4話 身辺調査

ガッ

「お疲れ様でゴルド隊長」

部屋の前で敬礼する騎士

「おう、お疲れ」

ギィィ

扉の前には地下へ続く階段

「いやぁしかし隊長がいるとどこでもいけるな」

ゴルドの後ろを歩く2人

「ここだ」

細い通路を歩き

3人の目の前には鉄製の扉

【死体安置所Aー12】

ガチャ

部屋に入ると壁には白い服が無数にかけらている

「よいしょ…あ、そうだ」

「お前のサイズはないからここで待っとけよアルル」

頷くアルル

「ちゃんと着てるなエルド」

白い服を重ね着するエルド

「俺はこういうのはしっかりやるからお気遣いなく」

ギィィ

「久しぶりだなメルネ」

白い服を纏った女

「これはゴルドさんとエルドさん」

「お久しぶりです」

………

手を合わせるエルド

「メルネこの子の致命傷は背中から心臓を一刺しでいいんだな?」

頷くメルネ

「実際に見れるか?」

「はい、母親であるアリエラさんからは許可を得ていますので」

「調査に必要ならと」

ガタ

「これは…なるほどな」

遺体の背中には刺し傷

「メルネ、この周りは拭いたのか?」

「いえ、搬送されたのが昨日なのでまだです」

………

「気づきましたかエルドさん」

「私も衣服を脱がして気づいたんですが…」

エルドは背中を見る

そこには刺し傷から垂れる一筋の血痕

「…この血痕」


ギィ

「おかえり先生」

部屋に座っているアルル

「ただいま」

トコトコ

「何かわかった?」

………

「まぁな、今はなんとも言えないが」

「とりあえず次の場所に行くか」

「ん?次の場所?」

「何を驚いているんだゴルド」

「アルノ君を調査するなら行かなきゃダメだろ」

「ルクセンダ魔法学院に」


「ファイア!」

ボウ!

王都に立つ魔導学院

芝が生える校庭には杖を持ち魔法をうつ生徒達の姿

「おぉ〜これはゴルド隊長、お会いできて光栄です」

笑顔の老人

「いえ、急遽すみませんノットリ学長」

学長室で手を握る隊長と学長

ボフ

「ふかふかですね学長殿」

「アルルも座ってみろよ」

ボフ

「確かに」

………

「ゴルド隊長…この人たちは…」

「あぁ!えぇと、先日亡くなったアルノ君の事件を担当している国家役員です」

「ほぉ…」

ノットリ学長はソファでくつろぐ2人を見つめる

「そうですか」

「先ほど渡したカードがあればどの授業でも出入りできますので首にかけておいてください」

「そりゃどうも」

「じゃ行くか」

学院の廊下を歩く3人

「エルド、さっきの態度はなんだ」

「学長の前だったから我慢したが次同じ態度をとったらマジで放り投げるからな」

静かに怒るゴルド

はぁ

「俺はそんな不遜な態度だったか?」

「ただソファに座っただけだろ」

ちっ

「それがダメな事くらい気づけ、もうガキじゃねぇだろ」

「はいはい、すんません」

廊下を歩き目的へ

【1ーA】

「ここがアルノ君が通ってた教室か…今は」

学長からもらった時刻表を見るエルド

「魔知学か…問題ないか」

ガラ!

「こんにちは学生の皆さん!」

静まる教室

「バインド!」

女教師の杖から飛び出る光糸

バシッ!!

「いだ!」

その場に拘束され倒れるエルド

ツンツン

「大丈夫?先生」

顔面から落ちたエルドの頭をつっつくアルル

ガガ

顔を動かすエルド

「アルル…解いてくれ」

「普通に腕と綺麗な顔が痛い」

「あなたちが何者か答えるまで解きませんよ」

女教師はエルドに近づく

ブチ

!!

何食わぬ顔で拘束を解くアルル

「先生…先生の顔は綺麗じゃない」

「ひどい!」

ガン!

「いだ!」

エルドのケツをふむゴルド

「授業中申し訳ありません」

「私は王直属魔導騎士団第1部隊隊長のゴルド・アルデロスと申します」

!!

ざわざわ

教室が一気にざわつく

「おい…本物だぞ」

「私初めて生で見たかも!」

「今日はよろしくお願いします」

ニコ

「きゃーー!!」

ゴルド生徒に向け微笑みかけると教室は黄色い声援に包まれる

「どけ馬鹿野郎」

立ち上がるエルド

「おほん、今日は先日亡くなったアルノ君の事について聞かせてほしい」

・・・

コートを正し生徒の方を見渡す

「ふむふむ」

「今「この変な人早く消えろよ」と思った君たち、残念だが俺は学長に調査が終わるまで滞在許可を得ている」

「俺の事を見たくなかったら何かアルノくんについてわかることを話してほしい」

「もちろん強制はしない…話したいやつは一階の相談室に来てくれ」

「では、行くぞアルルと勘違い騎士」

ちっ

エルドとアルルは教室を後にす…

ガッ

「あと、誰も来なかったら授業中関係なく来るから」

「ではまた相談室で会おう、未来の誠実な騎士候補生諸君」

バッ

敬礼をするゴルド

「君たちの協力を待ってるぞ」

・・・

嵐が過ぎた後の教室

………

パンパン!

「はいみんな続きやりますよ」

「先生!」

1人の生徒が立ち上がる

「アルノ君が…その…亡くなったのって…」

「この学院が原因と疑われているのでしょうか?」

ざわざわ

「はい!みんな落ちついて」

「私達はわかる事をあの人たちに正直に話せばいいだけ」

「それより先は私達の領分じゃない、今は犯人が捕まる事を祈りましょう」

「今日も集団帰宅は怠らずにね、じゃあ授業始めるよ!」

【相談室】

ソファに座る2人と壁に寄りかかる騎士

「なぁエルド、一人一人に聞かなくていいのか?」

「聞くって何を?」

「事件についてだろ、誰が世間話しろって言った?」

………

はぁ

「いいかゴルド、この手の聴取は全員に聞くより情報を持つ人から聞いた方が手っ取り早い」

「あの年頃は集団心理が働く一人一人つまみ出した所で意味がない、喋るやつは喋るし喋らないやつは喋らないし」

「変に全員の意見を聞いてその中に曖昧な嘘を真実だと言う奴がいてみろ…1番調査の邪魔になる」

「と言うことで」

チャリン

エルドの手には金貨

「つーわけで長期戦になるので俺らの夕飯買ってきてくれ」

「は?」

「俺はブリークス通りのチキンで」

ガッ

身を乗り出すアルル

「私はエイデー通りのティクソーで」

イラ!

「なんでテメェらのお使いしなきゃいけねぇんだよ」

「自分でいけ!」

じと…

ジト目で見つめる2人

「なんだよその目は」

「いや」

「俺が行ってもいいけどよ…お前生徒が来たらちゃんと質問して情報を得られるのか?」

「来てくれた生徒が困らないように的確な質問できるのかな?」

「アルルはお買い物出来ないし俺は調査がある…なら行く人は限られてるよな?」

………

バッ!

「わかったよ!行けばいいんだろ!!」

ふっ

「あぁ頼むぜ愛されし王国の騎士よ」

「うるせぇ!」

バタン!

「さぁ待つか」

「いやぁしかしゴルドがいてくれて良かったな」

「お使いしてくれるから?」

「違うぞアルル」

「人間とは実績のある成功者を前にすると自分と重ねる傾向にある」

「………?」

首を傾げるアルル

「どの業界でも成功してる奴を見ると自分も同じ感情に狩られるんだ、「自分もこの人みたいに!」ってな」

「ここは騎士学院、その前に大戦の功績者ゴルド隊長が「協力してくれ」なんて言われてみろ」

「我々が全員に聞かなくてもあっちから来るって事だ」

………

「じゃあ先生は…隊長にお使い頼んだのも‥何か意味があったの?」

ふっ

「いいや、理由をつけるとしたら」

「生徒を前に笑うアイツが気に食わないからもっともな理由でこき使ってやったまでだ!」

・・・

「先生…ひねくれすぎ」

ガチャ

「すみません…今いいですか?」

ドアから覗く生徒

ニヤ

「あぁどうぞ」


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