呟き怪談

感覚

　感覚っていうのは、絶対に無くしちゃ駄目なものだよな。

　それがないと危険な状況でも分からなくなる。

　鈍いと幸せなこともあるけど、生存率を考えたら一概にいいとは言えないわけ。

　俺の付き合った彼女がさ、そういうのを全然感じ取らないタイプだった。どんな心霊スポットに行っても、ケロッとした顔してるの。

　他の人がどんなに体調が悪くなっても、平気。

　みんなその後、悪夢とか霊障に悩まされても、普段と何も変わらない。だから本人は、霊的な存在を全く信じていなかった。

　そういうのって、なんかどこまで大丈夫なのか確かめたくならない？

　どんな場所でも影響が無いのかって、気になってみんなで色々な場所に連れ出した。

　テレビでもよく取り上げられるトンネル。ネットで噂になっている廃病院。最近殺人事件が起きた家まで。

　本当に今思うと、やりすぎなぐらいにたくさん行ったな。

　でもどこに行っても、彼女は全然平気だった。むしろ連れていったメンバーの方が、体調崩したぐらい。

　そんな感じで言ってたのをさ、誰かがSNSであげていたみたいで、ヤバい女がいるって噂になった。なんの影響設けないって有名になって、テレビとか結構出たんだよね。

　それで性格もどんどん変わって、結局自然消滅って形で別れた。その頃には俺も冷めていたから、全くダメージとかは受けなかったけど、大丈夫かと心配はしていた。

　もっと、きちんと忠告しておくべきだったって、今は後悔している。

　彼女さ、平気そうに見えて実は影響受けまくってた。

　本人が気づかなかっただけで、呪いとかが体の中にどんどん蓄積されていたらしい。

　溜まっていくのに気づかないまま、さらに増え続けていれば、最後にはどうなるか予想がつくよな。

　ある日、それは爆発した。

　彼女は原型を留めないぐらいに、酷い有様で死んだらしい。俺は後から知ったから、どこまで本当かは分からないけど、死んだのは確かだ。

　面白半分に連れ回さなきゃ、きっと今でも彼女は生きていただろうな。

　……俺のせいだ。