崔のピンチ!

崔 梨遙(再)

1話完結:555字

 僕は、学生の頃は満員電車で通学していた。いつもと同じ時間、いつもと同じ車両。退屈な時間だった。満員で身動きもできない。僕は満員電車が嫌いだった。


 その時は、突然訪れた!


 後ろから誰かが手を伸ばし、僕の股間を握りしめたのだ。僕は、一瞬、金縛り状態だった。自分に起きている出来事が理解できない。数十秒か? 数分か? 僕が固まっていると、股間の手は僕の股間をデニムパンツの上から好きなように触り、揉んでいる。


 そこで、ハッと我に帰った。“どんな手が股間を握っているのだろう? もしかして痴女か? 痴女なのか?”満員電車に少しだけスペースを作って、僕の股間を握っている手を見た。


 毛むくじゃらのオッサンの手だった。僕は怒った。100歩譲って、痴女なら対応を考えたかもしれないが、オッサンに触らせて黙っているほど僕は大人しくない。僕はノーマルなのだ。


 だから、その揉んでいる手の中指を握って……折った。


「あう!」


 真後ろで悲鳴が聞こえた。同時に電車のドアが開いた。オッサンが逃げていく。人混みが邪魔で、僕はオッサンを見失った。


 駅で、アナウンスがあった。“痴漢の被害にあわれた方は、駅の係員にお知らせください”


 僕は、駅員に言った。


「すみません、痴漢がいたんですけど、この駅で見失いました」

「そうでしたか! で、被害者の方は?」

「僕です」



「は?」







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崔のピンチ! 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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