5話 証人喚問

「さぁさ、座ってくれ」

エルドに手招きされソファに座る男子生徒

「あの…話の前にアルノは何か言い残していましたか?」

………

「いや、そういう話は聞いてないな」

「そうですか…」

うつむく男子生徒

「じゃあ本題の前に名前とアルノ君との関係性を教えてもらえるかな?」

「はい」

「僕はグレイ・ハーテルといいます、アルノ君とは入学から授業で話すくらいです」

「多分僕もアルノ君も人見知りなのでお互い以外の人とは話してはいなかったと思います」

カキカキ

「なるほど、アルノ君もグレイ君以外の友人はいなかったと言うことかな?」

頷くグレイ

ポタ


ポタ

涙を流すグレイ

「僕が…あの時声をかけてあげれば…良かったと思っています」

「グレイ君、あの時とはどの時かな?」

「学期中間試験の時、アルノ君は成績最下位でした」

「その時にアルノ君は「こんなんじゃ騎士になれない」って泣いてたんです、僕もあんま上じゃなかったので「僕も同じだし、頑張ろうよ」…なんて…今になってその言葉がどれだけアルノ君を傷つけたか…」

「本当に!僕は!!」

泣きじゃくるグレイ

「アルノ君が僕のせいで死んだのなら…僕は取り返しのつかないことをしてしまいました」

「グレイ君…一ついいかな?」

「アルノ君の死因は誰かから聞いたのか?」

・・・

「いえ、聞いてません」

カキカキ

「であれば…なんで君が原因だと感じたんだ?」

・・・

「え・・・だってアルノ君自分で命を絶った……ですよね?」

「いや、誰かによって殺されたんだ」

「え・・・そんなわけ・・」


ガチャ

「おい、買ってきたぞ」

「どうしたそんな暗い顔して」

机に紙に包まれたチキンを置くゴルド

「はぁ…どうやら生徒達は俺に教室へ来て欲しくないらしいぞ」

???

「今のでわかれバカ騎士」

「お前が買い出しに行ってる間の3時間で1ーAのほとんどが相談室に来た」

「は!?」

「そんな来たのか…おりゃてっきり夜までいると思ったぞ」

もぐ

「俺もそうだ、それだけ彼らは協力的に話してくれたし話の整合性もあった」

「一人一人の間隔的に集団で選ばれたんじゃなく個人が個人として来てたと思う」

ペラペラ

メモ帳をめくるエルド

「皆一貫してアルノ君は「自殺」だと思っていた」

「ただアルノ君は背中から刃物で刺された…そもそもアルノ君の魔力残滓じゃ防魔膜を貫通できない」

ぺら

「あともう一つ気になる情報があった」

「もう一つ?」

「あぁ」

「生徒の1人がここ数日、放課後のある場所でアルノ君を目撃していた」

!!

「どこなんだ!!」

「【国営魔道書館】にここ1週間通っていたらしい」

「魔道書館?」

パン

エルドはメモを閉じる

「まぁ今日は行けねぇから明日にでも調べるとするか」

コンコン

「どうぞ」

ガチャ

「先程は拘束魔法を使ってしまい申し訳ありません」

「あなたは、先ほどの」

ドアに立つのは1ーAの女教師

「すみません…私も少しお役にたてればと思いここに来ました」

「ではお座りください」

……

「探偵さん…私はアルノ君が誰かに殺されるような恨みを買う子だとは思わないです」

女教師の顔は真剣

「それを言いに来てくれたんですか?」

頷く女教師

「アルノ君は誰よりも騎士になる事を目指し、そのためならどんな試練も乗り越えてきたと思います」

「中等部の先生からもアルノ君は熱心になり過ぎて時々危なっかしいと手紙を受けるくらいに…彼は真っ直ぐな子なんです」

「それに彼は放課後も1人で魔法の練習をしていたので外の交流は無かったと思います」

カキカキ

「中等部の時も放課後は練習してたとかわかりますか?」

「はい、彼に聞いたら幼少期から毎日欠かさずにやっていると言っていました」

「幼少期…ね」

「では先生、アルノ君は成績最下位と生徒は言っていましたが実際アルノ君が騎士団に入れる見込みはありましたか?」

・・・

「兵士にはなれると思いますが騎士入団試験には…あまり見込みはないですね」

「仮に入れたとしてもその後生き抜けるとは思えません」

「それを本人には?」

・・・

黙る女教師

「あんたが気に病むことじゃない、現実を教える事も教師の仕事だ」

「私は…言いました」

「彼の頑張りを知っていたので兵士になって街を守る事も立派な勤めだと……言いました」

ポロ

涙を流す女教師

「やはりその言葉が彼を…追い込んで…何かに巻き込まれてしまったんでしょうか」

「ここ最近は放課後に…見なかったので…」

カキカキ

「先生」

「あなたは間違ってない、そうやって泣くのもアルノ君の事を思っての事だろ」

「今あなたができる事は生徒達に不安を抱かせないように教壇に立つことだ」

ゴシゴシ

「はい、ありがとうございます」

「探偵さん…絶対に犯人を見つけてください」

「お願いします」

ガチャ

・・・

「はぁ…疲れいたぁ」

「む?」

スピースピー

うたた寝のアルル

「寝ちまったか」

「エルド」

「やはりアルノ君はここ数日に関わった外部の人間に殺されたというわけか?」

「いや違うな」

「アルノ君がどんな交友関係を広げたか知らないがこんな手の込んだ殺人までいく理由が不明だ」

「ルダス騎士が言っていた検査を掻い潜るって線も無しだ」

「なぁゴルド」

「お前がもし人を殺す時、どんな計画を立てる?」

「そう言われてもな…」

エルドは立ち上がる

「俺だったら殺害時に出る魔力残滓以外の痕跡を全て消す」

「これに尽きる」

「状況によって異なるが今回の事件に関しちゃ残滓を消せばいい、憲兵がいるわけでもなく人通りが多いわけでもないし何より相手が弱い」

ガサガサ

頭をかくゴルド

「そもそも王都で人を殺そうって考えにならねぇだろ」

・・・

「どうした?エルド」

「いや…少し状況を整理したくてな」

「帰るぞアルル」

スピースピー

「おい、帰るぞ」

スピー

「おい!かえるぞ!」

スピー

・・・

「はぁ…仕方ねぇか」

「よいしょっと」

エルドはアルルをおぶりドアへ向かう

「なぁエルド」

「アルルは…大丈夫なのか?」

「教団の呪縛は…あれから起きてないか?」

・・・

「大丈夫だ、毎日抗生の薬を打ってる」

「暴走は俺がさせないから安心しろ」

「そうか、それなら良かった」

「明日朝6時に王城前で待っとけよゴルド」

「また俺を使う気か?」

「何言ってんだ」

「事件の真相を暴く現場にお前がいないでどうする」

!?

「お前…わかったのか?」

ふっ

「まぁな」

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