ハプニング

店内はかなりざわついていた。


さっきまでの楽しそうな賑わいとはまた違う、まるでなにか

に困惑しているような感じだ。


席のいたるところから声が聞こえてくる。


あれはたぶん、どこかの冒険パーティだろう。

勇者らしき人物が仲間に投げかけている。


「なんだ今の地響きと光、、、」


それに居合わせた2人の仲間が答える。


「わからないわ、、ただあの光はたしか、“治癒魔法”特有の緑色の光、、、」


「んん~、なんだろうなあ。ただ、なんだか一気に体の疲れが吹っ飛んでった

気がするぞ、、、。」


すると、そのパーティの内の一人の綺麗なお姉さんが、もう一人の仲間であろう大男に、

驚いたような反応を見せて言った。


「ちょっとマルゲ、あんた、顔の傷が消えてるじゃない!」


それに対しておそらく傷を負っていたであろう大男が答える。


「へ?そうなのか?!おいおい、ちょっと俺にも見せてくれよ!」


「いやあんたの顔の傷っつってんのバカ!どうやって見せるっていうのよ!」


質問をした方のきれいなお姉さんが思いっきり大男の頭を叩いた。


大男は、肌は日焼けしていて、頭はツルツルのスキンヘッド、見た目はかなりゴツゴツしている。パーティの戦士、といったところかな。


「いってぇーー!いや、鏡があっただろう、、?あの、お前がフランゲアを

旅経つときに親御さんにもらってた、、、」


「あれはもう“質屋”に出したわよ!私がどんな思いであの手鏡を手放したと思ってんのよ!忘れてるなんて、どういうつもり?!」


すかさず勇者が激昂してるお姉さんをなだめる。


「まあまあ落ち着いてエルカ。僕はもちろん覚えてるよ。なんてったって、今僕たちに資金があるのも君が決断してくれたおかげさ。これからもこの資金を大切に冒険を続けようy、、、」


「その資金ももう使い切ったのよ!!」


勇者が言い終わる前にお姉さんが遮った。


「だから、これが私たちにとっても“最後の晩餐”だって言ったじゃない!」


「ああああ、、、そうだった、、、、。」


勇者が頭を抱え、絶望の顔でゆっくり膝から崩れ落ちる。


「冒険を始めてもう4ヶ月、、。僕らはいまだ“ギルド”に登録さえできてないし、いまだ

達成クリアした任務クエストもゼロ、、。ああ、僕らはやっぱり冒険に向いてないんだ、、。」


なんだかにぎやかで、面白い三人だな、、、。

行先がかなり不安なパーティをよそに、店中から困惑するお客さんたちの声が聞こえてくる。


「なんだったんだ今の、、、でも、体が軽くなったような、、、」


「すごい、今朝の漁の疲れが一気に消えた気がするぞ!何が起きたんだ?」


「お母さん、みてみて!足の傷が治ったよ!」


私、やっぱりやりすぎちゃったみたいだな、、。

でもみんな“癒えてる”みたいだし、まあいっか。


私は厨房に戻ろうとした、その時、

突然店じゅうに白い煙幕が広がった。

白煙はみるみる広がり、店を包み込む。

私も視界を完全に奪われ、まわりが見えなくなる。


え?なに?け、煙、、、!?


すると、なにかが思いっきり私の腕をつかんだかと思うと、

強引に腕を引っ張り上げて、体が宙に浮いた。


「ほんとうにいるとはな、“魔合者”のガキ。黙って俺たちについてきてもらおうか!」


男の低い声が耳元でそう言った。


あーこれはまずいな~。私“誘拐”されちゃうじゃん!














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る