治癒魔法
ちなみに私は“魔法”を使いこなせるわけではない。
言語の読み書きこそ、三歳のころにはできるようにはなったけど、
“魔法書”なんてただの酒屋であるうちに置いているわけもなく、
探し求めて街を一人で歩き回ることなんてできるわけもない。
一回、精霊ちゃんに聞いたこともあるけど、“魔法”の具体的な
使い方については教えてくれなかった。
ただ、食後はなんだか体じゅうにぽかぽかと“エネルギー”が
巡りまわってるのを感じる。
だから私はいつものようにそれとなくファンじいさんの腰元に手を
両手をかざして思いっきりその“エネルギー”を解き放つイメージで
力を込めた。
ただ、、、
突然、厨房の壁、床、天井が地震のようにぐらぐらと小さく振動し始めた。
すると次の瞬間には私の手元から緑色の閃光が生まれ、一気にその光がはじけ、
厨房を抜け、さらに酒場じゅうにまで波のように広がり、
光が消滅したところでやっと振動も収まった。
思いもよらないあまりの威力に私含め三人とも動かずに硬直してしまった。
酒場の客たちも、なにごとかとざわめいている声が聞こえてくる。
やっちゃった~。ほんとこの“魔法”のコントロール難しすぎない?
ていうか、前にできた時よりもだいぶ威力強くなってたし、、。
すると、腰をかがめ、私に背中を向けていたファンじいさんが振り返り、
動揺した様子で私に言った。
「あ、ありがとうゴチちゃん、、。おかげでずいぶん腰が軽くなった気がするぞい、、。
んん~?なんだか体が軽いのぅ!今ならなんでもできる気がするような
エネルギーが体から湧いてくるようじゃ!」
ファンじいさんは、いつもは重くしわだらけの瞼の下に隠れている目をこれでもかと
ぱちぱちさせる。
「おお、、、な、なんだこの高揚感は、、、!全身にエネルギーがみなぎってくる!
やれる、、今ならやれるぞ、、!この酒場を“ただの”酒場から抜け出させる
スペシャルメニューが作れる気がする!」
そう言うと、そばにいたお父さんまで何やら急に元気になったようで、
腕まくりをし、食材や調味料の入った壺をあさり始める。
私はふとざわつく食事場が気になり、そちらに向かって走りだした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます