サブスキル
ファンじいさんが隣国ルイスの商人にもらったという“金のプリン”を私は食べていた。
おいしぃ~~~~~~~!!
プリン自体は、スプーンを入れるといとも簡単に掬えた。
なのにいざスプーンで持ち上げようとすると、その質量をしっかりと感じるほど
中の密度は大きく、プリンの表面はなめらか、それでいて上品な“シルク”のような
質感だった。
黄金だ、、、、
まさしく“金のプリン”の名にふさわしいきらめきを放っていたプリンをひとたび
口に運ぶと、脳内には、見たことないはずのウイスの広大な草原が瞬時に
ひろがる。
伸び伸びと育ったゼウのミルクは、雑味の一切ない、純度百パーセントの
ミルクで、濃厚で、コクのあるはずのミルクも何の抵抗なくまっすぐ私の喉を通っていった。
絶品、、、。
それ以外に言いようがない味わいだった。
ありがとうファンじいさん、、、
今度ウイスに私を連れて行ってね、、、
そこにいるゼウさんたちに感謝しなくちゃいけないから。
私はそんなことを考えながら“金のプリン”を食べ終えた。
すると、またあの声が脳内に響く。
≪グルメ実績報告。“上級スイーツ”・金のプリンを食しました。≫
事務的で感情のない声、精霊だ。
異世界モノでありがちな私にしか聞こえない精霊ちゃんの声。
私の心の声に反応してくれるんだけど、
いつもクールで冷静な精霊ちゃんはなかなか仲良くなるのは難しそうな感じだ。
でも、この世界のことについて私が聞けば基本的に説明してくれたり、
私の“スキル”についてもそのレベルが上がったり、新しい“スキル”を獲得した
時にはその都度、教えてくれるありがたい存在だ。
続けて精霊の声が脳内に響く。
≪スキルレベルアップ。スキル“脂肪”のスキルレベルが3上がりました。
【カロリー体内吸収率+4、グルメ消化スピード+4、魔力保存時間+4】
現在のスキルレベルは27です。≫
私もよくわかってないんだけど、どうやら今まで自分が食べたことなかった
食べ物を食べるとレベルが上がりやすいらしい。
それに今回の金のプリンは“上級スイーツ”だったみたいだから、
レベルが一気に“3”も上がった。
精霊ちゃんいわく“レベルアップのコツ”はとにかく新しい食べ物に出会い、それを食べることらしい。
≪サブスキル“胃もたれ耐性”獲得。≫
精霊ちゃんの声が続いて聞こえる。
サブスキル?今までに聞いたことない言葉だ。
(精霊ちゃん!サブスキルについて聞いてもいい?)
≪承知しました。サブスキルについて説明します。
サブスキルとは、いかなる“スキルホルダー”であっても、原則として“一人一スキル”までとされるこの世界において、自分の所有する“スキル”が
一定のレベルまで到達した場合に得ることができるその補助的な能力のことです。
スキルによってその数は変動しますが、一般的に一つのスキルにつき、
五つほどだと言われています。≫
なるほど、だから“脂肪”に対して、“胃もたれ”なんだ。
(じゃあ、この“胃もたれ耐性”って具体的にどんなスキルなの?)
私はさらに質問した。
≪“胃もたれ耐性”は“上級グルメ”を二品目食べたときに解放されるスキルです。
その効力としては、ある程度、長時間にわたって継続して食事を行った場合の、“カロリー魔力変換効率の低下”を抑えることができます。≫
あ~なるほどなるほど。
長い時間かけて食事をしてるとだんだんと“摂取したカロリーを魔力に変換できる量”が減ってくるんだ。で、それをなるべく無効化してくれるのがこの
“胃もたれ耐性”ってことだ。
というか、“上級グルメを二品目食べたら解放”なんて条件があったんだ。
そこで私はふと疑問に思った。
(精霊ちゃーん、その“サブスキル”って私のメインスキルの“脂肪”には何個あるの?)
少しの沈黙の後、精霊ちゃんが口を開く。
≪ゴチ様の場合、取得可能サブスキルは“胃もたれ耐性”のみです。≫
ええ、、、そうなんだ、、、。
思ってた以上に少ない、、んだね、、、。
私のスキルはこの異世界のなかでは、そこまで強いものではないのかもしれない。
初めてそう思って、少し落ち込んだ。
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