Ep.11 -フードコートで間接、家で直接-

「そういえばさ、2人ってどこまで行ったの?」

 注文したオムライスを頬張りながら、佐藤さんがそう言う。

「どこまでって…添い寝と…あーんしたぐらい?」

「キスは?」

「してない」

「残念」

「覚悟とか決まってないし…」

 そう言って、伶衣はガラスのコップに入ったジュースを一口飲む。

 …あれ。

「…伶衣、それ、僕の…」

「あ、本当だ…。…………、~~~~っ!?」

「え?伶衣どうし―――あ…」

 伶衣の顔が一瞬にして赤く染まっていく。

 僕も少し恥ずかしくなってしまう。

 間接的な口付け。つまり間接キス。

「か、彼方と、か、間接キス…しちゃ…」

「…ふふっ」

「バカップルめ~」

 佐藤さんと天笠先輩の目を気にせずにあたふたしている伶衣。

 …うん。可愛い。

 しばらくして、伶衣が落ち着いたのを確認し、食事を再開する。

「ねぇ、伶衣ちゃんとあまっちはどっちの方が人気あるの?」

 不意に佐藤さんがそう口を開く。

「え?…う~ん…」

「私よりも天笠先輩の方が人気だと思うけど」

「そうなの、彼方くん?」

「いや、僕の彼女は伶衣ですし、僕は伶衣の方が大好きですよ」

「……………もう…」

 まぁ、天笠先輩は知り合いぐらいが一番しっくりくる。

 男子全体なら分からないけど、少なくとも僕は伶衣の方が好きだ。

「私に告ってくる人が多いのよねぇ」

「そうなんですね」

「そう。冷たくしたらしたで、また人気が上がるし」

「美人に生まれた宿命っていうのかな」

「なんか、その気持ちわかります。中学生のころ私も大変だったので」

「そうでしょ?」

 話し込んでいる二人を横目に、僕と佐藤さんも話し始める。

「伶衣ちゃん、意外と押しに弱いのかな?」

「…ん~…どうだろ」

「今日帰ったら押し倒してみてよ」

「…え、まじ?」

「うん。Break a leg~(「頑張ってね~」)」

「………了解」

「ん?由希ちゃんと彼方、何話してたの?」

「「いや、何も」」

「そんなわけないでしょ、絶対なんかあるって」

「…まぁ、仲いいなぁって」

「え?そう?」

「うん」

「気が合うからかな」

「多分、そうだね」

 そんなことを話していると、時刻はもう14時。2時間って、結構早く過ぎるものだ。

「あ、私そろそろバイトだ」

「あ、そうだっけ」

「うん。ごめんね3人とも、じゃあ行ってくる」

「頑張ってね~あまっち~」

「…さて、じゃあ私たちもそろそろ行こっか」

「そうだね」

 そのあと、化粧品とか、雑貨屋を見て回り、最後にクレープを食べようってことになって、買ったクレープを三人で食べ始める。

「これ美味しいね」

「ん?一口いる?伶衣」

「へ?…あぁ…うん」

 小さな口を開けて、僕のクレープを一口。

「どう?」

「…おい、しいよ」

「本当に?」

「ホントだよ」



 デートを終えて、僕らは家に帰ってきた。ちなみに佐藤さんは来ていない。

 …『今日帰ったら押し倒してみてよ』、かぁ。

「…伶衣」

「ん?どうし――――」

 伶衣をソファの上に押し倒す。

 押し倒してどうこうするつもりは無いけど、佐藤さんの話と、自分が伶衣の反応を見てみたいからという理由で、伶衣をソファに押し倒す。

「…かな、た?どうしたの?」

「……………」

 何も言わずに、ただ伶衣をじーっと見つめる。

 前に伶衣にされたように。

 伶衣の顔はすでに赤く染まり、僕から目を逸らすように横を見ていた。

「…ねぇ、伶衣」

「何…?」

「好き」

「~~~~っ!?」

 なんか、楽しいなこれ。

 ついでだし、キスもしてみようかな。

 …ファーストキスだけど。今は何となくそんな感じのムードな気がする。

 ふに、っと柔らかく、そして弾力のある感触。

 僕と伶衣の唇が重なる。

「…っ!?~~~っ!?」

 キスをして数秒後、伶衣の脳がやっと『キスをされた』、という情報を処理しきれたみたいで、頬から耳までを真っ赤に染めて声にならない声を上げていた。

 …どうしよう、引き際が分からない。というか引き際を逃したような気がするんだけど。

「…ん?あ、母さん」

 …ナイスタイミング。

「もしもし」

『なぁんか嫌な予感がしたんだけど大丈夫?』

「あぁうん。大丈夫」

 …母親の勘って凄いな。なんか監視されてるみたいで怖いんだけど。

『なら良いけど、伶衣ちゃんに代わってくれる?』

「…あー、うん。スピーカーでいい?」

『ええ、それでいいわ』

 通話メニューからスピーカーを選択し、スマホをロ-テーブルの上に置く。

『伶衣ちゃん、聞こえる?』

「あ、はい…」

『…彼方、伶衣ちゃんになんかした?』

「…まぁ、押し倒しはした…うん。した」

『へぇ、意外、彼方にそんな積極性があったのね。そのままキスしてたり?』

「…当たり」

「お義母さんの勘って本当によく当たるんだね」

『ここまでくると自分でも結構怖いのよねぇ』

 母さんの勘って本当に異常なまでに当たるんだよなぁ。僕に対する勘なら特に。

 勘で言ったら90%当たる。鋭いとかそんなレベルじゃないと思う。

「ほんと、なんなんだろうねよく当たる勘それ

『ね、本当に不思議。あ、そうだ。ここ一週間以内に帰国すると思うわ』

「分かった」

「いや…それ一番大事なんじゃ…」

「良いんだって、いつもこんな感じだし」

 再婚の時もさらっと告げられたし。17年近く母さんと一緒に暮らしてるんだから、このくらい何とも思わない。

『まぁ、帰国してすぐには無理だけど、2日ぐらいしたら家に帰るから』

「分かった」

「待ってるね、お義母さん。それとお父さんも」


――――――――

作者's つぶやき:ネタが切れたと言いましたが、どうにかこうにか書けましたね。

次回は…そうですね。瀬戸夫妻が帰国するとだけ。刀祢さんも喋ると思います。どんな性格かを考えなくちゃいけないのでちょっと大変ですね。

――――――――

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