2話 捜査開始

王都ー王城前ー

「はぁあ、会いたくねぇなまじで」

事件現場で大口を開ける銀髪のゴルド

「隊長、そんな大口開けてたらまた司令に殴られますよ」

ちっ

「休戦中だからって俺らをこき使いすぎだろ王政は」

「それに俺の人生で3番目に嫌いな奴にまた会うと思うと気が滅入る」

「ルダス…お前もそう思うだろ?」

「あはは…どうすかね」

苦笑いのルダス

「部下に苦笑いをさせると評価が落ちるぞ?ゴルド」

バッ!

ルダスは敬礼をする

「エイレイン司令、おはようございます!」

ふふ

笑うエイレイン

「おはようルダス」

「今日君たちに来てもらったのは昨日調べてもらった身辺調査を話してほしいからだ」

「エルド達にね」

ちっ

ゴルドは嫌な顔で舌打ちをする

「まぁご機嫌斜めのゴルド隊長は置いておいて現場に行こうか」

「我々の探偵達が待ってるぞ」

3人は昨日の殺人現場へと歩く

「エルド達も現場集合だから、もう来てるかもだね」

遠くから男の叫び声が聞こえる

「だから俺は呼ばれてここに来たの!」

「嘘をつけ!なら調査許可証を持っているはずだろ!」

「あのバカ女が私忘れてんだよ!」

遠くで憲兵と揉める男とそれを見つめる幼女

「司令」

前に出るゴルド

「あの不審者を牢にぶち込みますか?」

はぁ

「バカいうな」

「おいエルド!」

エイレインの掛け声に振り向く黒髪不審者

ドドド!!

「テメェ!頼むならこう言う事を忘れるなよ!?」

あはは

「悪いね、ていうか君の王章を見せれば入れると思ってたんだけど」

「あ」

目が点になるエルド

「まさかエルド、王よりもらった勲章を無くしたとか言わないよね?」

ゴソゴソ

ポケットをまさぐる

「いや!…待ってくれよ、確か………」

「アルル!」

タッタッタ

エルドの呼びかけに応じる赤髪幼女

「何?」

「この前…えぇと半月くらい前に王様にもらったキラキラあったろ?」

こくり

「あれ、渡してたよな?」

こくり

ゴソ

ジャラン

アルルは服の中から豪勢な首飾りを取り出す

「それだよそれ!」

「これ私のだよ先生」

「はぇ?」

「先生のはこっち」

ジャラン

カバンから同じ首飾りを取り出すアルル

「あ…あぁ、ありがとうね」

はぁ

それを見かねた3人は現場へと歩く

バッ

憲兵は3人に向け敬礼をする

「お疲れ様さまであります!」

「おう、警備お疲れさん」

タッタッタ

「おい憲兵、これを見てくれ」

ジャラン

「それは…失礼しました!」

「お入りください」

あはは

「どうもね…」


「でだ、エルド」

昨日まで誰かが暮らしていたと思わせる部屋の中には血溜まりと死体跡をかたどったロープ

それ以外に荒らされた痕跡はなく、唯一外窓だけが開かれている

「簡単に説明をしてくれ、ルダス」

「ハッ!」

「被害者はルクセンダ魔法学院に通う15歳のアルノ・シェルパード」

「第一発見者は母のアリエラ・シェルパード58歳、当時買い物から帰ってきたアリエラ氏がこの部屋に入ると背中から血を出し倒れているアルノ君を発見」

「その後魔導隊を呼び治癒魔法も効かずそのまま絶命」

「ふーん」

現場を歩き回るエルド

「宮廷調査班の調査によると衣服にはアルノ君を絶命にいたしめる魔力残滓は検出されず、使われた凶器もないとの事です」

「部屋にはアルノ君とアリエラ氏の滞在していた魔力残滓が検出され、そのどれも生活基準値を下回っています」

ぺら

ルダスはエルドに調査紙を渡す

「ほう…こりゃ丁寧な作業振りで」

「この調査隊を叱りつけるような間抜けはいないと断言できるくらい丁寧だな」

ちっ

舌打ちをするゴルド

「うっせぇぞインチキ野郎」

「この部屋には2人以外の残滓は見つからなかったのか?足跡にもつくだろ」

ゴルドを無視して話を進めるエルド

「はい、おそらく足に布などを巻いてどこかで脱ぎ捨てたと思われます」

「母アリエラ氏の供述によると家の外から口論にも似た声が聞こえたとか…周辺の住民は叫び声を聞いた人が数名いましたがこの家に出入りしている人はいなかったと供述しています」

空いた窓から外を見るエルド

「そうか……なぁルダス騎士」

「?」

「母親は昨日供述に答えてくれたのか?」

ぺら

紙を見るルダス

「えぇ…はいそうです」

死体をかたどったロープを見つめるエルド

「なぁルダス騎士」

「この型は発見当時のままなのか?」

「はい!遺体はロープを引いた後動かすのが鉄則なので」

「ふーん」

「膝が…折れてるな」

………

「てか、ここら辺を通った人の残滓くらい調べてくれよ魔導隊」

「丸投げじゃねぇか」

ちっ

舌打ちをするゴルド

「この近辺でも何百人の残滓が残ってる、調べるだけでも半年かかるんだよ」

「まっ、魔法適性が無い落ちこぼれのお前にはわからんだろうがなエルド」

ガッ!!

ドン!!!

・・・

「魔導騎士に暴力とは良い教育は受けてねぇなクソガキ」

アルルの拳を受け止めるゴルド

「先生の悪口…許さない」

「やめい!」

ドン!

「あいだ!!」

ゴルドの頭に落ちる司令パンチ

「人が亡くなった場所で争うな、大戦で人道まで失ったのか?ゴルド」

・・・

「すみません司令」

ぽんぽん

「アルルもすぐに手を出すな」

「お前は強すぎるんだから力の使い方を学べと言ってきた事を忘れたのか?」

拳を引くアルル

「ごめんなさい」

パン

「で、ルダス騎士」

「遺体の死因はわかったのか?」

ペラ

紙をめくる

「はい、遺体の死因は背後から心臓を刺され亡くなりました」

「魔力残滓がないため死亡時間は特定できず、刺されて亡くなったという見解も遺体を見てそうだろうという憶測の域を超えません」

「我々が危惧しているのは宮廷調査班の調査を掻い潜れる程に洗練された魔導騎士が現れ…」

「「それはないな」」

エイレインとエルドの声が重なる

「ルダス騎士はどこの騎士学校を出ているのかな?」

「…私はメイダース騎士訓練学院を出ています」

ルダスの周りを歩くエルド

「そうか…じゃあ宮廷調査班が用いる魔力調査方法は知ってるよな?」

「はい、皮膚から生じる魔力と待機中の魔素が結合し生まれる魔力を「カルダイス測定器」で抽出しその場の残滓を計算します」

「そうだな」

「ルダス騎士、カルダイス測定器の確立性も信憑性も世界議会で100%と認可されてる、ていうか賢者カルダイスが編み出した抽出機を掻い潜れる魔導士なんていたら…そいつはもう世界征服もできると思うのは俺だけか?」

・・・

目を丸くするルダス

「私も…エルドさんと同じ意見です」

エルド

「でも今世界征服をしてる悪の親玉はいなしいし、魔導大戦も世界各国の力が拮抗し続けている」

「仮にさっきの君が言った危惧する魔導士がいたとしたら王都の少年を殺すよりも騎士団幹部を殺した方が良いと思わないか?」

「しかも一回目の殺人なら尚更だ」

「確かに…その通りです、すみません」

はぁ

「エルド」

「お前は普通に話してるつもりだろうが、尋問にしか聞こえんもう少し笑え」

「アルル、俺の顔は怖いか?」

「うん」

……

「おほん!」

「つまりこの事件には陰湿な意図が組み込まれてる、それを解決するために俺らが呼ばれたんだろ?」

「てことは最初にやることは現場検証だ」

「アルル!あれを!」

トコトコ

「はい先生」

幼女の手にはナイフ

「よし、行くぞ」

ヒュ…

エルドは自身の首目掛けてナイフを振るう

「ちょっと!!!」


パキィン


カタン

地面に落ちるナイフの破片

「今回の1番の謎はやっぱこれだな」

「人間には生まれながらにして皮膚表面に「防魔膜ぼうままく」が張られている」

「この膜は魔力がこもっていない物質を弾く性質を持つ、これは全人類が生まれながらに持つ生体」

「犯人はこれをどう掻い潜って殺したのか…それを解けば真実にも近づくって事だ」

「追い詰めてやるよ、犯人」

ドサ

その場に倒れるルダス

「な…なんで自身にナイフを…そんな躊躇なく振れるんだ」

ガッ

ルダスの肩を掴むゴルド

「そういうやつなんだよ」

「?」

「調査のためなら自身の傷もいとわない」

「イかれた野郎なんだよ、このエルド・マーズっていう」

「探偵はな」

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