第4話

スタッフルームに入っていった彼は、数分すると分厚い手帳のようなものを持ってきた。

私の目の前に置くと、それは革でできているようでお店の照明で茶色い革が光沢を出していた。

オーナーはもう片方の手でマッキーペンのキャップを外すと、高級感さえ漂わせるその手帳に『夢を叶えるノート!(マル秘)』とでかでかと書いた。

「え、なにやってるんですか!え!?」

「これを使えば薫ちゃんの夢は叶う」

「…いやファンタジーすぎますよ…」

使ってみなきゃわからんだろう、と笑うオーナーになんだか力が抜けてしまう。

「なんでもいい、薫ちゃんの夢を書いてみるんだ」

本当に叶ったら教えてくれ、俺に。なんて言うから絆されてまんまと持って帰る羽目になってしまった。

こんなノート小学生以来に持つなあ、と当時の恥ずかしさが私を支配した。

…まあでも書くだけならタダだし。

その日はノートを開くことなくすぐにベッドに沈んでしまったけど、いつまでも頭の片隅に妙にキラキラと残り続けた。

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