33.ラスボスをお掃除するようです!
「ハル! 貰った剣抜けないのだけど!?」
「え? ……じゃあとりあえず抜けるまでは私の後ろでやってて?」
「カナタも守ってー」
「こんな状況でも私は保護者か! ああもう! 騎士だし
何を言っているのだろうか。
さっぱり理解できない。
「お嬢様は私の背中が実家なのですが?」
「ごめん親友だけどちょっと何言ってるか分からないや」
そのままの事実を伝えたのだが、何故か身を引いて呆れた顔をされた。でも身寄りの無いお嬢様にとっての実家は僕の背中だけだし、間違っていないはず。
まあそれはともかく、だ。
僕が主な火力要員なのは確かだ。
あと9本分のHPバーを砕いていこう。
「【
足元から安全地帯などどこにも無いかのような量の赤い
「古の――」
「アメリアちゃん、まだ今じゃない! もっとどデカいやつが来た時に使って!」
これくらいなら、とハルはハンバーガーのバンズの如くアメリアさんとカナタさんを挟み込んで守り、自身は視界の確保のため適宜防いでいる。
「【超強襲】」
僕も難なく躱し、ついでに反撃に出る。
「
「【
こちらに合わせてカナタさんもデバフのオリジナルスキルを使ってくれた。
何か巨大化して触手やらなんやらが生えていて、どこから見ても的が大きいので余裕で命中。
あと7本。つまりデバフの効果時間の6分以内に4発当てれば最速で勝てる。それ以上時間をかけると面倒だ。いつも通り短期決戦といこう。
元の位置へ戻ることで攻撃後の隙をカバーし、そのまま【天蹴】で攻撃の隙を縫って接近する。
「〖プリズムレイ〗」
出だしが速い攻撃――光の雨は聖なる盾の傘で潜り抜ける。
「【
「【完全無敵】」
何やら金色のオーラとも言うべき何かを纏ったが、よく分からないけどそのままダメージが入った。
「“無敵”が効かないだと!?」
「【
物量と耐久力ならこのゴミの方が強いが、やはりアルフレッドさん程の脅威は感じない。ダメージは1億とか出てるから本当に硬いだけの的なのだろう。
もうさっさと終わらせてしまおう。
「【侮蔑の眼差し】【
「……っ!」
これであと1本。
なんとも呆気ない幕切れだった。
「【
全てのHPを削りきり、お嬢様を汚さんとするゴミはいつものように砕けて消えていく。
終わったと伸びをしながらハル達の元へ歩いていく中、ふと違和感を抱いた。
討伐アナウンスが一向に流れない。それに、途中で暴走状態に入らなかった。
まさか、これで半分なのでは無いのか――
「ヒビキ――!!」
「【復活】【
ハルのおかげで反応はできたが、あまりにも速い上、狙いが雑で予測も外れて左半身にいくつもの紫色の杭が刺さってしまった。お嬢様は無傷だ。良かった。
『【
『【
『【
『【
『《四滅の主-人滅》アルヴェネスが天使化しました』
『《四滅の主-人滅》アルヴェネスが悪魔化しました』
『《四滅の主-人滅》アルヴェネス(天魔)(Lv.?????)が暴走状態に入りました』
なるほど、復活されては僕の割合固定の攻撃も関係ない。しかも今度はHPバーが20本だ。強くなっている。巨大化した体躯も普通の人と同じ大きさに戻っている。変わったところと言えばやはり白と黒の翼があることと、光と闇の輪が浮かんでいることだろう。
「うわこれ完全にラスボスのパターンじゃん! ……ヒビキ、大丈夫? やれる?」
「ええ、私のHPはあと3000……一撃で17000貰ったみたいですけど、お嬢様を守るためなら死体になってでもデッキブラシを振り回しますとも――【超強襲】【
まさに言葉通りの奇襲をかけて一撃を見舞ってやった。しかし反応されて頭を掴まれた。
【超強襲】の効果で離脱――するもやつも一緒に転移した。何らかの条件で自分以外も移動可能だったようだ。
頭をそのまま砕かれそうになるが、相手も相手で隙だらけだ。
「【
その攻撃な素手で受け止められたが、命中したことには変わりなく、これで合計4割削った。
流石にマズイと思ったのかヤツも一度手を離して距離をとった。
「〖マジックリィンフォース〗〖バリアスウォーム〗」
ヤツの周囲に透明な亀のような虫が大量に出現した。あれが文字通りの
「【極光】」
「な――」
どこからか杖を取り出し、視界を埋め尽くす規模の光線を放ってきた。あまりの速さに回避は間に合わなかったが……ハルの盾が守ってくれた。
一気に速度も火力も跳ね上がった。あの杖の効果だろう。
「先に邪魔な方を始末しておこう」
「無駄だよ!!」
一瞬でハルの元へ向かわれたが、彼女の防御の前ではヤツもどうしようもないはず。こちらに向いている背中にデッキブラシの角で殴ってやる!
「正面からの攻撃には強いようだが、内部からの攻撃はどうか。【超新星爆発】」
「『古の契約よ。鎮めの権能よ。我が命を対価に捧げる』【沈黙の歌】!」
強そうなスキルは、アメリアさんの力で無効化された。今のうちに。
「【超強襲】、〖放水〗〖放水〗〖放水〗……【
バリアを【生活魔法】で割れないか試したら、どうやら1回きりのバリアだったようでドンドン剥がれていき、一撃見舞うことができた。
これであと4割!
「正面ばかり見ていると足元をすくわれる。若いな。【
『【
密集した僕らを狙うように足元から先程とは比べ物にならない数の茨が全員を貫いた。
僕だけ転移で来たので元の位置に戻されるも、体が穴だらけになったのは変わらない。
ハル達も、未だに茨に貫かれたまま身動きまで封じられている。
「……はぁ!」
転移は
己の足で全力疾走。あと2発入れるだけで勝てるのだ。もう、これ以上は何もさせてたまるものか。
足元から襲ってくる茨も気合いで避けつつ跳んだ。
「【
「――」
何故か杖を触っているヤツの脳天に当たる、直前に寒気がして腰をクイッと空中で上に持ち上げた。
「――【両断】」
腰の少し下に仕込杖による斬撃が走り、身体が上下で真っ二つになった。【
『HPが0になりました』
『あなたは死亡しました』
『30秒の蘇生猶予時間の後、最終更新地点グランセル王国キャトルにて復活します』
『しばらくお待ちください』
――ぁ。
僕の体が砕け散り、残されたお嬢様が地面に落下した。
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