幼なじみ



 これは私のせいなんかじゃない。

 絶対に。私は悪くない。悪くないんだから。


 私には幼なじみが2人いた。

 はるくんとみきちゃん。

 家が近くて、親同士も仲がいいから、自然と3人で遊ぶようになった。

 どこに行くにも一緒。傍にいないと気持ちが悪くなるぐらい、ずっと一緒だった。


 でもさ男女が一緒に居続けるのは、凄く難しいことでしょ。

 よくいう男女の友情は成立しないってやつ。私達も例外じゃなかった。


 3人って、誰かがあぶれるでしょう。

 それが私だった。悲しい話よね。

 はるくんとみきちゃんが付き合うって報告しに来た時、私頑張って笑顔を作ったのよ。

 自画自賛だけど、よく頑張ったわ。自分を褒めたぐらい。


 帰ってからは大号泣だった。

 私だって好きだったのに。どうして?

 私の方が仲が良かったのに選んでくれなかったなんて、信じられない話よ。

 本当に、見る目がない。


 結局、順調な付き合いじゃなかったんだから。

 相手が何を考えているのか分からなくて辛い。もう嫌だ。

 そうやって泣くのを、何度慰めたことか。

 私なら泣かせないのにって、何度も口に出そうになった。


 それから2人はくっついたり離れたりを繰り返して、なんだかんだ続いて、とうとう結婚までいっちゃった。

 凄く上手くいっていたわけでもないのに、完全に別れるほどの大きなきっかけがなかったせいね。


 不満を抱えて結婚の話を進めれば、当然土壇場になって怯む。

 これが笑っちゃう話で、結婚式前日に2人共に相談を受けることになったの。


 そんなんで本当に結婚できるのかしら、連絡が来た時は思わず吹き出しちゃった。

 もちろん、どっちの相談にも乗りに行ったわ。


 運良く別れてくれないかなって。

 私も諦めが悪いよね。


 そこで聞いた2人の悩みはくだらないものよ。本当に結婚していいのかとか、どうでもいいこと。

 大丈夫って言えば、簡単に解決したでしょうね。その言葉を待っていたはず。

 幼なじみならそうするべきだった。


 でも、私に悪魔が囁いたの。

 私の言動しだいで、どうにでもできるじゃないって。


 だから言ったの。


「そんなに不安なら、相手を試してみればいいじゃない。こんなのはどう?」



 ……私は悪くない。

 ちょっと困ればいいと思っただけ。

 それで拗れでもすれば面白いかなって。そう思っただけ。


 結婚に悩んでいるから一緒に死んでくれないか、そう提案すればいい。

 相手の反応を見て、本気かどうか判断してみなって。


 そう言っただけなのに。



 私は悪くない。

 だって、本当にするなんて思わなかった。

 私のせいじゃない。

 別にそこまでは望んでいなかったのに。


 お願い。

 誰か。

 私は悪くないって言って。

 お願いだから。



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