Ep.13 -家族か恋人かの選択を-
「…そういえば、彼方」
「なに?母さん」
「伶衣ちゃんと彼方は恋人なの?家族なの?」
「え?…うーん…」
「恋人兼義姉弟っていう回答は無しね」
…伶衣と、僕の今の関係か…。恋人兼義姉弟って言うのが一番近い気がするけど…。
「これから、彼方は伶衣ちゃんに家族として接するのか、恋人として接するのか、今のうちに決めておいたほうが良いんじゃないかしら?」
僕と伶衣は、客観的に見たら仲のいい姉弟?それとも、仲のいいカップル?
「どっちも。その中間で接する」
「…へえ、面白いわね」
あくまで提示された選択肢は2つ。'どちらかを選べ'とも、'新しい選択肢を作るな'とも言われていない。
「まあ、それは彼方の自由だから正解とかはないけど。…『家族と恋人の中間』。彼方は頭の回転が速いわね、本当に」
恋人兼義姉弟。それは家族と恋人の中間なんだろうか。そもそも、家族と恋人の中間を表す言葉はあるのか。
家族と恋人の中間という、曖昧な関係でやっていけるのかも分からない。でも、家族であり恋人であるこの関係は、崩したくはない。
家族も、恋人も。
どちらも僕と伶衣にとって、大切な関係だから。
「…まあ、伶衣ちゃんがどう思ってるかは本人に聞いたほうが良いのかもね。伶衣ちゃん?」
「…あ、はは、バレてたんですか…」
「来たのはついさっき?」
「うん。そう。目が覚めて、部屋出たら1階の電気点いてて、気になって」
「家族と恋人の中間って、どう思う?伶衣ちゃん」
「…家族も、恋人も、私にとって、どちらも大切な彼方との関係です」
「そう。良かったわね、彼方」
「うん」
「まぁ、弟として甘えてくる彼方は一回見てみたいけどね」
「あ、それ私も同感」
「…っ…お、ねえちゃん」
……………。
だぁーーーーーもぉーーーーー!!!!!
……………はぁ。
「お義姉ちゃん…すき…」
「ふふっ」
「~~~~~っ!!??」
「…これで、満足…?」
「………!!!!(コクコクコク!!!!)」
首を縦に何回も振る伶衣を見て、抱き締めていた腕の力を緩めて、ソファに飛び込む。
「…あー…もぉー…」
この場に佐藤さんが居なくてよかった…。
ソファのクッションに顔を埋めながらそんなことを考える。
…あ~…窒息しそう。
「弟モードの彼方、可愛いわね」
「…るっさぃ…」
もういっそこのまま窒息して死のうかな。…いや、やめとこ。
「ね、彼方」
「…なに…」
「もう一回」
「絶対に嫌」
「絶対?何が何でも?」
「死んで良いならするけど」
「それは嫌だなぁ」
「じゃあしない」
クッションから顔を出し、ソファから立ち上がる。
「もう寝るから。…おやすみ、れ―――お義姉ちゃん」
「…へ?…あ、う、うん…」
「おやすみ、彼方」
■
「…ん…?」
「…彼方。…寝てる、よね?」
そう言いながら、僕の寝ているベッドに寝転がる伶衣。
…寝てるふりしとこ。
「…初恋が彼方でよかったなぁ…」
「……………よかったね」
「うん。…って、起き、てる?」
「…おはよう、お義姉ちゃん」
「あ、うん…おは、よう」
部屋が暗くて、伶衣の表情は良く見えない。
僕は、伶衣を思いきり抱き締める。
「え?ちょ…彼方?」
「…お義姉ちゃんでしょ?一緒に寝て…」
「へっ!?いや、その、えっと…」
「…いや…?」
自分で聞いても分かるような、寂しさを含んだ声。
こんな声を出してる自覚は無いんだけど。羞恥でおかしくなったのかな。
「……そんな声で言わないでよぉ~…」
そう言いながらベッドに寝転んでくる伶衣。
「…おやすみ」
「うん。おやすみ、伶衣」
そうして、僕は意識を微睡みに落とし込んでいく。
「…ん………朝…?」
「おはよう、彼方」
「あ、うん。おはよう」
スマホが振動する音が聞こえる。伶衣にスマホをとってもらって、電話に出る。
『おっはよーーー!!!瀬戸くーーーん!!!』
耳に当てたスマホから、とんでもない声量で佐藤さんの声がする。
スピーカーにせずとも、唇が触れそうなほど極至近距離にいる伶衣にも聞こえているようで、少し顔を離した。
「…朝からそんな大声出さないで。頭に響いて煩い」
『あはは、ごめんごめん。もうちょっと静かにしないとあまっちに怒られちゃう』
「…で、一体何の用で?」
『いや、もうそろそろ文化祭だし、なんか無いかなぁって』
「…あー、出し物?」
『そうそう。あまっちは三年だし、伶衣ちゃんは2年だし、同学年同クラスなのってこの中だと私と瀬戸くんしかいないわけ』
「…僕以外にもいるでしょ。佐藤さんの友達」
『まーそーなんだけどさー、生憎男子の友達が少なくて。ほら、女子のノリについていけない人達っているじゃん?』
まあ、ついていけるっていう人は少ないよな。
「それで僕に?」
『しょーゆーこと』
出し物…出し物…。…う~ん…。
「…メイド喫茶とか。僕は裏方に回れて楽だし」
『え~?瀬戸くんって女装したら似合うと思うけどなぁ?』
「それは嫌だ」
『まぁありがとねー。あんまり参考にはならなかったけど』
聞く相手をミスったからそうだろうな。
『…あと5ヶ月ちょっとで2年生かぁ、どんな後輩ができるかなぁ?』
「…さぁ」
『じゃ、また明日学校でね~』
「…朝からあんなに元気なんだなぁ…。―――んむっ!?」
僕の視界が伶衣の顔で一杯になって、唇に柔らかい感触が伝わる。背中に手を回されて、抱き締められる。
「…伶衣?」
「…彼方は私の恋人なんだからね…?」
「分かってるよ。お義姉ちゃん」
「…伶衣、でしょ?」
「伶衣。大丈夫。僕が好きなのは伶衣だけだから」
伶衣を優しく抱きしめ返す。
「…言葉だけじゃ、証拠にはならないよ…?」
伶衣に、またキスをされ、僕の上に跨り、もう一度キスをされる。
さっきよりも、もっとずっと濃く、深く、甘くて、絡まるキスを。
――――――――
作者's つぶやき:この後この二人が何をしたのかはご想像にお任せします。簡単に言えば、水香さんの勘は当たりましたね、はい。『今朝はお楽しみでしたね』っていう感じのアレです。
性描写有りは指摘されたらつけます。
弟モードの彼方くん、可愛かったですね。その後にソファに顔を埋めてるのも何と言うか慣れてない感じがしましたね。
――――――――
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