第3話

最寄り駅に着く頃には西日が私の目を突き刺すように入ってきて思わず目を細めた。

駅から家までは20分と遠く、忙しくて賄いを食べれなかったお腹が警報を鳴らしている。

お米も作り置きのおかずも今日の朝で食べきってまた作らなければならないなんて、考えただけで足取りが重くなるものだ。

そんな日は私のアパートの目の前にあるカフェに行く。メニューはケーキと週替わりのホットサンドのみ。18時までの営業でいつも滑り込み入店をするものだからいつのまにか18時からの30分間は私だけの時間として取っておいてくれるようになったのだ。

「熱いから気をつけて」

今日はピザ風味のホットサンドらしい。パンを湿らすように上顎と舌でカリカリのパンを押し潰して食べた。気持ち悪いと言われるが、この食べ方が好きなのだ。

「んー、おいしい!!」

閉店の時間は過ぎているのにそうかそうか、とにこにこしてくれるものだから週に1回は通いつめるほどここで過ごす時間が大好きになっていた。

「今日は何をしてたんだ?」

オーナーであるおじいさんは、いつも私の話を聞いてくれる。

それに私は甘えて愚痴や家族に言えないような情けない悩みを打ち明けているのだ。

「今日はまた新宿の喫茶店でバイトしてました」

「おお、こことは違って忙しかっただろ」

またまた、と私はマスターのおちゃめな冗談にクスリと笑った。

そうやって1日を思い出すように話していると、佐藤くんのことを思い出す。

「…今日ね、同い年のアルバイトの子が服のブランドを立ち上げたんですって」

「へえ、若いのに立派だな」

「いやあ、本当に。周りにはすごい人しかいないんですよ」

「薫ちゃんだってすごいだろう、自分の生活費を自分でまかなって、学校にもちゃんと行ってるんだから」

そんなこと、他の学生みんなもやってますよ。と言うとそりゃ今の学生がすごいんだなあと心底驚いていた。

「私も、夢はあるんですけど夢のままで終わりそうです」

なーんて、はは。

乾いた笑いの後にため息をついてしまった。

自分で言ったことなのにむなしくて仕方がない。

「ちょっと待っていなさい」

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