく、ホテルだった。

いつも何も挟まず家かホテルに向かう私達を周りの友達はどう思うんだろうか。

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鳶と蛙 おそら @fl-lan

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