べちゃり



 話すのも気持ち悪いんだけどさ、吐き出さないとおかしくなりそうなんだ。人に話すと病院に行けって言われそうだから、悩んでいたところに、ここの話を聞いて助かった。


 普通に生活していると、色々な音が聞こえると思うけど、俺の場合は定期的に変な音が聞こえるんだ。

 昔のことだったから、全く気にしていなかった。みんなそういうものだと思ったから、何も感じていなかった。


 どういう音かって?

 ……うーん、なんて言えばいいんだろう。

 液体と固体が混ざったものを落としたような、べちゃっていう感じが一番近いかな。

 あまり聞いていていい心地にはならない、むしろ不快な方。

 でもそれが日常だったら慣れていく。現に俺もそうだった。


 ……過去形なのはさ、ある日自分が聞こえているものが、他の人には聞こえていないって分かったから。

 知り合いと話してて、それはおかしいってなったんだ。


 そんなの聞こえるわけない。

 ありえない。信じられない。

 どうしてそんなに責めるんだっていうぐらい、まるで俺が加害者かっていうぐらい、きつく言われた。

 存在そのものまで否定されたから、相当なものだ。


 それから、なんかわけわかんなくなっちゃって。

 音なんて本当は聞こえないって言い聞かせても、あのべちゃっていうのが鳴り止むことはなかった。

 聞いているうちに、もう気になって仕方がなくて。


 ……今もほら、聞こえてる。

 聞こえているよな。べちゃって。


 これは何の音だ?

 それさえ分かれば。



 ――あ



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