MMEI-0084 プラネットチャイルド
元木さんも千葉さんも言ってたけど、今回の作戦は変だ。高い確率でモンスター娘であるという事はわかったけど、確証が無いままにこれだけの事をするかね? いや、まあ…俺が考えたって仕方ない事なんだが…正直気になるぜ。
「アキラ、モンスター娘不在のまま配信する事についてどう思う?」
「たまにはこういうこともあるんだって見せられるんじゃないでしょうか。」
なるほど、そういう考え方もできるか。ウチのリスナーは攻撃的だし、ボロクソに言われるんだろうな。俺、実は結構メンタル弱いし、今から憂鬱だわ…
「見付けちゃえばいいんですよ!」
アキラは相変わらず俺の心を読むのが上手いな。それとも俺がわかりやすいのか? まあ、どっちでもいいか。放送事故になるの前提で進める事にして、心の準備だけはしておく。それで見つかったらラッキーと思おう。
「お前はどう思う?」
「きゅいきゅい♪」
あの時のペタアンブレラ亜種だ。確保飼育班のほうで人馴れするまで面倒を見てくれていたのだが、予想以上に慣れた上に、元の群れに戻る気が見えなかったんだと。本当は野生に帰すべきなんだろうが、都合がいいのでそのままだ。
「モンスター娘の勘か何かで良いもん発見してくれないかね。」
「主任、言葉が通じるわけではないので過度な期待は禁物ですよ。」
へい、わかってるよ…シルバーストークを思い出しちまった。でも超音波を使った反響定位で、索敵とか地形の把握とかはしてるはずだ。だから俺らも間接的に恩恵にあずかれる可能性はある…というような理由をこじつけて、持ち出し許可を得たのだ。
「捕獲したモンスター娘の持ち出しって初だよな?」
「はい。なんならモンスター調査団などでも未実施ですね。」
そうなのか…いつもは慎重な情報処理部以上の人たちが、なんでOK出したんだろ。ペタアンブレラ亜種が逃げる可能性はあると思うんだが。
「逃げたら逃げたで野生に帰るのだから、よい事ですよ。」
あっ、それもそうか!
だったらまあ、特異能力についてだけ気を付ければ良いな。
「主任、そろそろ特異地形Bに到着します。」
「いよいよだな。」
「きゅう」
願わくば放送事故になりませんように。
放送開始。
「こんハメは~、皆さんごきげんよう。橘です。」
皆が勝手に言いだしていた定型の挨拶を逆輸入した。元から受け入れられていただけあって、親しみやすいし口に出しやすい。でもその意味を考えると、ちょっとなあ、まだ慣れない。
<こんハメはー>
<後ろの山すごっ>
<こんハメー>
<待ってたぞ>
<おハメー>
特に変にも思われず、流されてるみたいで寂しいと思うべきか、受け入れすぎててどうなってんだと憤慨すべきか。そんなこと気にする必要すらねえな!
「えー、先に言っておきますが、今日のゲストはまだ見つかってません。だから探すところから配信を開始していますが、実在するかは不明です。」
言ってておかしなことやってると思うよ、本当。まあ、アキラが言っていた通り毎回上手くいくわけじゃないってことで、探検してるところだけでも楽しんでもらえるよう撮っていこう。
「きゅいきゅい♪」
ダンボーグのフレームに耐荷重を追加してもらったので、その肩部分と頭部分の棒を掴ませて乗っけている。ぶら下るか、こうするとペタアンブレラは落ち着くみたいだ。
<アンちゃんマジか!?>
<でも肩にかわいい子乗せてんじゃん!>
《500円ダイダラぼっち》<アンちゃんかわいい代>
<ペタアンブレラ飼育日記おもろいんだよなあ>
<アンちゃんこっちみてー♥>
そういや、捕獲後しばらくしてから経過報告をしてたけど、あんまり反響があったんで、そのまま定期的に状況を配信してたな。気づいたら視聴者が名前を付けて可愛がるようになっちまってた。このアンちゃんっていう名前は、確保飼育班でも浸透してるみたいだ。
「今日はマジでゲストいない可能性があるから、特別ゲストとしてアンちゃんを呼んだってわけよ。この可愛さに免じて何も起こらなくても怒らないでくれよな!」
一応、アンちゃんはモンスター娘という存在なので、配信サイトでの規約や各国の法的にも全裸で問題となることはないのだが、諸々配慮した上で、基本的に前掛けとローライズを着せることになっている。配信時の恰好が人気だったという点が決め手だ。
アキラはお手柄だが、服を貸した猪狩主任は複雑そうだったな…いつも下着は着せないが、今回は寒い場所なので上着を羽織らせている。寒さに弱い種だし、リスナーの反感を買わないための配慮だ。
「そんで、今俺達はブラダ山脈という所にいます。登れば登るほど異常に寒くなるのに物が凍らない場所だぜ。ここはまだ低めの所だから平気だけど、ちょい寒いな。」
<奥の山肌が全然白くないの異常>
<ゲームみたいな高い山あるw>
<アンちゃんを温めたい>
<凍らないって水分ないってことのか?>
拾いたくなるコメントが来てくれた。そうだよな、普通は氷を想像してそう思うよな。
「いいや、普通に湿気があるぜ。あるのに物が凍らないんだ。凍らないけど温度が下がりすぎるから、ドローンも動かなくなるらしい。」
らしいってのは資料で情報を知ってるってだけでやってないからだ。モンスター娘調査団でやる事ではないし、勿体ないことはしない。だから真偽は不明だが、観測できないくらい冷えたら時間も止まるらしい。
「そんじゃ、まだ見ぬモンスター娘を探して探検しようか。今までの結果報告書を見るに、山くらいデカい子みたいだぜ。」
<巨女いいぞ!>
<探検隊らしいことやるじゃん>
<探すまでもなく映ってるんじゃね?>
ははっ、当たってるかもな。千葉さんが言うにはデカい土人形のモンスター娘らしいが、林さんズの分析によると人肌の巨人ではないかとも言ってた。どちらにせよ俺らの足元に寝てる可能性はあるよな。
「のくとさんの言う通り、デカすぎて映ってるかもな! 俺が今立っているここ、モンスター娘の腹の上かも知れねえ!」
そうであってくれると楽で嬉しい…か? どうだかな…掘らなきゃいけないし、一部分だけじゃ証明にならない。どうカメラに映したもんかという深刻な問題と直面するだけだな。
「すでに1か月くらい調査団の皆で探査の真似事をしているんだが、山くらいデカくて重い相手だろうっていう推測しかできてないんだ。この山の地形が変わったから生物が動いた可能性を追求してるわけさ。」
<山の地形がかわるって噴火以外でか>
<いいからアンちゃん映せ>
<デカすぎて存在を感知できないタイプか>
見えてるけどデカすぎて分からないんだとすれば、そういうことだな。まあ、普通の人型だったらとっくに元木さんが見つけてるだろうしな。むしろこれだけ規模のデカい相手を感知した千葉さんがおかしいくらいだ。いや、あの人はおかしいか…
「そういうわけだから、あんま期待するなよ~。ぶっちゃけると俺は見つからないと思ってるからな!」
<ぶっちゃけすぎw>
<逆に期待させたい振りに見える>
<山は怖いぞ遭難に気をつけてな>
おっと、そうだよな。浮かれて滑落したんじゃ目も当てられないよな。装備やアンちゃんで重量から何から違うし、いつも以上に気を付けないとな。
「きゅうう!」
下向いて言ってるのかな? 何言ってるか分かんないけど、鼓舞してくれてるなら嬉しいぜ。
「主任、このあたりは独特な地層が露出してますね。」
へっ、どういうことだ…あ、いや、なるほどそうか! 千葉さんが土の中に肌があるって言ってたから、そういうとこ見ないと。詳しくないが見た目に変なら俺にもわかるかも知れない。とりあえずここに何か手がかりを見つけられるかも。
「きゅい!」
なんだろう、肩に乗ったアンちゃんが興味を示している。首を上げても俺の目じゃどこに反応しているか確認できないけど。
「アンちゃんがこの隙間を気にしてます。」
ああ、この独特な地層のところか。言われてみるとひび割れてるが、気にしないと分からないな。
「ひょっとして中に何かあるのかもな。」
アンちゃんのお手柄になったら実績を作れるし、いいことかもな。スコップを持ってきたし、二人がかりで掘り崩してみるか。
<中になんかいたら面白いのに>
<そんな硬くなさそうだな>
<なんでここだけ割れ目が>
確かにここだけ縞模様の地層が見えてて、ひび割れてるのは不思議だな。土の硬さとか乾燥の度合いとかが関係するのか? いや、地形が動いたから断裂したり摩耗したりってだけかも知れないな。
「主任、中は洞窟になってますね。」
思いの外すぐに崩せたが、結構中の広い洞窟が出てきてしまった。暗いしジメジメしてるし嫌なんだよな…
「うへ、独特な臭いがするな…なんか生臭くて苦手だわ。」
しかもこのツンとくる臭い、俺の嫌いなタイプの臭いだわ。しかし、見付けてしまったからには探索しないとな。山ほどデカイやつがこの洞窟にいるわけないってわかってんだけどさ。
「ここから壁の感じが変わりますね。入口でしょうか。」
土から肉みたいな壁に変わるし、入り口には膜が張ってるな。隙間から中に入ることができるが見た目が気持ち悪い。粘菌か何かが大繁殖でもしてるのか?
<グロいわ>
<生臭いってことは動物性なのか?>
<俺はキノコの生臭さみたいなの想像した>
うーん、生臭さで言うと確かに動物性の何かの臭いだな。見た目も何となく豚肉に見える気がするし。ただ、腐ったのとは違うし、家の生ゴミよりは大人しいんだよな~。
「断言はしないが肉っぽさは感じるぜ。お前たちの家の三角コーナーの臭いを2/3したような感じだ。」
<わかるようなわからないようなw>
<その情報いらなかった>
<生ゴミやん笑>
臭いを想像して同じ苦しみを味わってくれたまえ! ポイゾナスカンク缶よりははるかにマシだけどな。
「主任、洞窟の一番奥に到着したみたいです。」
どう見ても行き止まりで、これ以上に進める場所は無さそうだな。とっとと帰りたいし、この肉みたいな壁を採取したら終わりにするか。
「きゅい」
えぇ、またぁ?
多分また何か見つけたよね。
「主任、アンちゃんが隙間を見つけたようです。」
隙間ってことは先に進めるってことだから、お手柄だなアンちゃん。俺は帰るつもりだったから複雑な心境なんで、アキラに褒めてもらってくれ。
<さすアン!>
《1000円のくと》<アンちゃん活躍代>
<壁じゃなくて天井に穴あいてんのか>
確かに奥の壁じゃなくて天井に開いてるのか。肉っぽいのもこんもりと盛り上がってるし、その中央に穴がある。いかにも原因がここにありますって感じがして嫌だわ。
「外は弾力があるけど固めですね。中は結構広い空洞があるみたいです。」
アキラが脱いだダンボーグを足場にして、穴にスコップを差し込んでいた。さすがアキラだ! すごい決断力とスピード感だね! というか肉っぽいのがポロポロ剥がれるんじゃないかと思ってたけど、そんなことはないどころか押し返して元に戻ろうとしてるな。
あれ、なんか足元が動いてる?
ひょっとして肉っぽいのが動いてるのか…
「アキラ、なんか揺れてないか?」
「はい。嫌な予感しますね。」
足が動くような感覚じゃなくて、揺れる感覚だな。地震だと洞窟の中に生き埋めになっちまいそうで怖い。
「はやく外に出よう!」
「きゅいいい!」
アンちゃんが警戒してるってことは、これ洞窟に何かあるな? なんだか俺もすごい嫌な予感がしてきたぜ…
「ちょっと待ってください。情報処理部から連絡です。」
あー嫌な予感が的中した瞬間ってコレだよ。頼むからここで何かしろとは言わないでくれよ!
「さっきの穴をもっと弄ってほしいそうです。」
「くそったれ!」
要請されたらやらざるを得ない。やりますよ。やればいいんでしょ! で、一体何があってこの指示が来たのかね。
「特異地点Bのみが大きく揺れた所を観測できたようです。その理由がさっきの穴かも知れないので、もっと大きく動かしたいと。」
理解はできたけど、納得はできねえな! それで俺達が生き埋めになったらどうするんだよ。まあ、聞く権限もないし握りつぶされるから、考えるだけ無駄なんだけどさ。
「弄るっていっても2本ぶっ刺すくらいしか思いつかないが。」
「そうしたあとに穴を広げるように動かしてみますか。」
それくらいしか思いつかないし、とりあえずやってみるか。グイグイっとな。
「うおっ!?すげえ揺れた!」
「主任!壁が狭まって圧迫してきてます!」
明らかにさっき揺れた時よりも危険な状況になっちまったな。とにかく撤退しないと、ぺしゃんこになるのはごめんだ。
「主任、特異地点Bが動いたから、確実にモンスター娘だそうですよ。」
「それは良かったけどな、俺達それどころじゃないと思うのよ!」
入口に戻ることは出来たが、完全に閉じてるなこれ…出られないし救命要請して待つしかないな。
<やばげか?>
<ガチの顔してるやん>
<こんなとこで死にたくないよなあ>
<ほっときゃ開かないかね>
ザ・他人事っていうこの感じ、懐かしいわ。体力を減らさないようにじっとしつつ待つか。
「主任、情報処理部からの情報がまとまりました。」
アキラはよく落ち着いていられるな。俺はもう死ぬかもしれないと感じて震えが止まらないんだが。
「安心してください。これ以上の危険はありませんから。」
えっホント!? 安心感があるな。ほかならぬアキラが言うなら本当に大丈夫なんだろう。
<ちょっと入口開いてきたやん>
《500円ウチのワンコ》<がんばれ橘さん!>
<光が見えるな>
おお、このまま通れるくらいまで開いてくれ! アキラの言った通り大丈夫なんだ、希望が見えてきたぞ!
「肉の壁の動きが激しくなってきましたね。」
希望を台無しするような事言わないで! なんかすごい恐ろしい事象だよそれは!
「奥から入口まで、壁が蠕動運動をしていますね。」
「腸の中にでもいるってことか、それともミミズの体内か?」
「主任、そろそろ入口が開きますよ。」
ぱかっ
本当だ…というか、天井の穴がめっちゃ上下に動いてるの見えて怖っ!
「主任、上を見てください。」
「ああ、なんだ?」
何かへんな穴があって、その上に大きめの出っ張りがあるな。それがどうしたんだ。
「あの出っ張りをスコップで引っぱたいて下さい。」
意味があるから言ってるんだよな…?
よし、やってみるか。
スコン
出っ張りが痙攣を始めたな。生き物だったのかコレ。
ゴゴゴゴゴ
へんな穴から水が噴き出しはじめたぞ!? それと同時に、めちゃくちゃデカくて長い揺れが始まったし、何がおきたっていうんだ!?
「あれが陰核と尿道口です。我々がさっきまでいたのが膣内ですね。」
「おいィィ!?」
<ハメ撮りはもう終わっていた!?>
《5000円おっさん3》<検査鏡になった気分でした!>
《1000円ポルンガ》<またか>
<ハメ撮り配信探検隊!!>
<お前、精子だったのか…>
<女優の顔見てからじゃないと評価を下せない>
《1500円ムホホハンター》<私のユニコーンも歓喜ですよ>
<生臭いのか…>
わざとじゃないからな! マジで知らずに入っちまったんだって! 見付けたのアンちゃんだから!
「きゅいきゅい♪」
「情報処理部によると、対象は完全に覚醒しているそうです。救命隊のヘリをそのまま脱出用にするみたいなので、乗りましょう。」
このモンスター娘の移動で定点カメラも全滅してたくらいだし、相当な威力だから巻き込まれたら生きてられないよな。ヘリ呼んどいてよかったわ…揺れで転ばないようにだけ気を付けるか。
「主任が今掴んでるのは植物じゃなくて陰毛ですね。」
「やめぇい!」
<橘さん…笑>
<デカいけど生えかけ?>
<すげえな陰毛ボルダリング>
<ハメ撮りって毛穴まで見せるんだな…>
<やっぱ巨女っていいわ>
くそっ、言わんでもいい事いいやがって!
おかげで二重で恥かいた気分だ。
「でも何も見つからずに騒がれるよりいいですよね。」
そうですけどね!
バリバリバリバリバリバリバリバリ…
低空飛行でヘリが来た。あのはしごに捕まって登れば逃げられるな。
「ぺちゃんこにされる前に脱出できそうで安心したわ。ヘリの音でうるさくなるから、音声はミュートにしておくぜ。」
「主任、この映像を見てください。」
特異地点Bの全体像だな。ゆっくり動いてる。多分仰向けで寝ているんだろう。膝が立ってきて、腕を使って上半身を持ち上げた。
そのまま巨大なモンスター娘は、体中の土を払いのけ始めた。肌はほとんど土と同じ色だが、見た目は規模の大きな人間にしか見えない。
左腕を上げて、反対の手で土を払っていく。出てきた肌に毛は見えず、脇のシワにも異物はないようだ。
そのままの流れで両手を使って胸を弾いた。すると大きく揺れて土が弾けた。質量は人と比べるべくもないが、弾力や柔らかさはかなりあるようだ。
胸の下に残った土の縁に指を入れて、腹までめくっていく。臍から股までがさっぱりしたところで、立ち上がり始めた。
しかし、その途中で意識を失ったように脱力を始めて、そのまま仰向けに倒れていった。激しい音と共に大きな地震が大陸を巡った。勢い余って足が跳ね上がり、尾根を枕にして無様に開脚している。
「ブラダ山脈の異常な寒さで意識を失ったのか!」
逆にそれがなければ奴等は大陸を動き回るんだろう。山の意志がどうたら言ってる宗教じみた奴等の言ってた事が、なんとなく真実味を帯びてきちまったな。
<ヘリ使って女湯のぞいてるみてえ>
<最後らへん土煙ばっか!>
<足裏フェチ的にも土がつきすぎててNGでした>
いらん報告ばっかだな! 今回のこいつらの視点は役に立ちそうにない。
「主任、千葉主任が仰られていた肌の事について、どう思われますか?」
ヘリで間近に見た感じだと土で出来ているわけではなさそうだった。いわゆるゴーレムみたいなのを想像していたが、胸は普通にやわらかそうだったし、尻に山の跡がついてたし、分厚い皮膚と中の肉と脂肪を感じたな。
「アキラはどうなんだ?」
「見た目や感触での想像は同じです。でも、土で出来ていると思います。」
えっなんで?
土だと崩れて無くなってそうだけど。
「長い間寝ているとはいえ、あの巨体を食事も無しに維持していますから。」
それは確かにそうだ。あるいは特異能力かとも思うが、そもそも睡眠というより気絶だしな…能力どうこうではない状況に見える。
「それに、膣の中の臭いも明らかに違いましたからね。」
そうなんだ…アキラって経験あるのかな…具体的にどう違ったんだろう。俺には生ゴミの臭いとしか分からなかった。
<都会住みの不摂生とは比べるな!>
<土だとしたら誰が作ったんや>
<俺たちはお人形さんに興奮していた?>
まあ、どう転んでもろくな奴ではないわな。しかし、誰が作ったかと来たか…
「誰が作ったかっていう疑問は、それそのものに疑問が湧くぜ。いやな、扉の中の世界だし、生きてる土が居てもおかしくないよなって。」
<それはそう>
<そっちのこと知らないからピンとこない>
<でも相手がいるから生殖器があるんだろ?>
おお、それは確かにそうだな…それが作成者の可能性は捨てきれないし、生物の可能性もしかり。難しいが…相手は当然オスだからモンスター調査団の管轄になるだろうか。作成者がいるとしたら、そいつこそ本物の巨人ってことになるのか。
「というか作られたモンスターだとすれば、生殖器ではない可能性も出てくるな。それを模した形だけの物がついてる壊れない頑丈な人形って感じだ。」
推測の域を出ないが、今までで一番しっくり来るな。その場合、作成者の巨人がブラダ山脈の意志とやらになっちまいそうだが。
「主任、まだ手を出すべきではないということで実験は中止だそうです。放っておいても無力化できてるので、下手に刺激しない方針になりました。」
まだってことは後で手を出すってことだよな。俺はもう嫌だぞ。というかそんなにあっさり引き下がるのに随分強引に進めたな。なんなんだ一体…
「というわけで皆、中止になったので配信は終わるぜ。見てくれた人、スパチャくれた人、ありがとうな! また見てくれよな!」
「きゅいきゅい♪」
<おつハメ~>
<アンちゃんばいばい!>
<斬新なハメ撮りだった>
<ニ度と見れない景色を見れたよ>
<おつですー>
配信終了。
結局、モンスター娘を発見できたものの実験は一切できなかったな…始まりから終わりまで本当に調査団らしくない作戦だった。調査と実験の住み分けが曖昧な感じだったぜ。ニ度とはごめんだな。
「気にするだけ無駄かも知れないけど、変な作戦だったな。」
「ええ、上位の組織から圧力があったそうですよ。」
嘘だろ…というかどこでそれを知ったんだアキラ!?
「情報処理部に友人がいるんですよ。どこの組織の偉い人たちも、巨人に害があるか知りたかったみたいですね。保身のためかな。この実験中は扉外に逃げていたそうです。」
はー、なるほど?
一歩踏み込むだけでキャンプを潰すかもしれないからね。それ、全体で緊急に周知して対応すればいいことじゃん…
「我々が正体を掴みましたし、無力化もできてることがわかりました。お偉いさんがたはきっと大歓喜で増資も進みますよ。良かったですね主任!」
一歩間違ってたら扉内の人が全滅してたじゃねえか!
おっかねえ!
素直に喜べねぇ~!
───────────────────
生態調査部定点観測班元木和則
強行観察班佐伯智成
確保飼育班神保定邦
応用実験部反復実験班千葉幸利
伊達清重
実験配信班橘春
設備管理部整備工作班一同全員
合同調査結果報告書
識別名 : プラネットチャイルド
生息地 : ブラダ山脈
サイズクラス : 超大型
ウェイトクラス : 超重量
スピードクラス : 超鈍足
ムーブメントクラス : 歩く
フェロシティレベル : 未定義※観測できず
フレンドレベル : 未定義※観測できず
フィーンドレベル : 未定義※観測できず
特異能力 : 未定義※観測できず
特徴 :
対象は、標高6,000mほどの巨大な人型モンスター娘である。大きさ以外は人間と同等といえる外見をしているが、組織のほとんどが土で出来ているため、表面は土気色である。しかし、意識のある間は柔軟かつ弾力のある皮膚を土のみで再現している。人間にとって関節となる部位は、同等の動きを表現できている。
生態 :
対象は、全身に土を被って山と一体化するほどの長い間眠っていた。覚醒した場合、ブラダ山脈の環境によって瞬時に頭部が冷却され、失神することでまた睡眠状態に戻る事がわかっている。強力な再生能力を有しており、傷をつけてもすぐに元通りとなり、そのため、失神して転倒した場合でも完全に破壊されなかった。対象の身体構造は、人間を模倣しており、生殖器や泌尿器がある。また、血液代わりの水が流れていて排泄もする。ただし、飲食を一切行っていないため、どのように補給するか不明である。
───────────────────
広報部から
今日は実験無しの探検回です♪ 普段の我々のフィールドワークをご覧になってください! 大人気のアンちゃんも特別ゲストとして登場します★ミ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます