MMEI-0032 ドライアド

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■添付資料:初遭遇時の記録 先行探査隊

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 丁度3月初旬でした。例年の先行探査と同じ時期での出発です。

森林地帯は3月中旬から6月初旬まで『花粉地獄』になるので、

その前に通過して終わる頃に帰る予定だったんです。

ところが今年は少し早くに始まってしまったみたいで、

視界が悪く森林地帯で立ち往生してしまいました。

それだけならまだ良かったんですが…。


 なぜか皆『スギモドキ』の下に避難していたんです。

あっ、『スギモドキ』は森林地帯で一番大きい木なんです。

葉っぱがスギにすごく似ているので、皆そう呼んでいました。

『花粉地獄』でもどの方角にあるか分かるくらい特徴のある木なんですよ。

それで、避難するだけであれば目印になるから便利なのですが、

木に近づいた者が全員眠ったように動かなくなってしまったんです。

それを助けようと近づく者も全員です。

今までも『スギモドキ』に近づいたことは何度もありますが、

そんなことは初めてでした。


 どうすることもできないので、

残った者は全員ただぼーっと状況を待っていました。

問題が起きていなければ、多少無理をして帰還できたのでしょうが、

半数になってしまっては本当にどうすることもできなかったんです。

それで、ふと『スギモドキ』のほうを見ると、眠った人の数が減っていたんです。

最初は気のせいだと思いました。

『花粉地獄』も真っ最中で見間違えたか、

あるいは動いたのかと楽観的に思っていたんです。

ですが、そうではありませんでした。

モンスターがいたんです。


 驚いて思わず飛びのいちゃいましたよ。

でも、すぐに鍋を拾って打ち鳴らして、皆に危険を知らせたんです。

無事な人は音のする私の所へ集まってくれましたが、

眠っている人は変わらずダメでした。

「一体何が起きたんだ?」

と聞かれたので、『スギモドキ』の中からモンスターが出たと報告したんです。

すると、皆も眠った人が少なくなっていることに気が付いたようで…。

危険な状況だったんです。

ここにいたら全滅すると思いましたから…。


 だから、長い棒などで眠った人を救って、

かなりの無茶ですが、強行軍で帰還しようとしました。

ただ、眠った人を引っ張ろうとした時、

『スギモドキ』のモンスターが狂ったように暴れ出して…。

ああ、あの時の声を思い出すだけで怖い…。

硬くて鋭い木の枝が我々を執拗に引っ掻いてきました。

一番近くで棒を伸ばしていた人は無事では済まなかったです…。

あのモンスターの姿は忘れられません、覚えています。

木でできた女の人みたいな姿をしていて、鋭い爪を持っています。

そう言えば、そうなる前に見た時は、そんなに鋭い爪ではなかったはずです。

多分、その時に鋭い爪であれば、

私はもっと驚いてすぐには行動できなかったと思います。

お恥ずかしい話ですが…。


 そんなことになってしまったので、

皆恐慌状態になってしまいまして、その場を離れたんです。

すると、どうやらそのモンスターは『スギモドキ』からは離れられないようで、

追ってくることはありませんでした。

垂れた枝などからは現れて来ず、

太い木の幹からしか出てこれないように見えましたね。

しばらくそうしていると、モンスターは落ち着きを取り戻したようでした。

その後は、ゆっくりと木の幹を出入りして、

『スギモドキ』の周りで寝ている人を抱き抱えては木の幹に引きずりこんでいきました。

もうどうにもならないと、皆はっきりわかりましたね。


 動ける者は全員、最低限の装備だけにして身軽になって、

大急ぎで帰還することにしました。

その場にいても他のモンスターの餌になるのは疑いようがないですからね。

怪我をした人を置いていくのは忍びなかったですが、

できるだけ早く期間して早く救助を呼ぶのが最善です。

血の臭いは肉食のモンスターを引き寄せてしまいますから…。

準備が終わる頃には、『スギモドキ』の周りで寝ている人はいなくなっていて、

モンスターの姿も見えなくなりました。

まさかあんな危険な木だったとは、それだけは今でも信じられません…。


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■添付資料:森林地帯の環境調査報告書 植生調査保護グループ

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調査対象 :森林地帯

カテゴリ :森林

平均気温 :24℃

平均降水量:133mm

危険度  :★☆☆☆☆

      少し危険

危険生物 :擬態する木

      歩く寄生蔓

      クルミ割りネズミ

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概要   :

コロンバス・イン・ザ・ドア平原の北西に広がっている森林地帯。第一回探査団が発見した時、各代表がこぞって命名しようとしたため収拾がつかなくなった結果、そのまま森林地帯と呼ばれることになった。スギに良く似た高木が多く群生しており、その中に他の固有種がまばらに混ざって形成されている。中でも一番大きい木は『スギモドキ』と呼ばれており、スギと同等とするのであれば樹齢2000年を超えると推測される。

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環境   :

基本的に平穏だが気温が高く、湿度も相まって体感温度が高くなりやすく喉が渇きやすい。水源が無いため水分を得るには木の枝や草を刈るしかないが、それらに擬態するモンスターがいるため注意が必要。特に、過密になって木が群生している場合は、擬態する木の巣があり不用意に近づくと命を落とす。また、木の上から歩く寄生蔓が降ってくることがあるため、帽子の着用を強く勧める。


3月から6月にかけて『花粉地獄』と呼ばれる現象が発生する。スギに似た高木が一斉に大量の花粉を撒く事によって起こるもので、足元が見えないくらいの視界不良となる。植物モンスターの繁殖期はまだ先のため、視界不良のまま移動することは危険。


12月から2月にかけては『ハゲの森のラクシカ』と呼ばれる現象が発生し、全ての木が葉と枝を落として幹だけとなる。ほとんどのモンスターが冬眠、もしくは地中で休眠するため安全に通過が可能。この時の擬態する木は変わらず葉をつけているため、遠目でも不自然さに気が付ける。

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特記事項 :

『花粉地獄』の時にのみ、『スギモドキ』からモンスターが出現するとの報告あり。環境の過酷さとモンスターの危険性から、真実であるかどうかは未確認。


繁殖期の植物モンスターは襲ってこないが、成った実を取ると狂暴化する。その際は近くのモンスター全てが一時的に群れとなっておしよせるため注意。


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■メモ書き

擬態する木の果実はポソポソしていて苦く非常にまずかった───鈴木特派員


『花粉地獄』の時期以外に通過すると、その後を追って森林地帯のモンスターが出ていくことがある。本来の生息域を離れたモンスターが狂暴化するという報告があがっているため、探査団は極力そのリスクを回避している───ジュマンジ博士


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■MMEI-0032 調査結果報告書

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■2X24年03月22日 13:35 Admin


先行探査隊から管轄が移行


■2X24年04月02日 13:41 Admin


識別番号と識別名を発行


MMEI-0032 一身同体の抱擁


■2X24年04月02日 14:12 Admin


資料を展開

聴取した情報から特異能力を推測


永眠への誘引


発動条件は『花粉地獄』中であること

対象の周囲のみの狭い範囲と見られる

現在の所は人間のみが対象

効果を受けた者は離れる意思を喪失する

人的被害レベル:死


■2X24年04月09日 22:49 Admin


情報処理部から生態調査部へ


MMEI-0032の調査を要請する。

特異能力の人的被害レベルは死のため、添付の資料を確認し対策すること。


■2X24年04月10日 22:50 田中一郎


調査要請を確認しました。

添付資料から、対象の移動範囲は極小と推測。

定点観測班を出動させます。

責任者として元木和則を任命。

調査フェーズに移行します。

以降の情報処理部との連絡を委任します。


■2X24年04月10日 22:59 元木和則


出動します。


■2X24年04月17日 01:47 元木和則


視界不良のため定点観測は困難を極める。


■2X24年04月17日 04:18 元木和則


他団体が対象と接触。

要救助と判断し、救急救命団へ救助を要請します。


■2X24年04月17日 04:25 元木和則


木の中から出現するモンスター娘を初めて観測した。

このタイプをドライアドと仮称し、本種を原種として指定したい。


■2X24年04月17日 04:35 Admin


一時承認する。


■2X24年04月21日 11:37 元木和則


必要事項の観測が完了した。

帰還する。


■2X24年04月26日 13:10 田中一郎


調査フェーズでは、ウェイトクラスの定義が困難。

木の中に生息していること、近づくと危険であることが原因。


■2X24年04月26日 13:15 Admin


免除する。


■2X24年04月26日 13:17 田中一郎


記録を申請します。

『花粉地獄』が出現に関係しているため、現地の花粉をサンプルとして添付します。


■2X24年04月26日 13:19 Admin


受理する。


■2X24年04月26日 13:49 相馬和也


校正完了

一般公開します。


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2X24年04月29日 12:00

生態調査部 定点観測班 元木和則


  調査結果報告書


識別名       : 一身同体の抱擁

生息地       : 森林地帯


サイズクラス    : 標準

ウェイトクラス   : ※測定不能※近づけないため

スピードクラス   : 鈍足

ムーブメントクラス : 泳ぐ


フェロシティレベル : 普通

フレンドレベル   : ※省略する※

フィーンドレベル  : 有害


特異能力 : 永眠への誘引

発動条件

『花粉地獄』中であること。


効果範囲

対象を中心とする半径50mほどである。


効果

範囲内の人間を対象に誘引して昏睡させる。


人的被害レベル:死


特徴 : 

対象は、体長150cm程度の標準的な人間の女性に見えるモンスター娘である。肌は灰褐色で縦裂のある樹皮のようなものでできている。頭部の頂点には細い枝が密集して生えており、枝にはスギのような葉がついている。これらの特徴は、この対象が生息する木と全く同じである。


生態 : 

対象は、生息する木の中を自由に移動することができ、その木からは完全に離れる事が出来ない。特異能力によって誘引された人間を、ゆっくりと抱き抱えて木の中へと引きずり込む。人が一人引きずり込まれると、木に一つの果実が出現する。これらの事から、一つの木と共生しているモンスター娘である。

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■MMEI-0032 タイプ鑑別

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■生態調査部から情報処理部へ


新しいタイプを発見しました。正式にタイプの認定をお願いします。


■情報処理部から機密監査部へ


タイプ鑑別結果を送ります。


タイプ:ドライアド

既存のタイプにはない特徴を有し、新しいタイプとして認められる。森林地帯で発見されたMMEI-0032を、このタイプの原種として定める。


■機密監査部から情報処理部へ


ドライアドタイプの調査優先度を恒久的に引き下げる。外部要請と支援者指定のあったもの以外は極力取り扱わないこと。最も優先すべきは胎生のモンスター娘である。


■情報処理部から全部署へ


新しいタイプが認定されました。

タイプ:ドライアド


MMEI-0032の特徴・生態に類似するモンスター娘は、ドライアドとなります。今後の環境調査でこのタイプの新種を発見した場合は、亜種として報告してください。なお、ドライアドの危険性は接近しなければ皆無であると推測できます。巨木や特異な特徴を持つ木への接近は避けるよう訓練を見直し、リスクを回避できるようにしてください。


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■MMEI-0032 実験結果報告書

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■要請実験0032-A1 特異能力の効果識別1


概要:MMEI-0032の特異能力が、人間以外にも効果を及ぼすか見る。


方法:標準的な網状のケージに実験用ラットを入れ、ドローンでMMEI-0032の近くへ運ぶ。


結果:実験用ラットの動きが緩慢になり、MMEI-0032の方向へ進もうとケージに体を押し付け続けた。


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■要請実験0032-A2 特異能力の効果識別2


概要:MMEI-0032の特異能力が、人間以外にも効果を及ぼすか見る。


方法:投下ポッドに実験用ラットを入れ、ドローンでMMEI-0032の近くへ運んで投下する。


結果:実験用ラットはMMEI-0032に誘引され、その後昏睡状態に陥った。


補足:MMEI-0032が出現し、実験用ラットは木の中に引き込まれた。


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■要請実験0032-B1 特異能力の効果範囲測定1


概要:MMEI-0032の特異能力の効果範囲を詳細に測定する。


方法:標準的な網状のケージに実験用ラットを入れ、ドローンでMMEI-0032の近くへ運ぶ。


結果:MMEI-0032から48mの地点で実験用ラットが誘引され始めた。


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■要請実験0032-B2 特異能力の効果範囲測定2


概要:MMEI-0032の特異能力の効果範囲を詳細に測定する。


方法:要請実験0032-B1実施後、ドローンと実験用ラットを範囲外へと移動させる。


結果:効果範囲から出た実験用ラットは、元の活動に戻った。


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■要請実験0032-C1 特異能力の効果強度調査1


概要:MMEI-0032の特異能力の効果がどれほど継続するか調べる。


方法:要請実験0032-B1実施後、更にドローンを近づけてから素早く離脱させる。


結果:昏睡した実験用ラットは、効果範囲外に出て5分後に目を覚ました。


補足:MMEI-0032の姿と性格が狂暴化した。

   ドローンが届かない位置まで離脱すると、その様子をじっと見るようになった。

   これらは実験用ラットが目を覚ますまで続いた。


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■要請実験0032-C2 特異能力の効果強度調査2


概要:MMEI-0032の特異能力の効果がどれほど継続するか調べる。


方法:要請実験0032-C1を、ウサギを使って実施する。


結果:昏睡したウサギは、効果範囲外に出て3分後に目を覚ました。


補足:MMEI-0032の姿と性格が狂暴化した。

   ウサギが目を覚ますまで続いた。


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■要請実験0032-D 特異能力の効果識別3


概要:MMEI-0032の特異能力が、生物以外にも効果を及ぼすか見る。


方法:要請実験0032-A1を、体重計を使って実施する。


結果:体重計は誘引されなかった。


補足:体重計に足が生えて動き回ると信じていたのか?


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■要請実験0032-E1 捕食行動の調査1


概要:MMEI-0032の捕食対象の範囲を調べる。


方法:要請実験0032-A2を、体重計を使って実施する。


結果:体重計は木に引きこまれなかった。


補足:MMEI-0032の頭だけが露出し、体重計を確認した後すぐに引っ込んだ。


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■要請実験0032-E2 捕食行動の調査2


概要:MMEI-0032の捕食対象の範囲を調べる。


方法:要請実験0032-E1を、林職員の弁当を使って実施する。


結果:林職員の弁当は木に引きこまれなかった。


補足:MMEI-0032が出現し、数分の間弁当を見たり触ったりした。


仮説:誘引する特異能力から、捕食行動の対象は生物のみに限定される。

   ただし、MMEI-0032は知能を有しており、今後変化する可能性は捨てきれない。


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■任意実験0032-い 捕食行動の調査3


概要:MMEI-0032の捕食対象の範囲を調べる。


方法:ウサギを木に投げつけてぶつける。


結果1:生存したウサギは木に引き込まれた。

結果2:死亡したウサギは木に引き込まれなかった。


補足:MMEI-0032が出現し、ウサギを一回平手で叩いた。

   その後のウサギの状態で結果が分かれた。


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■要請実験0032-F ウェイトクラス定義


概要:MMEI-0032の体重を測る。


方法:要請実験0032-E1実施後、その上にラットを投下する。


結果:体重計の上にMMEI-0032が乗った。29.2kg。


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■要請実験0032-G1 特異能力の回避1


概要:MMEI-0032の特異能力を回避する方法を探す。


方法:効果範囲の際に鉄製の檻を設置し、志望者を中に入れる。


結果:志望者は呼びかけに反応しなくなり、MMEI-0032の方向へ進もうと檻に身体を押し付け続けた。


補足:範囲外に出た志望者はすぐに意識を取り戻し、身体の痛みを訴えた。

   意識混濁は見られなかったが、少しの混乱があった。


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■要請実験0032-G2 特異能力の回避2


概要:MMEI-0032の特異能力を回避する方法を探す。


方法:要請実験0032-G1実施時に、ガスマスクを着用させる。


結果:志望者は意識を保ち続けた。


仮説:空気中に何らかの作用物質がある。

   フィルターでろ過できる程度の大きさと推測。


補足:周囲の空気を採取し、他団体へ送付する。

   精密な検査が期待できる。


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■任意実験0032-ろ 攻撃性能調査


概要:MMEI-0032のおおよその攻撃力を測る。


方法:鉄製の小型の檻にウサギを入れて、MMEI-0032の側に投下する。


結果:MMEI-0032は、檻を破壊できず、木に引き込むこともしなかった。


補足:目的としては鉄を傷つけられない程度と判明したが、囮の可能性が見つかった。


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■任意実験0032-は 囮の有効性


概要:MMEI-0032の捕食行動を封じる囮が使えるか調べる。


方法:任意実験0032-ろ実施後、別のウサギをMMEI-0032の側に投下する。


結果:MMEI-0032は、別のウサギを木に引き込まなかった。


結論:囮は有効。

   ただし、視界内にウサギを投下した場合はそちらに関心が移った。


補足:檻を除去するときにMMEI-0032は狂暴化した。

   狂暴化した場合でも檻は破壊できなかったが、中のウサギは切り裂かれた。


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■任意実験0032-に 接触実験


概要:MMEI-0032と接触を試みる。


方法:任意実験0032-ろ実施後、志望者がガスマスクを着用して話しかける。


結果:MMEI-0032は、志望者を木の中に引き込もうとした。


結論:昏睡状態であるかどうかに関わらず、生物は全て捕食対象とわかった。

   友好的な関係を築くのは難しい。


補足:志望者を引きはがす時にMMEI-0032は狂暴化した。

   軽度な人的被害により実験は中止した。


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■任意実験0032-ほ 果実の調査


概要:MMEI-0032が生息する木の果実を採取する。


方法:任意実験0032-ろ実施後、ドローンで果実を採取する。


結果:果実に触れることはできたが、採取する前にドローンが破壊された。


補足:MMEI-0032が狂暴化し、木の幹から離れて枝をつたってドローンを攻撃した。


補遺:探査隊の証言通り、木の幹から動かないものと考えていたが、間違いだった。

   それでも枝から完全に離れるようなことはなくて良かった。


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応用実験部 反復実験班 千葉幸利


  実験結果報告書


識別名       : 一身同体の抱擁

生息地       : 森林地帯


サイズクラス    : 標準

ウェイトクラス   : 軽量

スピードクラス   : 標準

ムーブメントクラス : 泳ぐ


フェロシティレベル : 温和

フレンドレベル   : 友好

フィーンドレベル  : 有害


特異能力 : 永眠への誘引

発動条件

空気中の原因物質を生物が一定以上吸引すること。


効果範囲

対象を中心とする半径48mである。


効果

範囲内の呼吸する生物を対象に誘引して昏睡させる。効果範囲外に出る事で誘引状態は即座に解除される。昏睡状態も同様の方法で回復できるが、数分の時間がかかる。効果を受けた場合、最終的に捕食される。


人的被害レベル:死


特徴 : 

MMEI-0032は、体長142cmの小柄な女性に見えるモンスター娘である。体重は29.2kgと軽量で、見た目同様の力しかなく、鉄製のものを傷つけられない。肌は灰褐色で縦裂のある樹皮であり、容易に人間の肌を切り裂く硬さがある。頭部には枝葉が密集しており、針形の葉が茎から螺旋状に互生している。一部の枝葉の根元には、球形の花らしきものがついている。見た目の特徴は、この対象が生息する木と全く同じであるが、木には花らしきものがない。


生態 : 

MMEI-0032は、『花粉地獄』が発生している間にのみ姿を現す。生息する木の内部を自由に移動することができ、その幹の表面から身体を出せる。その木からは完全に離れる事が出来ず、限界まで飛び出しても足先が触れている。木が移動したり動いたりすることはなく、48m以内に近づかなければ害はない。48m以内に呼吸する生物が侵入すると、特異能力によって誘引され、最終的に昏睡状態に陥る。昏睡するしないに限らず、生息する木のすぐ近くに生物が近づくと、捕食行動の対象となる。捕食行動の対象となった生物を、MMEI-0032が木の中へと引きずり込んで捕食する。捕食行動の対象が届かない位置に移動すると、MMEI-0032は狂暴化する。生物が引きずり込まれると、木に一つの果実が出現する。この果実に何らかの物体が触れると、MMEI-0032が狂暴化して木全体を移動するようになる。


その他 :

知能を有しているため、学習する可能性がある。ただし、人間を餌としてか認識しておらず、意思疎通は不可能。これまでの木の調査資料を確認した結果から、『花粉地獄』でなければMMEI-0032は出現しない。資料に記述が無いため詳細不明だが、果実は『花粉地獄』の時期にのみ出現すると推測される。


特記事項:

標準配備されているガスマスクで特異能力の回避が可能。また、鉄製の檻などに閉じ込めた動物を囮にすることで、気を散らすことが可能。ただし、視力と聴力があることが分かっているため、不用意に近づくことは推奨しない。

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■添付資料:組成調査の結果 息づくり健康生活扉内支部

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この度は調査依頼を頂きまして、誠にありがとうございます。

結果をお送り致しますので、ご確認ください。


窒素     72.2%

酸素     21.4%

二酸化炭素  0.01%

花粉その他  6.39%


通常時と比べて花粉の量がはなはだしく、息をするのが難しいでしょう。

その他の分析結果については別途資料を送付致します。

しかし、特筆すべき物質等は見つかっておりません。


以上となります。

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高吸着性ポリマーシート電動ベルトはクリンスーハーへ。

眼・鼻・喉の異常が続くときは、空気組成を調査して元を断とう!


クリンスーハー株式会社 息づくり健康生活扉内ひない支部

                   丹波 陽平


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情報処理部の経理がわざわざこれを送ってきた時は震えたね───千葉主任


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■添付資料:調査結果報告 植物調査団

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送られたものを確認したところ、気になる点がありました。『花粉地獄』の原因である固有種の花粉なのですが、調査段階で発芽しており、花粉管も伸長していたのです。可能な限り観察してみましたが、確認した花粉は全て発芽に成功しているようです。


我々の研究でも培地に水を含ませて発芽させることは成功していますが、およそ半数が失敗しています。それだけでも驚きなのですが、更には精細胞が喪失していました。より詳しく見てみると、喪失というよりは変異と言ったほうが正しいと分かりました。花粉管の中で未知のウイルスが作られていたのです。このようなことはここに来て初めて見ました。


ウイルス感染した花粉は今まで見つかってないんです。今年も毎週のように花粉を採取して研究していますが、このような報告は挙がっていません。だとすれば、この未知のウイルスに感染するのは木ではなく、花粉だけなのではないかと考えられます。花粉同様に、風が未知のウイルスを媒介しているのだと推測できます。その場合、未知のウイルスは大して増殖できず、花粉と共に朽ちるはずなのですが…。これだけの規模ですから、本来は別の宿主があってそこから飛散しているのではないかと思います。土壌検査でも検出されていないので、それ以外は考えづらいです。


この未知のウイルスは、詳しい団体に提供して調査してもらいます。私らの分野で簡単な実験を行った結果からですと、試したあらゆる花粉の発芽を促しました。木に限らず花やモンスターのものもですし、精細胞の変異もです。まるである種のフェロモンみたいだ!───ニンニクは例外でした。


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林職員はただちに不妊症検査を受けなさい───千葉主任


ドライアドが精細胞破壊ウイルスをバラまいてると本気で思っているんですか。ありえない、バカげてる!───林職員


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