誕生、そして

真っ白な強い光が私を包んでいた。

その光が今度は少しづつ和らいで、同時に何人かの喜ぶような声が徐々に聞こえてきた。


目はあかない。というかなんか寒い。もしかして裸?うわっ!


なにか布のようなもので頭より下の体全体をくるまれる感覚をおぼえた。

そして、歓声のうちの一つが誰かに語りかける。


「よくがんばったよ、リタ。かわいい女の子だ。僕たちの子供だ!」


男の人?リタって誰?

あ、そうか、私、転生できたんだ。

ということは今の男の人の声は私のお父さんで、リタっていう人が

私のお母さんか。


記憶はやっぱり残っている。

わたしは盛山ミナ、だった。

けど今は違う。本当に転生できたんだ、、!


「はーい、がんばったねー、お母さんよー」

その声の持ち主はきっと今私を抱きかかえている人だ。

そして、おそらく私のお母さんに私をそっと渡した。


「かわいい。でも泣かないわ、、、それが少し不安だわ。」


やばい、私を生んでくれたリタお母さんを不安にさせちゃだめだ。

私は大きな声で泣いた。ちょっと泣きすぎなくらいがちょうどよかったみたいで、

すぐにほっとしてくれたのが伝わってきた。


「はじめましてゴチ。あなたは私たちとこれからたくさんの思い出を作りましょうね。きっとお父さんが私たちを楽しませてくれるはずよ。」


「そうだぞ~、よーし今日は宴だ!酒場にみんなを呼んでゴチの誕生パーティだ!リタ!市場でうんと食材を買ってこよう!先に行ってるからなー!」


そう言って私のお父さんであろう男はどこかに走りだしてしまった。

お母さんは今日1日は絶対安静のはずなのに、、、。

きっと気持ちが頭よりも先に動くタイプの人間なんだ、わたしのお父さん。


「あらら、、、。リタ、わかってるだろうけど今日は1日絶対安静よ。決して立ちあがって動いたりしたら駄目よ。、、まああの男がまた戻ってきたら私から伝えておくわ。あなたが赤ちゃんに近づいたら、娘ちゃん、一生お嫁に行けなくなるわよって。」


私のお父さんの熱血っぷりは周りの人にも伝わってるようだ。

でも、「お嫁に行けない」なんて言ったら、逆に「行ってくれないほうが幸せだ!俺が一生そばにいてやれるだろう。」とか言いそうなお父さんだったけど大丈夫だろうか、、、。


するとお母さんが言った。


「ふふ、そうしたらあの人喜んでこの子に近づこうとするわよ、きっと。“お嫁になんて行かせない!”ってね。」


だよね、お母さん。私はお母さんと気持ちが通じ合ってるような気がしていうれしかった。そして、このお母さんは病気で離ればなれになった前世の私のお母さんの生まれ変わりに違いない、そう思った。


てなわけで私は本当に“異世界”に転生してしまったみたいだ。

でも生まれてすぐのうちは動こうにも自分の力だけじゃどうにもならない。


ということで、時は進み、それから6年後。私は6歳になっていた。

“食べること”が大好きな、元気で、活発で、だけどちょっとだけ活発すぎて、周りを驚かせてしまう女の子に成長していた。


物語が動き出すのはこれくらいからってことになる、、、、。







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