MMEI-0002-VAR リュウゾウジグラッジ

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■添付資料:油の消費量異常 設備管理部

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■2X24年07月22日 10:27 志藤太一


整備工作班で使用している機械油の消費量が異常です。


■2X24年07月22日 11:13 久我洋平


具体的に、どのように異常ですか?


■2X24年07月22日 12:34 志藤太一


用途を増やしていないのに、利用頻度が増えています。機械に差した油の消費が激しくなっているようです。


■2X24年07月22日 12:49 久我洋平


確かにそれは異常ですね。調査を要請する前に部内検査を徹底します。他の班ではいかがですか?


■2X24年07月22日 12:56 七海京


今まで気づけておりませんでしたが、先月からグリスが紛失しているようです。


■2X24年07月22日 13:11 中川忠多


潤滑油の消費異常は先月からですね。体感で夏季によるものと流していました。面目ないです。


■2X24年07月22日 13:23 久我洋平


人災や窃盗では説明がつかない消費という事で間違いないですね?


■2X24年07月22日 13:30 志藤太一


はい。


■2X24年07月22日 13:47 財津琢磨


報告遅れました。給養補給班の管理する菜種油の中身が消失していました。今期に入荷した内の三缶です。


■2X24年07月22日 14:01 久我洋平


人災であれば笑い種にでもすればよいでしょう。しかしこれは、ささやかながら異常と言わざるを得ません。情報処理部に報告を挙げます。各班、被害程度をまとめておいて下さい。


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■2X24年07月22日 18:05 Admin


油がどこに消えたのか、早急に調査が必要です。


■2X24年07月22日 18:15 Admin


火災の恐れあり緊急警報を発令せよ


■2X24年07月22日 18:18 Admin


熱源探査を許可機械設備を順次停止する


■2X24年07月22日 18:20 Admin


原因究明チームを結成


■2X24年07月23日 10:32 藤堂恭史郎


残留品に生物の痕跡を見つけられた。原因究明チームは生態調査部へ引き継ぐ。


■2X24年07月23日 15:48 田中一郎


痕跡は唾液と毛のみ。侵入経路は不明です。密室かつ暗闇のため、モンスター娘の特異能力によるものと推測します。


■2X24年07月23日 19:07 藤堂恭史郎


条件に合致するモンスターの資料を取り寄せた。


■2X24年07月24日 03:30 久我洋平


点検結果を報告します。各設備に火災はありませんでした。


■2X24年07月24日 05:00 Admin


安全性を保障緊急警報を解除せよ


■2X24年07月24日 08:32 田中一郎


唾液と毛の特徴から、暫定的にストレイキティタイプとします。どのような場所にでも迷い込む特異能力を持つため、捕獲は困難。忌避剤を撒きましょう。


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油以外の品目は異常消費されていません。捕獲・確保したモンスター娘の食事量は除外していますが───財津主任


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■MMEI-0002-VAR 調査結果報告書

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■2X24年07月24日 09:00 Admin


停止していたストレイキティの調査を再開する

新たに対象を発見できたため

対象は原種と推定する


■2X24年07月24日 09:01 Admin


識別番号と識別名は変わらず


MMEI-0002 迷子の迷子の子猫ちゃん


■2X24年07月24日 09:05 Admin


過去の調査結果から特異能力を推定


時空踏み外し


発動条件は、対象の意志によると思われる。

効果範囲は、対象を中心とした半径200m以内。

効果は、対象が効果範囲内のどこか任意の地点へと瞬間移動する。

ただし、いずれかの生物の視界に納まる範囲は、任意の地点として選べない。


■2X24年07月24日 09:07 Admin


過去に人的被害が発生し、調査停止

再発防止のため、原因究明チームへと資料を展開


■2X24年07月24日 09:28 田中一郎


資料を確認しました。特異能力を封じようとした結果、対象が暴れて二名死亡した。


瞬間移動する地点を全てカメラで封じることは危険です。捕獲は考えずに調査を進めます。


■2X24年07月24日 19:45 田中一郎


忌避剤が有効でした。ある程度、観測拠点内の出現場所を絞れます。正式に調査フェーズへの移行を申請します。


■2X24年07月24日 19:50 Admin


申請を受理


原因究明チームを解散

原因となったMMEI-0002の調査フェーズへと移行する


■2X24年07月24日 20:00 田中一郎


調査フェーズへと移行します。解散したチームからそのまま、定点観測班を出動。責任者は元木和則を任命します。以降の情報処理部との連絡を委任します。


■2X24年07月24日 21:00 元木和則


拠点内に定点カメラを設置済み。狂暴化防止のため、200mごとに穴を開けている。


■2X24年07月25日 06:00 元木和則


おおむね前回の調査結果と同様。ただ、出現場所と特徴に差異が見られる。


■2X24年07月25日 12:00 元木和則


定期連絡。異常なし。


■2X24年07月25日 18:00 元木和則


定期連絡。異常なし。


■2X24年07月26日 00:00 元木和則


定期連絡。異常なし。


■2X24年07月26日 05:37 元木和則


対象は、ある程度暗闇にしか出現しないと思われる。


■2X24年07月26日 11:20 元木和則


風の吹く場所に現れない。前回の結果にはこのようなことはなかった。


■2X24年07月26日 12:42 元木和則


油を舐めるところを観測できた。この時ガス状になるため、明確にストレイキティと違う。対象はストレイキティ亜種ではないかと思う。


■2X24年07月26日 13:00 Admin


ストレイキティは哺乳動物の特徴を持っています。ガス状になるという点が気がかりです。


■2X24年07月26日 13:32 元木和則


違和感が分かった。対象は実体を持っていない。ストレイキティの生態を持つ、別の種に見える。


■2X24年07月26日 13:44 Admin


対象をストレイキティの変異種とします。以後変異種は、識別番号を使って区別すること。


Monster Musume Economy Identify VARiant


■2X24年07月26日 13:50 Admin


識別番号を変更

原種亜種とは別に、変異種としてタイプを定義する。識別番号と合わせて区別すること。


MMEI-0002-VAR リュウゾウジグラッジ


■2X24年08月01日 06:00 元木和則


観測結果変わらず1週間が経過した。一度調査結果をまとめて提出する。


■2X24年08月01日 06:20 田中一郎


調査結果の記録を申請します。識別名は変更無しでよいですか?


■2X24年08月01日 06:25 Admin


識別名を変更

臭い立つ怨恨の煙


記録を受理する


■2X24年08月01日 08:00 相馬和也


校正完了

人的被害の記録があるため特別機密指定


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生態調査部 定点観測班 元木和則


  調査結果報告書


識別名       : 臭い立つ怨恨の煙

生息地       : コロンバス・イン・ザ・ドア平原


サイズクラス    : 標準

ウェイトクラス   : 超軽量

スピードクラス   : 俊足

ムーブメントクラス : 歩く


フェロシティレベル : 温和

フレンドレベル   : 敵対

フィーンドレベル  : 中庸


特異能力 : 時空踏み外し


発動条件

対象の意志によると思われる。


効果範囲

対象を中心とした半径200m以内。


効果

対象が効果範囲内のどこか任意の地点へと瞬間移動する。ただし、いずれかの生物の視界に納まる範囲は、任意の地点として選べない。全ての範囲が生物の視界に納まると、狂暴化する。


人的被害レベル:致命


特徴 : 

対象は、体長160cm程度の人型を模した煙状のモンスター娘である。通常種と同様、ネコによく似た頭部と尻尾を持っているように見え、それらを暗闇の中で浮かび上がらせて、生きているように見せる。実際には体重が10gほどであり、ガスで擬態をしていると思われる。四肢はあるが、機能を持たず、何かに触れることもできないが、油を舐める時には、何かが触れているようである。


生態 : 

対象は、特異能力による瞬間移動を繰り返して生活している。食料の確保から安全な場所への逃走まで、全てを特異能力で解決できるため、気まぐれな性格であり、一か所に留まらずに移動を続ける。警戒心は強く、特に人間に対しては敵意を持っており、決して近くに寄らせない。もし、特異能力が封じられてしまった場合、最終手段として狂暴化する。通常種との違いとして、変異種では明かりの無い暗闇を好んでおり、加えて、風の吹かない場所にしか瞬間移動しない。油を舐めると、対象の周囲の温度が急激に上がり、煙の濃度が高くなる。

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特異能力の移動先が限定かつ、実体を持たないガス状のモンスター娘です。狂暴化した時の危険度が想定できないため、慎重に取り扱うべきです───元木主任


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■MMEI-0002-VAR 実験結果報告書

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■要請実験0002-K ウェイトクラス再確認


概要:MMEI-0002-VARの重量を測定する。


方法:囮の油のまわりに電子はかりを置く。


結果:11.3g。超軽量。


補足:油を舐めている間は0gだった。


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■要請実験0002-L 風の影響確認


概要:MMEI-0002-VARが風に吹かれた時の影響を見る。


方法:囮の油のまわりに送風機を設置する。


結果:MMEI-0002-VARは風に吹かれてかき消された。


補足:別の場所に瞬間移動するまで重量があった。


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■要請実験0002-M1 温度の影響確認1


概要:MMEI-0002-VARに高温が与える影響を見る。


方法:囮の油のまわりに暖房を設置する。


結果:MMEI-0002-VARに変化はなかった。


補足:100℃まで確認。


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■要請実験0002-M2 温度の影響確認2


概要:MMEI-0002-VARに低温が与える影響を見る。


方法:囮の油のまわりに冷房を設置する。


結果:MMEI-0002-VARに変化はなかった。


補足:-20℃まで確認。


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■要請実験0002-N1 光の影響確認1


概要:MMEI-0002-VARに光を当てた時の影響を見る。


方法:囮の油のまわりにライトを設置する。


結果:MMEI-0002-VARは、腕で光を遮った。


補足:ライトは懐中電灯を使った。


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■要請実験0002-N2 光の影響確認2


概要:MMEI-0002-VARに光を当てた時の影響を見る。


方法:囮の油のまわりにライトを設置する。


結果:MMEI-0002-VARは、光を避けた。


補足:ライトはスポットライトを使った。


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■要請実験0002-N3 光の影響確認3


概要:MMEI-0002-VARに光を当てた時の影響を見る。


方法:囮の油のまわりにライトを設置する。


結果:MMEI-0002-VARは、その場から消えた。


補足:ライトは大型投光器を使った。


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■要請実験0002-O 摂取する油の調査


概要:MMEI-0002-VARが舐める油の種類を調査する。


方法:囮の油の中身を変えて、舐めるか確認する。


結果:MMEI-0002-VARは、試した全ての油を舐めた。


補足:機械油では、潤滑油や増稠剤入りのグリス、

   食用油は植物性・動物性問わず舐めた。


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■要請実験0002-P 煙の採取


概要:MMEI-0002-VARを構成する煙を調査する。


方法:囮の油のまわりに吸気ファンを設置する。


結果:煙を採取できなかった。


補足:煙は強く揺らいだが、それ以上離れなかった。


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■任意実験0002-と1 油摂取時の観察1


概要:MMEI-0002-VARが油を摂取する時を観察する。


方法:囮の油のまわりに温度計を設置する。


結果:370℃まで急激に発熱した。


補足:菜種油を使った。


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■任意実験0002-と2 油摂取時の観察2


概要:MMEI-0002-VARが油を摂取する時を観察する。


方法:囮の油のまわりに温度計を設置する。


結果:500℃まで急激に発熱した。


補足:ベンゼンを使った。


結論:油の発火点を超える温度まで急激に発熱する。


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■任意実験0002-ち 風で閉じ込める作戦


概要:MMEI-0002-VARを風で封じ込める。


方法:誘い込んだ場所からその周囲に、送風機で一気に風を流す。


結果:封じ込めに失敗した。

   狂暴化はしなかった。


補足:数分後に別の場所に脱出していた。


推測:特異能力で複数回移動した。


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■任意実験0002-り 光で閉じ込める作戦


概要:MMEI-0002-VARを光で封じ込める。


方法:誘い込んだ場所からその周囲に、投光器で一気に光を照らす。


結果:封じ込めに成功した。

   狂暴化はしなかった。


補足:MMEI-0002-VARは身をかがめて動きを止めた。

   しかし、人が近づくと特異能力で逃亡した。


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■任意実験0002-ぬ 捕獲作戦


概要:MMEI-0002-VARを捕獲する。


方法:投光器とカメラで動きを止めてから接近する。


補足:申請が拒否された。

   特異能力の封じ込めだけは許可されないとのこと。


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応用実験部 反復実験班 千葉幸利


  実験結果報告書


識別名       : 臭い立つ怨恨の煙

生息地       : コロンバス・イン・ザ・ドア平原


サイズクラス    : 標準

ウェイトクラス   : 超軽量

スピードクラス   : 俊足

ムーブメントクラス : 歩く


フェロシティレベル : 温和

フレンドレベル   : 敵対

フィーンドレベル  : 中庸


特異能力 : 時空踏み外し


発動条件

対象の意志によると思われる。


効果範囲

対象を中心とした半径200m以内。


効果

対象が効果範囲内のどこか任意の地点へと瞬間移動する。ただし、いずれかの生物の視界に納まる範囲は、任意の地点として選べない。全ての範囲が生物の視界に納まると、狂暴化する。


人的被害レベル:致命


特徴 : 

MMEI-0002-VARは、体長160cm程度の人型を模した煙状のモンスター娘である。煙で身体が出来ているため、身長や部位の長さはある程度可変する。煙状の実体を持たない存在であるが、さも実体があるかのようにふるまう。ネコ科によく似た頭部を持ち、切れ長の目の周りには朱色の化粧をしていて、三角形の耳には金製の耳飾りがついている。黒色の長い髪を持っており、髪型は江戸時代の丸髷のようである。毛皮は白の地毛に、黒と茶の二色がまだらになって散っている。首と肩は柔軟に動いて様々な態勢を取ることができ、胴体の内、胸部には椀形の膨らみが一対あるが、腹部には膨らみが存在しない。ふくよかな臀部から尻尾が伸びており、最も気まぐれに動く部位である。手足は細長くしなやかで、肉球と爪がある。


生態 : 

MMEI-0002は、特異能力による瞬間移動を繰り返して生活している。食料の確保から安全な場所への逃走まで、全てを特異能力で解決できるため、気まぐれな性格であり、一か所に留まらずに移動を続ける。警戒心は強く、特に人間に対しては敵意を持っており、決して近くに寄らせない。もし、特異能力が封じられてしまった場合、最終手段として狂暴化する。MMEI-0002-VARは、実体を持たないため物理的な接触ができない。ただし、液体に関しては何らかの方法で触れる事ができ、摂取している。好みの場所は、風の吹かない場所と、光の無い場所であるが、どちらにも該当しない場所へ移動ができないわけではない。油を摂取すると、煙が持つ温度が急激に上がりはじめ、ものの数秒で摂取した油の発火点にまで上昇する。ただし、油は発火しない。

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元々哺乳動物の特徴を持っていたから優先していただけだ。これは別物ではないか?


はい。目的にはそぐわない可能性が高いです。


ではなぜ実験フェーズに移行させた?


別物であるという確証が得られなかったからです。


では、確証を得られた今、実験を継続する理由は?


通常種に通ずる部分があり、次回に活かせると思ったのが一点です。もう一点は拠点周囲の安全保障のためです。


安全保障とは具体的になんだね。


油を摂取して発熱しますので、火災の恐れがあります。未然に防ぐためにも、研究はすべきです。


理解した。人的被害の許容は我々の理念に反することであるな。コスト回収のためにも配信班を上手く使って、活動を続けてくれ。


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■MMEI-0002-VAR タイプ鑑別

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本来、タイプは特徴と生態から類似する種を区分するためにありますが、その場合、類似する種同士の特異能力は別のものとなるはずです。


原種のペタアンブレラと、亜種のペタアンブレラは、見た目こそ似ていますが、持っている特異能力は違います。類似する種という『タイプ』が同じで、特異能力が別の別種という事です。


ところが、今回のストレイキティに関しては逆で、特徴や生態を似せた、全く別の擬態生物のように見えますが、特異能力が全く同じものとなっています。類似しない別の『タイプ』なのに、特異能力が同じです。これでは我々の区分方法では、別タイプの同種という矛盾する存在となります。


そのため、新しく区分方法を追加しました。変異種という区分です。


これは、通常種と同じ特異能力を持つ、変異種であるという区分方法となり、通常種とは異なっている特徴や生態で、新たにタイプを定義します。これで矛盾がなくなります。


本件以外にあり得るのか、本当に別のタイプなのか、疑問が残るところではありますが、暫定的な対応を見ながら慎重に対応していきます。


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■応用実験部から情報処理部へ


タイプが別でも特異能力が同じというのは、別に問題ないように思います。タイプ定義を見直したほうが良いのでは?


■情報処理部から応用実験部へ


最終的にそのように見直す可能性はあります。今回のような例が他にどれだけあるのか、調査が必要です。

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