第56話 お題【奪われた言葉】【出口のない世界】【刺さる】

 悪漢の理不尽な手によって奪われた言葉達が、出口のない世界で蠢いている。

 己を受け止める器を探し、這いずり回り続けている。

 鈍く煌めく刃が筋肉を裂き、臓腑へ深々と突き刺さる。

 骨の髄まで喰い破り、神経一本残らずずたずたにする。

 頑強な岩は跡形もなく砕け散り、粉々となっている。

 ひび割れた鏡には、最早何かを映す力さえ残されていない。


 おお神よ!偉大なる神よ!魂の片割れさえ失った私に、貴方は一体何をせよと言うのか!

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