MMEI-0009 シルバーストーク

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■MMEI-0009 調査結果報告書

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■2X21年02月12日 12:00 元木和則


調査要請外のモンスター娘を発見した。情報処理部の資料と照らし、シルバーストークタイプと推測。


■2X21年02月12日 12:10 田中一郎


同環境下での定点観測を継続してください。シルバーストークの移動方向と、観測中にわかった情報を送ってください。


■2X21年02月12日 12:22 元木和則


群れの警戒心が強い。身の危険を感じるため、映像記録を送るにとどめる。


■2X21年02月12日 12:37 田中一郎


強行観察班の出動を申請します。対象は調査要請外のシルバーストークタイプ。探査団の情報通りであれば、攻撃性が高いです。機甲武装の許可も申請します。


■2X21年02月12日 12:42 Admin


連絡を分離する。以降シルバーストークについては分離先へ連絡すること。


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■2X21年02月12日 12:42 Admin


識別番号を発行


MMEI-0009


出動申請を受理


承認する。


機甲武装は却下する。騒音による探査と定点観測の妨害を懸念する。


■2X21年02月12日 12:44 田中一郎


強行観察班を出動させます。責任者として猪狩咲良を任命。武装については設備管理部と連携してください。調査フェーズに移行します。以降の情報処理部との連絡を委任します。


■2X21年02月12日 12:54 猪狩咲良


寒冷地帯への適応と爪牙を防御する必要があります。電子工学班の試作ダンボーグは使えますか?


■2X21年02月12日 13:12 伊丹昴


総合検査班にて性能検査は完了済です。用途としては本件において、防御にやや課題が残ります。代わりに、機甲武装としては静音性に優れており、管理事務班の懸念には該当しません。


■2X21年02月12日 13:17 Admin


本件に限り、ダンボーグの使用を許可する。


■2X21年02月12日 14:39 猪狩咲良


出動します。


■2X21年03月03日 01:42 猪狩咲良


映像記録の特徴と一致するモンスターの群れを発見。群れは7体と小規模で、オスとメスがいる。遠隔での観察と尾行を行う。


■2X21年03月12日 12:00 猪狩咲良


補給を要望。以降2か月ごとの定期補給を申請。


■2X21年03月12日 12:15 Admin


受理する。


■2X21年08月25日 18:22 猪狩咲良


観察対象とは別の群れとの戦闘が発生。縄張り争いと見られる。


■2X21年08月25日 19:38 猪狩咲良


戦闘によってリーダーが死亡したため群れが分離した。単体となったモンスター娘の観察と尾行を行う。


■2X21年09月01日 06:00 猪狩咲良


ダンボーグ動作良好。実用に耐えています。


■2X21年11月08日 16:20 猪狩咲良


小型の動物、モンスターを捕食する。中型以上のモンスターの縄張りは明確に避けている。


■2X22年01月09日 06:00 猪狩咲良


対象の生息域は広範。群れている時、アイスランド内の針葉樹林を中心に縄張りを形成。単体ではアイスランド周囲の別の地域へ広がり、番いを見つけると新たな群れとなる模様。


■2X22年02月14日 03:41 猪狩咲良


交尾の映像を記録。


■2X22年04月25日 10:33 猪狩咲良


出産の映像を記録。


■2X22年07月10日 22:46 猪狩咲良


子がいる場合、群れでの狩りはリーダーのみが行うと判明。


■2X23年01月30日 21:53 猪狩咲良


成熟した子が狩りへ参加するようになったが、群れの狩りの成功率はおよそ40%へと低下した。中型生物の縄張りへの侵入は増えている。


■2X23年02月11日 17:17 猪狩咲良


アイスランドに活動場所を移した。群れでの狩猟対象となる中型生物が多い。


■2X23年03月12日 02:56 猪狩咲良


成熟した子が2体、群れから分離。モンスター娘のほうを尾行する。


■2X23年03月25日 10:33 猪狩咲良


冬季が始まるアルハン湖沼に訪れた。水面の氷結によって、水中のモンスターの脅威がなくなるためと推測。ここでの主な獲物は冬眠中の両生類や小動物。


■2X23年07月12日 11:51 猪狩咲良


冬季が始まるワーム・キャンバスに訪れた。高脅威のワーム類が地中から出て来なくなるためと推測。ここでの主な獲物は繁殖を終えたワームの死骸。


■2X23年11月20日 08:24 猪狩咲良


繁殖地帯の寒冷化部に訪れた。より寒い北部から海を渡って来た繁殖期の弱小な中型モンスターや、その卵を食べており、この時期のこの地域では天敵がいないと見られる。


ここまでの観察結果から、アイスランドの影響を受けた周囲の地域を、決まった時期に巡回することが判明した。生存に適した環境下での食料獲得と、繁殖のための番い探しによるものと推測。


■2X24年03月20日 09:42 猪狩咲良


冬季が始まるアルハン湖沼に訪れた。番いを見つけて群れを形成するまで、巡回を続けると推測。


■2X24年03月21日 06:00 猪狩咲良


観測したデータを整理。雪の沈み込み、氷結した水面のルート選択から対象の荷重を計算する。


長期の観測を実施しましたが、特異能力が不明です。一度判断を仰ぎたく。


■2X24年03月21日 07:06 田中一郎


特異能力不明のまま3年が経過しました。解決が見込めず、対象の危険性も高いと推定。調査の停止を申請します。


■2X24年03月21日 08:19 Admin


申請は却下する。現時点で判明している範囲での調査結果報告書を記録すること。


■2X24年03月21日 08:21 藤堂恭史郎


今後は一調査における期間の上限を設けることにする。また、結果報告書の作成要領を修正する。必須事項の調査が難しい場合、申請によって免除できるものとする。その場合、総合的な判断の後、フェーズ移行を中止もしくは指示する。


■2X24年03月21日 08:43 田中一郎


長期間ありがとうございました。記録はこちらで作成します。強行観察班は帰還を開始してください。


■2X24年03月21日 08:48 猪狩咲良


帰還します。


■2X24年03月21日 22:15 田中一郎


記録を申請します。


■2X24年03月22日 07:30 相馬和也


校正完了

フェーズ移行判断まで機密情報とします。


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生態調査部 強行観察班 猪狩咲良


  調査結果報告書


識別名       : 未定

生息地       : アイスランドとその周囲


サイズクラス    : 大型

ウェイトクラス   : 重量

スピードクラス   : 俊足

ムーブメントクラス : 歩く


フェロシティレベル : 普通

フレンドレベル   : 敵対

フィーンドレベル  : 中庸


特異能力 : 不明


特徴 : 

対象は、体長200cmを超える大柄な人型のモンスター娘である。イヌ科動物の特徴を有しており、耳と鼻の形状は特にオオカミに酷似する。頭部から頸部にかけて白色のたてがみを生やしており、雪上での擬態効果がある。また、太いマズルと大きな口があり、鋭く太い牙を生やしている。体長と比較して細身だが、筋肉の発達した身体を持っており、特に脚部の機能に特化していて、瞬発力と持久力のある二足歩行が可能。四肢と背中側には長い灰色の毛を生やしていて、長い尻尾の先まで覆われる。胸部と腹部の毛は短く、過度に冷える時は尻尾を使って温める。手足には肉球があり、鋭い爪を持っている。


生態 : 

対象は、群れを形成できる高度な社会性を持っており、子の間は家族で行動し、成熟すると番いを見つけるために単独となる。番いを見つけると新たな群れとなって共同生活を行う。小型から中型までの動物を狩猟するが、単独の場合は顕著に危険を避ける。群れでは協調して狩猟を行い、開始からすぐに食料を確保することができる。一方で、失敗した場合の諦めがはやく、特に中型以上の獲物を逃がした場合、深追いせずに別の獲物を探す事が多い。生息域が広く巡回する性質があるため、不意の接触に注意が必要である。

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■添付資料:アイスランド アイスランド調査団

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アイスランドは扉に入って北に進んだ、徒歩で行ける最奥に存在する地域です。未だに測量しきれないほどの広大な地域であり、多くの生物が住んでいます。また、その先の海から別の大陸の生物が渡ってくるため、寒冷地であるにも関わらず、多様な生物が見られるという特徴があります。


アイスランドの気温は平均で-20℃であり、そのためほとんど雪と氷の世界です。しかし、ある範囲においては気温が一定ではありません。その範囲内では、ある程度周期的に気温が変動することがわかっており、温度変化の範囲は、最高20℃から最低ー80℃まで観測されています。この気温変動は、アイスランド内の一部のみで起こる環境変化であり、その一部の範囲が拡大と縮小を繰り返しながら、常に移動しています。変動の原因も移動の要因も全く解明できていません。


この気温変動の影響は、アイスランド周囲の土地にも影響を及ぼします。それによって、それらの土地ではある期間内で四季のような変化が起こり、極限の寒さとなる範囲がそれらの土地に近づいた時を、特に冬季と呼びます。冬季が来ることで、その土地の生態系は破壊と再生を繰り返しています。


それらの土地が冬季を迎えると、アイスランドの生物が移動してくるので、計測器と発信装置を取り付けることで、アイスランド内の調査が可能です。我々はそうやってアイスランドの謎を、少しずつ研究してきました。今後も活動を続け、よりよい方法を模索していき、やがては未知なるアイスランドの謎を、全て解明していきます。


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アイスランド内のシルバーストークは遠隔でなければ接触は不可能です。周辺地域の冬季を狙って実験する必要があります。具体的な冬季の間隔は4か月程度────猪狩主任

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