3話 事情聴取

「まぁ現場はあらかた調べたから…次は事情聴取だな」

「エイレイン、この子の母親は今どこにいるんだ?」

「アリエラさんはひとまず騎士団本部に泊まってもらってるよ」

・・

何かを考えるエルド

「そうか、じゃあエイレ…」

「ゴルド、一緒に行ってあげな」

!!

「なんでだよ、ルダスでもいいだろ」

眉を細めるゴルド

「命令だゴルド隊長」

………

はぁ

「了解です司令」

「行くぞお前ら」

・・・

「えぇ…お前と行くの?俺お前嫌いなんだけど」

「アルルちゃんはどう思う?」

「私も嫌い」

ブチ!

「うるせぇ!さっさと行くぞ!!」

不満げな2人を連れ外に出るゴルド

バタン

「僕でも良かったんじゃ」

うふふ

「良いんだよ、ああ見えてお互いを信頼しあってるからね」

「ははは…そうでしょうか、僕には仲が悪いとしか」

「ルダス騎士」

「好きの反対は無関心って聞いたことあるかい?」

「はい、あります」

「つまりはそういう事だ」

「………はぁ」


「なん度来ても羨ましい限りだな騎士団本部は」

騎士団本部を歩く3人

「少しは我が探偵事務所にも金を回して欲しいところだけど」

「王政から契約金もらってるだけでもありがたいと思え」

………

「いやね…その契約金の9割がさアルルの食事代に消えるんだよ」

「な?」

「先生嘘つき」

無表情で歩くアルル

「私はそんな食べない、先生の方がよく食べる」

「いやいやアルルちゃん、嘘はよくないよ」

「この前買った肉も面積に対して8割食べたろ?」

首を振るアルル

「違う、7割だった」

「しかも最初は6:4で分けたけど先生が1分けてくれた」

「いやいや、嘘はよく…」

「おい!」

ゴルドの呼びかけで止まる2人

「ここがアリエラさんの部屋だ、くれぐれも言葉には気をつけろよ」

エルドは廊下の窓を見下ろす

「しかしまぁ…五階に宿泊室とか寝れねぇだろ」

「間違えて落ちたら死んじゃうんだぞ?」

背伸びして外を見るアルル

「それは先生だけ、先生高い所苦手だから」

「聞いてんのかお前ら!」

はぁ

「了解だ、ゴルド隊長」

ギィィィ

扉が開く

ベッドに座っているやつれた白髪の老婆

「お初にお目にかかりますアリエラさん、私は事件を担当する探偵のエルド・マーズと申します」

「隣の子は助手のアルルです」

ぺこり

「先日の一件、謹んでお悔やみ申し上げます」

頭を下げる両者

「座ってもよろしいでしょうか?」

「…えぇ…どうぞ」

ぺら

メモ帳を取り出すエルド

「探偵さん…昨日騎士様に話したことで全てですよ」

「はい、先程その者から聞きました」

「今日は私の質問に答えていただけたらと思います」

「昨日今日で質問責めにしてしまい申し訳ありません」

………フラ

アリエラは反対の方へ顔を向ける

「では、」

「アルノ君は何か最近変わった様子はありましたか?」

・・・

「いえ…何も」

「例えば変な集団と交流してるとか…変な人とつるむようになったとか?」

・・・

「何が言いたいんですか?」

「まぁ端的に言うとアルノ君は防魔膜を失う何かキッカケがあったんじゃないかと」

「キッカケ?」

「はい、防魔膜は生きていれば常時発動しています」

「魔力適性が無い私も発動しているのです、ですが薬物や人体改造の類にのみ防魔膜を剥がすことが可能なのです」

「アルノ君がそう言った団体に接触していて何かの陰謀にまきこま…」

グッ!

「あの子はそんな子じゃない!!!」

………

アリエラはエルドを泣く顔で睨みつける

「軽率な発言でした、申し訳ありません」

・・・

「いえ…私こそごめんなさい」

・・・

「最近息子は学校で何かあった…とは言ってました」

カキカキ

「ありがとうございます」

「では、学校で何かというのはアルノ君から具体的な相談は受けましたか?」

・・・

「いえ、ただアルノは最近暗い顔が多かったです」

「ルクセンダに入る前までは笑顔が多かったのですが…最近は」

カキカキ

「学校…ね」

「では、ルクセンダ魔導学院に行くきっかけはなんだったのでしょうか?」

「ルクセンダ魔導学院は王都でも有数の優生学院、入るのには余程の頭脳と才覚が必要なはず」

「推薦もない学院だと聞きます、なぜ行こうと決断されたのでしょうか?」

「それにお金だって相当なはず」

・・・

「そうですね、あの子は騎士になるためと言っていました」

「いつも私を気に掛けるあの子が頭を下げて入学したいと言ってきたので…」

カキカキ

「それでルクセンダへ入学したという事ですか」

ふふ

「そうです、子供の願いを叶えるのが親ですから」

・・・

「では最後に一つ」

「犯人に心当たりはありますか?」

・・・

「わかりません、私はただ見てただけなので」

「そうですか」

「ありがとうございました、ゆっくりとお休みください」

「ではまた」

バタン


もぐもぐ

「やっぱ騎士団食堂のサンドイッチは絶品だな」

ふがふが

「異論ない」

騎士団本部の中庭で食事をとる3人

「でどうだ、何かわかったか?」

ゴクリ

「まぁそうだな、いくつか気づいた点ならある」

「気づいた?」

カキカキ

机にメモ帳を出しペンを走らせる

「まず一つ「母親が異様に協力的」と言うことだ」

「は?何が異様なんだよ」

首を傾げるゴルド

「昨日息子が殺されて、しかも1番に発見してる」

「それに家族はアリエラさんとアルノ君の2人家族、その息子が殺された当日と次の日に供述する程正気を保っていられると思うか?」

・・・

ゴルドは腕を組み考える

「早く犯人を見つけて欲しいから協力してるだけだろ」

はぁ

ため息を漏らすエルド

「これだから脳筋は」

「あ?」

「いいかゴルド、大切な人が亡くなった時、何もわからない中真っ先に思い起こされるのは過去の記憶だ」

「もちろん犯人への憎悪はある、だが先に来るのは過去の悲しみだ」

「そういう心理状態に必ず陥る、お前もわかるだろゴルド」

………

ゴルドは俯く

「てことは、あの母親は悲しみを抱いていないということか?」

「いや、話したところそうじゃない」

「とっさに「あの子はそんな子じゃない」なんて言える親だ」

「つまり悲しみよりも先に犯人を捕まえてほしい感情が先行してるんだ」

・・・

「さっきお前、悲しみが先行するとか言ってたろ」

チッチッチ

「何もわからない中って言ったろ?」

ガッ!!

立ち上がるゴルド

「じゃあ…それって」

「あぁ」

「あの母親は犯人を知ってる、もしくは証拠を握ってる」

「ただアリエラはそれを言えない状況にある、なんのためか」

「アリエラは俺たちに早く犯人を見つけてほしい、けど核心は言わない、言えないって事だな」

……

「まぁ親が体張る時は子を守る時…だろうな」

「それも何か根拠があるのか?」

ゴルドは前のめりに聞く

・・・

「いや、これはただの願望だよ」

「は?」

グイ

「先生…」

「どうした?アルル」

モジモジするアルル

「あの…先生の…」

「サンドイッチ食べていい?」

「え…普通に嫌だ」

・・・

ガブ!

「おい!!!」

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