――俺の話を聞いてくれ。


 俺の住んでいるアパートには、変なものがある。

 アパートと言うよりも、俺の部屋だけか。

 1LDKで、相場を考えると家賃はかなり安かった。紹介された時はまっさきに事故物件を疑ったし、不動産にも確認したけど、大家の好意でその値段って言われたから、誰かに取られる前にってすぐに契約したんだ。


 引っ越してからしばらくは、特に何も起こらなかった。

 掘り出しものを見つけたって、みんなに自慢してたぐらい、部屋を気に入ってた。

 ……でも一人だけ、絶対に部屋に泊まろうとしなかった奴がいたな。今思えば、あいつなんか気づいてたのかな。その時、言えばいいのに。


 それから、どのぐらいが経った頃だったかな。はっきりと覚えてないけど、半年ぐらい?

 もうすっかり部屋に慣れたぐらいに、それは突然現れたんだ。


 いやあ、初めて見た時は驚いて叫んだよ。

 だって普段使っているテーブルの上に、どんと生首があったんだぜ?

 驚かない方がおかしいだろう。


 その生首っていうのがさ、また長い髪の女で。

 ボサボサな髪の隙間から、恨めしげに俺を睨んでくるんだよ。


 完全に事故物件じゃん。騙されたと思って、不動産屋に即電話。

 そうしたらさ、なんて言ったと思う?

 そこで人が亡くなった事実はございません、だってよ。ふざけるなって話だろう。


 事故物件じゃなきゃ、なんで生首があるんだよ。

 誰かが死んでなきゃおかしいし、違うならおかしいのは俺ってことになる。

 俺はおかしくなんかない、絶対に。


 絶対、あの部屋で何かがあったんだ。

 きっと凄くヤバい事件。生首だけ出てくるんだから、相当な。


 だからさ俺、色々と試したんだよ。

 お祓い、札、お守り、本当かどうか分からない除霊方法まで。

 幽霊なら、何かしら効くはずだろ。


 ……それから、どうなったかって?

 幽霊っていうのは、なかなかしぶといんだな。

 でも今度の霊媒師は本物らしいから、もういなくなる。


 絶対に、絶対に。大丈夫。大丈夫なんだよ。俺はおかしくなんかない。絶対に。



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