バックストーリー【設定/短編小説集】

モンスター娘生態調査団

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■モンスター娘生態調査団とは

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最初の探査が行われた時、発見された未知のあらゆるものは持ち帰る事ができませんでした。しかし、水際の調査施設での成果によって次第に検疫が機能するようになり、24年が経った今では、こちらと扉の向こうとを行き来できるまでになりました。そのおかげで、より多くの人が携われるようになり、未知のあらゆるものに対する調査団が次々と発足したのです。


我々はモンスター娘生態調査団です。ルーツは、第3回探査団内部で発足した危険生物調査班にまでさかのぼります。当時の班長であったフランクリン博士は、探査から帰還するとモンスター調査団を立ち上げ、人間に危害を加える未知の恐ろしい生物の調査を専門的に始めたのです。その成果は素晴らしいもので、第4回探査団における人的被害を半減させました。その結果を知ったアメリカが、分野ごとにより専門化した組織作りを実現させ、その内の一つとしてモンスター生態調査団が発足したのです。


生態が分かってくると、中には小規模ながら社会を形成するモンスターがいることがわかりました。モンスター生態調査団の中で群れに関する研究をしていたビードル博士は、モンスターの社会の中に文明の光を見出すことになります。同時期に、別種で共生関係を結ぶモンスターを研究していた斎藤博士が、モンスターの社会におけるメスの役割に着目しました。この二人のアプローチは別でしたが、どちらもモンスターの生態における社会構造について研究を始めたのです。


その内、探査によって人に近い姿をしたモンスターが発見されると、ビードル博士はアメリカの後押しを受けて未知の文明の調査団を結成します。一方で斎藤博士はあくまで生態調査に絞って研究を続け、特に人の女性に近い容姿をしたモンスター、───モンスター娘と命名された───に注目しました。その成果に興味を持った日本政府がモンスター娘生態調査団を発足させたのです。




我々モンスター娘生態調査団の目的は、扉の先の未知の世界で良き隣人を作ることです。扉の中の世界は過酷ですが、きっと友好的に手を取り合える存在があるはずで、そのためにモンスター娘の生態を注意深く観察していきます。そして、得られた情報を基に実験を繰り返すことで関係を築く方法を模索し、お互いにどのように手を取り合えるか探求しています。その成果を常に発信し続けますので、現地に来られない方々も記録を確認して独自に研究をしていただけます。目的達成のため、共に新しい友人たちと未知の世界を探検しましょう。


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広報部から

有益な情報を提供された方には褒賞があります。


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■モンスター娘の特異能力について

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モンスターは、ありえないと言っても良い特異な能力を持っています。その数や影響の範囲は様々で、例えば人間よりも早く走れる植物であったり、範囲内の特定の物質を瞬時に別の物質へと変異させたりするものがあります。モンスター娘も同様です。現在も様々な調査団で研究が続けられていますが、我々のアプローチは彼らとは別の切り口です。


生態調査においては、その特異能力がどのようにして使われているかを観察します。今までの研究結果から、この特異能力には必ず発動するための条件が存在するとわかっています。その条件が満たされないようにすれば、身を守ることができますね。同様に、条件が絞れるほどに特異能力のメカニズム解明に役立ちます。ある程度進めば、確度の高い仮説を立てて実験ができるようになります。実験をする意義は、得た情報の確実性を更に高めることです。


さて、そのような特異能力を持ったモンスターたちは、どのような理由があってその能力を得るに至ったのでしょうか?この問題は、未知の世界における生態系の調査をする上で非常に重要です。一例として小さくて弱い生物が毒を持つように、モンスターにも外敵から身を守るための防御機能として特異能力があるのかもしれません。その場合、そのモンスターを脅かすものは、同じ生息地に存在するはずです。つまり、すでに判明している特異能力を弱点とする存在がいるとわかるわけです。もし、疑似的に特異能力を再現できるのであれば、その存在が持つ人間への脅威を退ける事が出来ます。あるいは、もし害のない存在であれば、それを利用した実験を行う事ができるかも知れません。そうすれば、より安全に特異能力の観測が可能となりますね。


話が逸れてしまいましたので、戻しましょう。どうして特異能力を得たのかという問題の答えは、生きるのに必要だから、です。防御のため、攻撃のため、捕食のため、移動するため、理由は様々あるでしょうが、無いと生き延びる事が出来ないのです。生物は進化の過程で不要なものを捨ててきましたから、残っている物は生き残るのに必要なものということです。これは、我々の住む世界での話ですが、この未知の土地でも同様であることが分かってきています。


では次に、なぜ特異能力が無いと生き延びられないのでしょうか?その疑問が、モンスターを取り巻く環境を知るヒントとなります。例えば、平穏な環境に住んでいるはずのモンスターが、特異能力を使って別の場所へと飛んで移動する場合です。きっとその時期には、天敵となるモンスターが来る可能性や、天候や気温の極端な変化が起こる可能性があるのです。それを観測出来た時、モンスターの生態と同時に周囲の環境のことも分かります。こうしてより安全に探査や調査ができるようになってくるわけなんですね。




では、ようやく本題に入ります。モンスター娘の特異能力については、我々も強い関心を持っています。我々の目的は、未知の土地での良き隣人を作る事ですが、その隣人が人にとって役立つ能力を持っていたとしたら、より嬉しいですよね。もし、そのような役立つ特異能力を持ったモンスター娘がいたとしたら、重点的に調査をして優先的に友好を得たいと考えています。だから、モンスター娘の生態調査を行う時には、特異能力の観察を重点的に行って記録してください。


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■モンスター娘のクラス定義とレベル定義

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■情報処理部から全職員へ


モンスター娘生態調査団では、資料を作成するモンスター娘が、どういう存在なのか一目見てわかるようにクラスとレベルを定義しています。これは、モンスターによる人的被害を軽減するために考案された分類を流用し、脅威の度合いを一言で具体的に表現するためのものです。分類できないものはその旨を記述し、その事由を端的に記載します。


職員はモンスター娘の生活圏内に踏み入る場合、適切な対応をとれるように訓練してください。


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クラス定義は以下の通り。


・サイズクラス : 体長による分類


 超小型    : 30cm未満

 小型     : 30cm以上、100cm未満

 標準     : 100cm以上、200cm未満

 大型     : 200cm以上、350cm未満

 超大型    : 350cm以上


・ウェイトクラス : 体重による分類


 超軽量     : 20kg未満

 軽量      : 20kg以上、45kg未満

 標準      : 45kg以上、85kg未満

 重量      : 85kg以上、150kg未満

 超重量     : 150kg以上


・スピードクラス : 移動速度による分類


 超鈍足     : 1km/h未満

 鈍足      : 1km/h以上、6km/h未満

 標準      : 6km/h以上、16km/h未満

 俊足      : 16km/h以上、28km/h未満

 超俊足     : 28km/h以上


・ムーブメントクラス : 移動方法による分類


 這う   : 手足を使わずに身体を這わせて移動する。

 浮く   : 外的要因で身体を浮かせて移動する。

 歩く   : 手足を使って歩いて移動する。

 泳ぐ   : 特定の物質の中を泳いで移動する。

 飛ぶ   : 翼もしくは特定の力を受けて飛んで移動する。


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レベル定義は以下の通り。


・フェロシティレベル : 狂暴性による分類


 温和   : 害さなければ攻撃性が低い。

 普通   : 注意できる程度の条件で攻撃性を持つ。

 狂暴   : 回避が難しいほど攻撃性が高い。


・フレンドレベル : 友好的かどうかによる分類


 友好   : 明確に敵意を持たない。

 中立   : 基本的に無関心である。

 敵対   : 優先して脅威と見なす。


・フィーンドレベル : 生態の持つ害による分類


 無害   : 共存できる可能性が高い。

 中庸   : 何らかの競合が起こる。

 有害   : 回避の難しい害がある。


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■補遺


クラス定義はモンスター調査団のSWSM生物階級定義を基に策定。Class1からClass5までの階級はかわらないが、内容をモンスター娘と人を比較したものにした。


基本的にClass4以上の要素を持つモンスターは、生物として体のつくりが人を凌駕しているため、遭遇を未然に防ぐことで対策する。


レベル定義はモンスター生態調査団の3F水準を流用。フィーンドのLevel2以上を捕獲する場合は、必ず申請して指示された場所で実験すること。


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■我々の活動を応援してくださる方々へ

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モンスター娘生態調査団は、命の危険がある活動を行っております。近年では、サバイバル訓練の定期実施や高品質な装備普及によって、重大インシデントの発生を抑えられるようになりましたが、それでも全ての危険を取り除くことはできておりません。そのような状況で働く職員のために、充実した福利厚生の整備にも取り組んでおります。つきましては、モンスター娘生態調査団では、一般の方々からの援助を募集しております。


援助を申し出て頂ける方におかれましては、必要事項を記入の上、調査団へのレビュー申請をお願い申し上げます。同様に、我々の活動に対するご意見、ご感想も受け付けております。その際、返礼として未調査のモンスター娘リストから、ご指定のものを優先的に調査することができます。興味の惹かれるモンスター娘がおられましたら、どうぞお気軽にリクエストください。


また、新たな取り組みとして配信活動を始めました。配信サイトを利用しておりますので、チャンネルをフォローして、継続的な支援をお願い申し上げます。同時に、配信サイトの機能であるいいねや、評価等による支援もお待ちしております。


よろしくお願い申し上げます。


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★未調査のモンスター娘リスト


〆 一身同体の抱擁 ドライアド

〆 警鐘を鳴らす子守唄 ペタアンブレラ

〆 聞く耳を持たざれば喰らう口 シルバーストーク

〆 急降下堕天使 パラボラゼラチナス

★ 『求める識別名 貴方の好きなタイプ』

  原初のモンスター娘 アルファクロノス

  迷子の迷子の子猫ちゃん ストレイキティ

  人に成る者 ドッペルゲンガー


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■調査結果報告書 作成要領

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       ■厳重注意■

調査結果はモンスター娘の情報についてのみ記載すること。

生息域の環境情報や外敵といった、モンスター娘のものではない情報のは、別途専門の調査団から資料を取り寄せて添付されたし。

ただし、安全に関わる特記事項を除く。


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■情報処理部から生態調査部へ


モンスター娘に分類され、我々の管轄となった対象を調査する。発見場所や特徴などの資料を取り寄せて展開するので、調査前に必ず目を通すこと。


我々が調査を要請した対象を観察ないし観測し、その生態をまとめた報告書を作成されたし。作成した報告書は、情報処理部へ記録申請すること。その際、添付資料がある場合は、報告書にまとめて申請されたし。


・必須項目

 モンスター娘識別名

 生息地・生息域

 クラス定義

 レベル定義 ※フレンドレベルの省略を認める

 特異能力

 特徴

 生態


・任意項目

 その他モンスター娘に関する情報

 安全に関わる特記事項


※必要に応じて任意項目を増やして良いが、事前に確認を取る事。特別理由がない限り、必須項目漏れは厳罰に処す。


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強行観察班、お前たちのために記載しているぞ。武勇伝を発行したいなら出版社に行くんだ。定点観測班を少しは見習え。


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■実験結果報告書 作成要領

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■生態調査部から応用実験部へ


調査結果に不明点がある場合は、必ず事前に確認して下さい。定点観測班の映像記録で編集前のものを要望する場合は、情報処理部へ連絡して下さい。

※直接やり取りをすることは処罰の対象となりました。


■情報処理部から応用実験部へ


調査結果報告書が提出された対象へ実験を行い、生態の更なる調査を行う。我々が要請した実験内容を速やかに実施し、その結果をまとめた報告書を作成されたし。また、要請外の任意実験を認める。


任意実験を要望するものは、その内容を情報処理部へ申請されたし。作成した報告書は、情報処理部へ記録申請すること。その際、添付資料がある場合は報告書にまとめて申請されたし。


・必須項目

 モンスター娘識別名

 生息地・生息域

 クラス定義

 レベル定義

 特異能力

 特徴

 生態


・任意項目

 その他モンスター娘に関する情報

 安全に関わる特記事項


※必要に応じて任意項目を増やして良いが、事前に確認を取る事。特別理由がない限り、必須項目漏れは厳罰に処す。


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■機密監査部から応用実験部へ


任意実験での配信を行う場合、責任者は橘 春とすること。それ以外を認めない。実験中の判断は全て橘に委任する。


■情報処理部から応用実験部へ


以下の場合、中止申請要項に関わらず実験を中止し、速やかに情報処理部へ連絡すること。なお、この場合停止命令がない限り、実験は後日再開される。


・対象の生態に変化が見られた場合

・実験時に人的被害が発生した場合

・新たな特異能力を発見した場合

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